おねーさんと一緒
爺さんがくれた太刀には、はばきに刻まれた紋章とは別に、銘──太刀の名前のようなもの──がある。その名も瓢丸。
ちなみに、反対側… 刀を構えた時に右側になる側には梅の花をモチーフにした紋章が刻まれているのに気が付いたのは、しばらく後の事だったけど……
「ありがとう、ございます」
ずしりと重たい太刀を両手に捧げ持った僕は、改めて爺さんにお礼を言った。
古来、太刀を貰うという事には特別な意味があるんだよ。特に日本ではね。
だから、なんというか胸にこう、じーんと来るんものが……
「ときに!」「……ぐえっ!?」
僕のおなかに、ぶっとい巻物が突き刺さった。ひでぇ。
もちろん爺さんが投げたものだ。
「これを諳んじよ。さっきの体たらくは如何したことじゃ。ほんに嘆かわしい」
くっ…… やっぱ見られてたか。それにしてもデカい巻物だなぁ。
太ももより太い巻物だけど、書かれている文字ってさ、午後からの座学で使う教科書と同じように、文庫本の活字クラスかも……
見てみないと何とも言えないけど、きっとそうだ。そうに違いない。
問題は── その事実… だ。
爺さんの巻物の中身は、百科事典1セット分くらいはありそうな気がする。
こんなの暗記何か… うん、あとでポコ君に記憶させればいいか。
メモリーが足りればいいなあ……
「元気でやるんだよ。坊やに何かあれば、すぐに妾達が助けてあげるからね」
リーマ様に見送られながら、僕たちは──フェイリアとラーリィの2人と一緒に山門をくぐったんだ。全員が着ているのはフテミミ様やオオヌイ様たち服の神様の力作だ。うん、コスプレっぽい。
でも、そこは神様の作った服だ。ただのコスプレとはちょいと違うんだ。
状況に応じて色々オプションが出てくるそうだ。
「残念だけどぉ、あーしは遠慮しとくねぇ」「私も、顔を見られてますから」
今回は美月…サーリアと友里さんの2人は留守番だ。フェイリア達に遠慮してというより、パイロットスーツ女たちが僕たちを探しているかも知れないから。
僕はVRゴーグルをしていたけど、2人は顔を見られているからね。
「だから、念のためにこっちでのんびりしているにゃ」
パイロットスーツ女と博士たちがにらみ合い──というか取っ組み合いをしている隙に、僕は美月に連れられて逃げ出したんだが……。
あれから10日。たったの10日しか経っていないんだ。
「あの連中が……執念深く探し回っているかも、って?」「どうかしらねぇ」
フェイリア達はクスクスに笑っているけど、なんとなく気になるんだよ。
それは単なる感なんかじゃないんだ。
スキルが教えてくれるんだ。『気をつけろ、まだいるぞ』ってね。
「それはそれで良いでしょう。何とかなると思うわ」
「それにねぇ、冬夜くん、昔から言うじゃない。当たって砕け! って」
言わないよ。それを言うなら砕けろ、でしょ。
「……とにかく出発しましょ。ここにいても、始まらないわよ」
「うん、そうだね」
門を出たとたんに、もわり、と熱気が襲ってきたのには驚いた。
たった10日どころじゃないよ。辺りを見回せば、すっかり夏じゃないか。
「セミの鳴き声が凄いわねぇ」
「日差しも強いわねぇ。日焼けしそう……」
フェイリアは色白だから分かるけど、ラーリィが言うと何かねぇ……
だってラーリイは褐色お姉さんだよ?
口の悪い言い方をすれば黒ギャ「冬夜くん?」…ごめん。
山門を出た僕は、後ろを振り返ってみた。
「あれっ?」
あるはずのものが無くなっている。
経った今まで僕たちのいた彩根井寺のあった場所には……
ところどころ雑草の生えた、だだっ広い広場が広がっていた、
冬夜くんが彩根井寺に逃げ込んだのは、2月初頭の話です。
セミが鳴いているという事は、梅雨明け宣言が出ている時期っぽい。
具体的には7月の終わりから8月初頭くらい、ですかね。




