おねーさんがやってきた
いきなり聞こえてきた声につられて首を回すと、いつの間にか現れた褐色肌のおねえさんが、両手に腰を当ててオオヌイ様たちを睨んでる。
うわ…… なんかヤバそう。
と、思ったら勝負は数秒でついてしまった、らしい。
部屋の中は台風が通り過ぎたような有様になっているけど……
「あ、おねえも来たんだぁ」
からりと障子をあけて、ひょいと部屋に入ってきたのは美月だった。すでに部屋の中は酷い事になっている。壁に穴は開いているわ、布団はあっちこっちに飛び散っている…… 穴の向こうでは、網でとらえられた埴輪たちが天井からつるされているのが見えるんだ。
「あーあ、別の部屋を用意しなくちゃ。なんなら私と一緒に寝る?」
「お前なあ…… この惨状を見て言うことはそれかよ」
美月は飛び散った布団を部屋の隅に押しやり、僕に胡坐をかかせると、その中に座り込んだ。
「にしししし… こういうのも久しぶりだねぇ」
憶えてるよ、こうするとどんなに機嫌が悪くても、ころりと機嫌が直ったけど。
それは小さい時の話でしょ。
「それよりもさ。この褐色のおねーさん、誰なの?」
「ん? あーしのおねえだけ… ど……」
うっすらと頬を染める美月って、なんか可愛いく見えるなぁ。いや、兄の欲目じゃないよ。マジでそう見えるんだ。
でも美月は妹… だぞ。
「おにい?」「なに?」
僕の心の内を見透かしたかのように、くるりと振り向いた美月は困ったような顔をしている。
「当たってるんですけどぉ?」「ん? 何がだ?」「……おにいの、えっち!」
当たってるって… なに… ぁあああっ! しまった。
ごめん、美月。そういうつもりじゃなかったんだ。
そうだ… これは事故だ。事故なんだよぉおお。
「……ズボン上げるからどいてくれる?」「ん」
僕はあわてて脱がされかかったズボンを引き上げた。
このパジャマとトランクスは僕が頑張って縫い上げた力作なんだ。これを見たオヌイ様は『まあまあね』と言ってはいたけど、緩みかかったの表情が全てを物語っていると思うんだ。
そして、改めて褐色肌のお姉さんを見た。美月はおねえさんって……
姉妹なのに全然似てないけどなぁ。
「あら、どうしたの、冬夜くん」
なんで僕の名前…… いや、この場合、それは些細なことだ。
先に行くにつれてふわりと広がりを見せるプラチナシルバーのロングヘアからのぞくのは、整った鼻立ちと厚みがあって、ふっくらした唇……
けだるげに浮かぶ表情は困惑半分、怒り半分というところだろうか。
黒のオフショルダーニットに窮屈そうに押し込められた双丘は、はちきれんばかりに存在を主張していて。
はうぅぅぅ…… これいい。実にイイ。ぱぁふぇと!
おっきなおっぱいは正義だ! ジャスティース!
そしてワイドパンツに包まれた腰回りはほっそりとしており、冬夜はそのくびれに目が奪われてしまう。
「女神テイアの艶やかな黒髪にかけて!」
誰が何と言おうとも、冬夜の目の前で徐々に姿を現しつつある女性は、彼のような男の子ならば、必ず思い描く筈の、理想のおねえさんだ。
……もう一度言うよ。
理想のおねえさんだ!
色白なお肌も良いけど、褐色なお肌も捨てがたい…… けど。
うっ…… 何やら嫌な記憶が……
「おにい?」
んっ、美月か。つるんぺたんの分際で僕の至福の時間を邪魔するとは……
「……? どうした、美月。泣きそうなk「おにいのばかぁ!」…あうっ!」
ばっしぃいいん!
美月に叩かれても、それほど痛くはなかった。
でも、問題はそれが理想的な角度と力加減だったという事だ。
急に足に力が入らなくなって、かくんと… 足から崩れ落ち… て……
母さん、母さん、ヤバい神様が出てきたみたい。
僕はもう、ダメかも……
あとがき
冬夜くんは美月ちゃんにノックアウトされてしまいましたとさ。
いわゆるボクシングでいう、脳を揺らされた状態ってヤツです。




