放課後のサンセット
ちょっと鬱な展開かも。
思えば冬夜は、小さな時から災難に遭ってばかりだった。
福を呼び込む体質の持ち主がいるという話を聞くけど、彼の場合は正反対。
公園を散歩してハトの爆撃… とか、犬に噛まれたりなんて軽い方だもん。
小さい時からずーっとこんな感じ。災難に遭うのが、私の──冬夜の日常。
それなら、私が頑張って守ってあげなくちゃ。
かよわい男子を守るのは、女子の役目! ってね。
でも冬夜を守るために、私がしてきた事って… 何だったんだろう。
歯車が狂い始めたのは高校に入学してから半月くらい過ぎたころ。
「あの、吉岡 美斗さん。僕とお付き合いしてくださいっ!」
──告白、されちゃった。
女子からでしょ、って? 違うわよ。ちゃんとしたオ・ト・コ、からよっ。
いくら私が可愛いからって… 自分で言うなって? でも私はモテるんだ。
特に女子からはね。男子からは…… うん、私には冬夜がいるからね。
それを知ってか知らずか…… 告られたのよ。
相手は女子の間で注目を集めてつつある、オトコ。
片丘 史郎という男子は、試験は常にトップクラス。
おまけに父親は県庁のナンバー2だ。県知事は都からの天下りと決まっているから、事実上のナンバー1。
とにもかくにも、良いところの御令息で、文武両道という… 優良物件だ。
「すごいじゃない、吉岡さん。逆玉よ、逆玉! この際、乗り換えたらぁ?」
「冬夜くんの事だから、美斗に告った事なんてないでしょ~」
その話は、あっという間にクラスの女子に知れ渡っていて……
私も片岡くんに興味が無いわけじゃなかった。でも彼は… 何て言ったら良いかな。まるで虎のような彼に比べたら冬夜はおとなしいウサギにしか見えなくて。
そんな彼に惹かれて…… だんだんと良い雰囲気になって。
「冬夜ってさあ、おめーみてぇに可愛い女の子を前に何もしないなんてよぉ。
告ってねーんだって? あいつの気持ち、おめーから離れてんじゃねぇの?」
「えっ?」
たしかに冬夜から告白された事って…… いつも一緒にいるのが当たり前だと思っていたけれど、よくよく考えれば彼女彼氏というのも周囲の人たちが……
「たしかにそうだけど……」「じゃあ、俺とも仲良くしよーぜぇ」
そのままなし崩し的に、私はずぶずぶと泥沼にはまっていった。
冬夜に対しては、後ろめたい気持ちが無かったわけじゃなかった。
でも、それも時間と共に薄れて…… いた。
「そーいやさぁ、オメー、冬夜の見舞いに行ってねーんじゃね? 幼馴染だろ」
いきなり彼は、そんな事を言い出した、
「行けって! とりあえず景気付けに可愛がってやっからよぉ!」
「そんな! 待って…… 今はだめぇ!」
最後までコトを済ませてしまった私は… 冬夜の入院している病院の前にいた。
でも、中に入ろうとしても足が…… 動かない。いえ、動けないでいる。
そんな私を見つけたのは、看護婦長の天野さんだった。
「あなた、いったい何をしに来たの?」
「何って…… 冬夜くんのお見舞いに……」
いつもは優しいお姉さんなのに、今日は違う。
だって私に近づいたとたん、急に怒り出して……
「……そんな臭いをさせて。彼に会うつもりなの?」「えっ?」
「水道筋にあるクリニックなら全員女性で口も堅いから、さっさと行きなさい」
天野さんに追い出された私は、あてどもなく街を歩き回っていたらしい。
気が付くと、公園のブランコに揺られている自分に気が付いた。
あたりはずいぶん暗くなり、月が夜空を照らし始めている。
そろそろ帰らないと、家族が心配する時間だ。
「ぐぷ… っ」
今日も調子が悪くて、朝からほとんど食べていない。
それなのに、いえ、そのせいで胃のあたりがむかむかとしてきたのかも。
ストレス? いや、違う。先週くらいから、ずっとこんな調子だ。
「うげえぇえええ……」
心の奥底に潜む闇が謳う。
感情もイントネーションすら抜き取られた私の声で…… 謳う。
──はっぴぃ、ばぁす、でぃ……
全面改定後の第3話(美斗の視点)です。
当初は復習系の物語を書くつもりでしたが、書いているうちに、ちょっと…
という訳で、今の形に改定して、今の形に収まったのです。




