続・神様がぞくぞく
『妹より優秀な姉はいない』
うん、よく聞くフレーズだね。でもリーマ様まで、そんなことを言い出すとは思わなかったよ。だってさ、僕は男の子だよ?
「うんにゃ! 冬夜くんは、美少女!男子にゃ」
優里さんまで…… そういや友里さん、だんだん猫っぽくなってない?
SUVの中で美月が自分の正体を明かした時に、友里さんも『実は私もニンゲンではないにゃ。正体は猫又にゃよ』って言ってたけどさ。
昨日より今日! って感じで猫度が上がってない?
「うにゃ、これが地にゃよ。それに実家にいる時は猫の姿にゃ」
実家… そう言えば前に聞いた事がるな。お店をやってると言ってたか。
越後屋さん… だっけ?
「ん。高級織物の問屋にゃよ。今度の光右衛門はやんちゃ過ぎて困るにゃ。あやつは隙を見せると、尻尾を引っ張りに来る悪ガキにゃ。
だけど… 憎めないヤツなのにゃよ」
へぇ、尻尾… ねぇ。たしかに触り心地が良さそうだなぁ。
「冬夜くんなら、特別に触らせてあげてもいいにゃ」
へぇ、まるで尻尾だけが別の生き物のようにうねうねと宙を舞っている。
それが3本もあるんだ。まるで触れとばかりに……
「おにい、ダメだかんねっ!」「にゃ、にゃにするにゃ!」
美月がずいっと僕を護るかのように前に出ると、目の前で揺れる尻尾を張り扇で払いのけようとした… のか? ぶぉん! って音が聞こえたけど。
さすがに当たらなかったけど、そんな大きな張り扇で叩いたら……
「あぶにゃいじゃないか!」
「あんたを、おねえちゃんとは呼びたくないし?」
どういう事だ美月、知らなくてもいいって。えっ? 知らない方が幸せ?
美月の放つ異様な気配に… うん。それ普通に怖いって。
いやいや、別に異論を唱えようなんてことは思ってないよ?
ヒグマよりつよ……
「ふふふ、仲が良いねぇ。でもねぇ、坊や。お兄ちゃんとして、妹に負けっぱなしでいるのも悲しいと思わないかい?」
うっ…… たしかにその通りだ。今のままじゃ拙い。
ヒグマに勝てないまでも、それなりに体力を付けて… せめて、サッカー部にいたころの体力レベルには戻しておきたいかな。
「じゃあ、さっそく鍛錬を… と言いたいけど、とにかく基本は走る事さね」
「そういう事なら、まずは形から入る、というのがヒノモトの常識よねぇ?
あとぉ、トレーナーには心当たりがあるから心配しなくてもいいわよぉ」
げ…… イザナミ様!?
やばい、今度こそ握りつぶされるかも…… 助けて、リーマ様。
リーマ様の後ろに回り込んで、盾になってもらおうとした僕は悪くない。
昨日は本気で怖かったんだかんねっ!
「イザナミぃ… あんたも懲りないねぇ」
「今度はちゃぁんと、旦那を説得してきたから大丈夫。はいこれ、おみやげ」
そう言いながら、イザナミ様がひょいと渡してくれたのは、ぱんぱんに膨らんだエコバックだった。ひょい渡してくれたから、大した事は無いだろうと思って気軽に受け取ったけど……
「おおおっ、すんごく重たい?」「いつもながら見事な出来だねぇ」
「中身は旦那の説得に使った残り物も混ざってて、悪いけど」
エコバックの中身は、ごつごつとした白い棒のようなもの… なんだこりゃ?
ネギっぽい太さだけど、カチカチに乾いてる。霊木の枝か何か… かなぁ。
「大根でございますが、なにか?」「うぇっ?」
「こちは秋まきのドゥーラ産の坂東太郎という品種でございますよ」
イザナミ様の後ろに控えていた2人が、苦笑いをしている。おそるおそる鼻を近づけてみると、確かに大根だ。かすかに匂いがするよ。
でもさぁ、大根ってこんなに細くないしカチカチなわけがない… よね。
「そこはそれ。イザナミ様のなさる事でございますから……」「握力でね」
ちらりと僕のスカートのあたりを見たような気がするんだけど、気のせい?
ねえ、何か言ってよ。意味深な微笑みが、マジで怖いんですけどぉぉぉ。
「まあまあ、いいじゃない。あとで煮てあげるわ。で、さぁ… この子、ずっと気になってたのよねぇ。幼子なみの体力っておかしくない?」
「坊やはね、しばらく寝たきり生活だったから仕方ないさね」
「じゃあ、たーっぷり運動しなくちゃダメよねぇ。なら体操服、要るでしょ?」
いやいや、そこは徐々に揃えていけばいいかと……
「大丈夫よっ! そのためにこの子たちを連れてきたんだから」
「オオヌイでございます。よしなに」「私はオヌイだよっ」
ええと、また… 神様… ですか。
イザナミ様にかしこみかしこみ、まお申さく。
大根をかちかちの棒みたいにするなんて。か弱い大根に、なんとむごい仕打ちをなさるのでしょう……
イ:やらせたのは汝であろ?
私:知らんなぁ。
イ:そういう事を言っちゃう?(がしっ)
私:ぎゃあぁああ!




