おねーさんも、やってきた
僕は複雑な思いで──リーマ様が目に涙を浮かべて、おなかを抱えて笑い転げているのを見ていた。あれって、すんごく寒いギャグなのになぁ。
神様の笑いのツボがどこにあるのか分からなくなってきたよ……
まあいいか、ウケた事だしぃい?
頭の後ろに感じるこの感触…… ラーリィ…… は、まだ全身に霜を張り付けてるから違うか。ラーリィは… 様をつけていたら、そんなの要らない! って、さんざん文句を言われたから呼び捨てだ。
美月…… サーリアは今更だよね。あのブラコン妹にも困ったものだ……
「えへへ… 冬夜くんだぁ~」
身体の前に回された腕…… うっわぁ、白くてすべすべで……
邪神… じゃなくて、おねーさん… じゃなくて……
「……フェイリア?」
「よかったぁ、忘れられていたらどうしようかと思っていたのよぉ」
「もしかしないでも、美月… サーリアのおねえさん?」
「そうよぉ、ラーリィもサーリアも、私の妹よぉ。酷いことされなかった?」
ぎゅっと抱きしめてくれたのは嬉しいけど、耳元でぶつぶつ呟いているのも丸聞こえなんですけど。サーリアは折檻だとかうつつ責めとか……
「されたのねぇ? かわいそうに……」「いえ…… それほどの事は」
うん、そうとしか言いようがないよね、このバヤイ。
それにしても、小説の世界なんかでは『主役は遅れて現れる』って言うけどさ。最後の最後になって出てくるってのは、どうなん?
「じゃあ、デートに行きましょ。ジントアは久しぶりだから、さぞかし変わったでしょうねぇ。おねーさん楽しみだわぁ」
「お待ち、フェイリア」「なんでしょう」
「坊やに恥をかかせる気かい?」
いそいそと僕の手を引いて部屋の外に出ようとしたフェイリアの行く手を阻んだのは、リーマ様だ。その後ろに控えているのはオオヌイ様とオヌイ様。。
で、オオヌイ様が言ったんだ。
「その服装で出かけるなど、もってのほか」「ダメダメですね」
「そういう事さね。ちょいと坊やを借りてくよ」
久々にリーマ様に抱き上げられた僕は、そのまま隣の部屋に運ばれていった。
「服装にしてもそうですが、今まであなたが、あんなに粗末な下着を着ていたなんて…… 信じられませんわ」
ええと…… それって僕が最初に来ていたやつ?
芹沢博士が作ったメタルプラスチックのスキンスーツの事…… かな?
──鉄だってうんと細く引き伸ばせば、絹糸よりも上等な糸になるのだよ。
たしか、それをメタルプラスチックでやってみたって言っていたけど。
そこそこ柔らかかったけど、通気性は最悪だったなぁ……
「そこで、一度ほどいて糸から紡ぎなおしたのです。大変だったのです」
「さあ、着てみましょうねぇ……」
あっという間に下着ごとパジャマを脱がされた僕は、スキンスーツを着せられていた。うん、こっちの方が芹沢博士が作ったのより動きやすい… かな。
うん、不思議ぱんつのテクノロジーって… すごいを通り越して怖いよ。
でもね、それさえ我慢できれば……
「うん、ぴったり」
オオヌイ様たちの仕事は完璧だと思うんだ。毎晩のように着せ替え人形にされていた甲斐はあったと思いたい。
でもね、改めてスキンスーツを着て思ったんだけど、これって問題なくない?
その、飲み食いすれば……
「ああ、その時はここをこうすると ほら。いちいち脱がなくても……」
ぽろん。
「こうしてケダモノ君が顔を出すのです」「にゅふふふ……」
「あの、服… 着なくっちゃ。下着姿で出歩くのはヤバいんじゃない?」
「当たり前です!」「ちゃぁんと用意してあるのです」
ヤバい目をした神様たちの着せ替え人形にされかかった僕に、救いの手が……
これって救い… でいいのかなぁ。
それを悩んでいる暇なんかなかったけど。もちろん選択肢もだ。
「冬夜くん、お出かけするんですってねぇ?」
ぱぁん! と、障子をあけて部屋に入ってきたのは、タマヨリ様だからだ。
問題は侍女が押している台車の中身が気になるんだけど……
「うふふふふふ…… バッチリ、キメるわよぅ」
うん、なんとなくそんな気がしてたんだよね。
でもね、これだけは声を大にして言いたい。
僕は、男の子なんだよぉ!
美少女男子も神様を相手にデートする日が来たのです。
にょほほほ。




