オオヌイ様、ご乱心?
彩根井寺では毎日が充実というか、とっても濃い生活を送っている。
かなり長い時間を過ごしたような気がしたけど、実際には1週間しか経っていないって……
大雑把に言うと、午前中は体育、午後は座学だ。
一応は高校生だから、そういうのが嫌だとは言わないけど。
教えてくれる先生の全員が神様って…… 贅沢なのかなんというか。
……というわけで、ご飯を食べたらスサノヲ&タヂカラヲという高天原の武闘派ツートップを相手に鬼ごっこが始まる。
追いつかれたら例のアレを頭からちょろちょろとかけられるけど、最近はそれを避けるのも上手くなった気がする。えっへん。
「スクナヒコナが改良版を作ってくれたぞ」
「なに、体に良いものばかりだから、気にせんでいいそうだ」
翌日からは、もっと凄いものになっていた。
えっと、スクナヒコナ様は薬も司っていたんだね。湯治…温泉療法も彼のアイデアで…… なんとなく… うん、一寸法師の御先祖様っぽい。
そして改良版のスサ汁は薬草とか霊石なんかを40種類くらい使った天竺由来の秘薬だそうだ。たしかに身体に良さそうだよ?
ここが天竺の山奥なら超人虹男になれそうな気分だよ。
しかーし!
疲れて動けなくなるまで鬼ごっこを続けて、風呂に放り込まれて体力とかが回復したら鬼ごっこ再開というのは、どうかと思うよ。
それを話したら、昼ごはんの時に美月から笑顔で言われたよ。
「おにい、頑張ってね」
昼ご飯を食べたら、延々と座学が続くんだ。座学というのは、まあ、アレだ。
教室で授業を受けていると思ってくれればいいかな。ただし、マンツーマンだ。
まさか四書五経を3日でマスターとか… あの爺さん、容赦ないな……
他には舞踊とか楽器とか家庭科──晩御飯を作る手伝いとか。
「なにげに女子力だけは上がっているような……」
「出来ないよりは、なんぼかマシですよ」
サクヤヒメの言う事は正論だ。正論だけど。僕の場合は家庭科よりも……
「この程度で弱音を吐くとは。美少女が美しさを極めなくてどうするのですか」
「えぇええ? 僕は……」
「美少女!男子、でしょう? なら、美少女です。神の決定に逆らうとでも?」
「うひゃああ…… ごめ、やだぁ、それぇ…… ファンデはいやぁあ!」
……で、みんなで夕飯を食べて。
埴輪たちに囲まれながら寝るのがルーティンになっているんだけど。
ところが、今日に限っては違っていたんだ。
「あれ? 埴輪がいない。どうしたんだろ」
ポコ君の姿も見えないような…… アマテラス様、何か知ってる?
「あの人形ならワケイカズチが工房に持っていきましたけど?」
昼ご飯の時に紹介してもらったワケイカズチ様が電子工学を司る神様だってことは知っているけどね…… 日本には八百万の神がいるんだから、こういうのもアリかと思うけど、ポコ君の身に何かあったら… ううっ、やだなぁ。
……いや、そんな事はいいんだ。
なんでボクの布団で寝ているんですかね、オオヌイ様。
「私もいるよー」「ええと…… なんで?」
オオヌイ&オヌイの神様は、僕の着る服を──体操服から始まって下着から普段着まで──作ってくれる神様だ。身体にぴったりフィットするのはいいけれど、デザインは女子用のものばかり。特に不思議なのは、紐っぽいのに僕のジュニアを完璧に収納してしまうパンツなんだよね。
夕方になると『新作が出来たわよー』って、この部屋に押しかけてきては着せ替え人形にされるけど、今夜は何か様子が変なんだ。
というより、服を着てください、服!
「いいでしょう? それよりも、キミが服を脱げば万事解決」「ひあっ!?」
わあああ、オオヌイ様、
僕に飛びついたオオヌイ様だけど、よりによって… あああああ!
ズボンを下ろそうとしないで。ぱんつにに手をかけるなぁ、
コヌイ様も一緒になって… いやぁあ、やめてぇえええ……
「ふべらっ!?」
変な声とともに、オオヌイ様の姿が一瞬で消えた。続いて破壊音が聞こえたんだけど… あ、オオヌイ様が崩れた壁の下敷きになってる……
なんで?
「そういうのは無しって約束でしょ? 話して分からないなら……」
うわぁあああ!
冬夜くんの寝間着は自分で作ったとか……
冬:あの不思議ぱんつ履いてると落ち着かないんだよね。
私:そうなん? 動きやすいじゃない。あれじゃダメ?
冬:ダメじゃないけど、なんか落ち着かないんだよ。
私:そういうもの? それにしても、どれもこれもよく出来てるねぇ。
冬:フテミミ様が教えてくれたんだよ。懇切丁寧になぁ……
私:……さよか。




