日常~淀月の十五日~
――良い天気だなぁ……。
教室の窓の向こうには、青い空が広がっている。僕は太陽光線に負けまいと、目を開けていた。外から雀の啼き声が、気持ちよく聞こえる。昨日は雨が降って。一昨日は曇りだった。久しぶりの晴れだからか。心が楽しくなるよ。ブレザーを脱いで外に出て、遊びに行きたい。
今日は創暦一一四六年の。淀月十五日。火曜日。一年の第五の月だから、春はもう終わる。始業式に咲いていた。桜の花はとうに散った。今は黄緑色の葉が、風に吹かれている。
――眠いなぁ……。
昼ごはんを腹いっぱい食べたから、なんだろう。窓から差し込む光の、暖かさで寝ちゃいそう。頭がぼうっとして、瞼が重い。揺れてるよって、友達に言われ、笑って照れ隠した。今の居眠りを、男性教師に見られてないかと、伏し目がちに見た。青のワイシャツを着て、角張った顔で。差し棒を手に持つ。
「えー、私たちが暮らすこの国は……」
電子黒板に表示されている世界地図に顔を向けて、ここがどこにあるのかを。説明している。良かったと思って、胸を撫で。静かに息を吐いた。
――退屈だなぁ。
思いながらも椅子に座り、仲間と共に学んでいる。五時限目の授業は地理で、復習をしているようなもの。ここは、二年A組。南区立中学校。
――ふあ……。
口を隠そうと俯いて、口を開けまいと抗うも。大きなあくびをして、目が潤む。眠気は強くなるばかり。
――まだやってるの?
次のページに進んでほしい。流石に飽きてきたよ。机の上にあるタブレット端末の画面は、世界地図のまま。天樹帝国はどこなのか。太平洋にあって、日本寄り。だから、国語は日本語だ。
「はいっ」
男性教師の声が大きく聞こえて、思わず顔を上げる。授業をそっちのけで考えていたから、少しだけびっくりした。目の翳みが晴れるまで。頭の中は白く、視線は定まらなかった。
「根宮さん。話を聞いていましたか?」
「う……」
言われるとは思いもしなくて、言葉が出なかった。気付かれていないと安心してたら、的を射られち。上手に隠したつもりが、バレていたとは。
「たとえ知っているとしても、耳を傾けてください。人の話を聞くことも、大事なことです。分かりましたか」
僕は小さな声で返事して、反省の様子を見せる。心の中では注目されて、恥ずかしい思いだけ。指摘してくれたおかげで、笑いや呆れが。逃げたい気分に。
――気になる……。
向こうでは隣り同士で、何やら話をしている。僕のことなのだろうかと、見ずには居られない。そうしていたら、手を叩く音が天井に響く。
「はいはい、注目!」
男性教師の声によって、緩んだ空気が引き締められる。そして、前置きなく。何事もなかったみたいに。授業を続けるんだ。
「世界地図を用いて、私たちの国がどこにあるのかを説明してきました」
次のページに進める時を、期待してやまない。目を輝かせて、待ち焦がれる。




