ここはどこ?(承前)
僕はきょろきょろと、辺りを見回してみた。
視界に入るのは、そこそこ奇麗になっている古い道路、そして膝よりも低いとはいえ、草だらけの広場だ。ちょっと先から森か雑木林が始まっている。
そして後ろを振り返ると、山門は崩れかけた廃墟にしか見えない。
「今までいた場所はね、神域と彩根井寺を重ね合わせていただけなのよ」
「重なりを解いたら、荒れ地があるだけなのよねぇ」
「そんな顔をしなくても大丈夫、消えてなくなったわけじゃないから」
……うん、そんな事はどうでもいいんだ。
そんな事よりも、だ。
「ここはどこ?」
つい長々と語ってしまったけど、つまりはそういう事なんだ。
だけどさぁ、彩根井寺がどこにあるのか、僕が知っていると思うかい?
そもそもF市なんて地名は社会の授業でさえ出てこなかったんだ。
SUVが不時着しなかったら、来るどころか知る事のなかった場所だよ。
ポコ君なら詳しい場所を知っている筈だと思うけど、あいにくアイテムバッグの中だからなぁ。リーマ様から、落ち着くまでは身軽でいなさいと言われているから、出すに出せないんだよね。
「というわけで、だ。僕に分かるのは、ここがF市で、集落の出口があっち…
ええと、山門出て右って事くらいかなぁ」
「私もここに来るのは初めてだからこの先は…… サーリアは分かる?」
「フェイリア姉さまが知らないなら私が知っている筈ないでしょ」
つまりは、そういう事だ。彩根井寺は神界と重なっているから、2人ともここまでは自由に来る事が出来るし、何度か来ているそうだ。
だけど、山門の外に出た事は無いんだってさ。
「なんか意外…「冬夜くうぅうん!」 ぬぉわあ?」
いきなり名前が呼ばれて…… 声のする方に振り向いた僕が見たものは。
芹沢博士が残像を引きながら、突進してくる姿だったんだ。
スキルが教えてくれるまでもなく、嫌な予感はしてたんだ。
山門の近くに小さなテントがあるのを見てから、予感は確信に変わったんだ。
それでも、まさか芹沢博士が潜んでいるとは思わなかったなぁ。
「この半年、どこに行っていたんだい。しんp」「無礼者! 離れなさい!」
「ふんっ!」「ひああああっ」
フェイリアが僕の首っ玉にかじりついた芹沢博士を引きはがすと、ラーリィが有無を言わせずに博士を──文字通りの意味で──吹き飛ばした。
空気の塊をぶつけて、ぽーん! ってね。
博士が落ちた先は木陰になってるし、あたりには大きな石とかも見当たらない。
だから、この程度なら良心的な部類に入ると思うんだ。
なにしろ彩根井寺では固体化した空気で槍やでっかいハンマーを作るとか……
武闘派というか技巧派がいたもんなぁ。
「さあ、これで邪魔者はいなくなったわ。今のうちにここから離れるましょ!」
そのまま3人で村の出口に向かって歩き始めたんだけど…… それも数分の出来事に過ぎなかったんだ。
遠くの方から、金属的な音が… しかも近づいている。
音の正体を探る前に、近づいてくるのが何なのか分かった。
「まずい、あの時の白い飛行機が来た!」
彩根井寺に逃げ込んだ時に山門の前を通り抜けた、あの飛行機だ。今度は2機もいるのか…… 1機は前に見たように地面すれすれのところを飛んでいる。
もう1機は上の方でホバリングしているから、全体を指揮しているのかな……
「ちょっと拙い、かしらねぇ……」「ええ、拙いわね」
2機の飛行機を見た、フェイリアは眉をひそめていた……
「このままだと追いつかれちゃうよ」
「姉さま、冬夜くん。とりあえず森に逃げ込むわよ!」
ツートップとの追いかけっこのお陰で、けっこうスタミナはついたと思うし、スピードにだって自信はある。でも相手は飛行機だ。
いくらなんでも…… 機械を相手に持久走って……
「このままでは拙いわね。ラーリィ?」「……いいの?」
「見ている人は、誰もいないでしょぅ? 念のために認識阻害の結界を張っておくから、この場はそれで十分じゃない?」
なんだか思わせぶりな会話だなぁ。何かヤバい事を考えているんじゃない?
神の力を振るって、強引に飛行機をどうかするとか……
芹沢博士って…… うん、彼女ならこのくらい… 間違いなくやりますね。
それは冬夜くんを溺愛しているからでしょうか。それとも…… ?




