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世界一のストライカー【見て書いてきた少女】  作者: KASANE
7/24最終回です

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第35話「世界の、舞台」

海斗が、とうとう世界の舞台へ立ちます。

ヨーロッパの、大きな試合の舞台。


 そこに、僕は、立っていた。


 スタジアムは、満員だった。


 何万人もの、声。


 波みたいに。


 押し寄せてくる。


 二部とは、違った。


 すべてが。


 速さも。


 人も。


 桁が、違った。


 芝の、青くさい、匂い。


 夜の、ライト。


 心臓が、速く、鳴っていた。


 ぱく、ぱく、じゃ、ない。


 とん、とん、と。


 まっすぐ。


 世界の、選手たちは。


 ボールが、来る前に。


 もう、見ていた。


 首を振って。


 周り、全部を。


 ボールが、足に、つく前に。


 次に、どこへ、出すか。


 もう、決まっている。


 速いんじゃ、ない。


 見えているんだ。


 先に。


 全部。


 何年も前。


 僕は、それが、できなかった。


 追っても、追っても、届かない背中を見て。


 こわい、と、手紙に、書いた。


 あの子に。


 二部の、デビューでも。


 半歩、遅くて。


 ボールを取られた。


 でも。


 あれから。


 僕は、走るだけじゃ、なくて。


 見る、練習をした。


 朝も。


 夜も。


 首を振って。


 周りを見て。


 ボールが、来る前に、決める。


 何度も。


 何度も。


 誰にも、言わずに。


 その夜。


 ボールが、味方に、渡った。


 僕は、首を振った。


 右。


 左。


 後ろ。


 相手の、守る選手が、どこに、いるか。


 味方が、どこに、いるか。


 全部、見た。


 ボールが、来る前に。


 そして。


 見えた。


 相手の、後ろに。


 ぽっかり、空いた、場所。


 誰も、いない。


 半歩、速く。


 僕は、そこへ、走った。


 速さじゃ、ない。


 見えたから。


 そこに、いた。


 ボールが、来た。


 僕の、足に。


 ちょうど。


 僕は、蹴った。


 ネットが、揺れた。


 入った。


 世界の、舞台で。


 スタジアムが、揺れた。


 僕の、名前。


 何万もの、声。


 でも、僕は。


 叫ばなかった。


 胸も、張らなかった。


 ただ。


 拳を握って。


 空を見上げた。


 そして。


 心の、中で。


 海の、向こうの子に。


 言った。


 見えたよ。


 僕にも、見えるように、なった。


 ななちゃんみたいに。


 このゴールが。


 僕の、返事だ。


 試合の、後。


 インタビューが、あった。


 マイクを向けられた。


 僕は、言った。


「ありがとう、ございます」


 それから。


「チームメイトの、おかげです」


 それだけ。


 うまく、しゃべれない。


 でも。


 言葉に、しなくても。


 さっきの、ゴールが。


 全部、言っている、気がした。


 最後に。


 僕は、レンズを、見た。


 二部のときは、ただ、向いただけだった。


 今度は、まっすぐ、見た。


 僕は、世界の、入口に、立った。


 でも。


 てっぺんは。


 まだ、ずっと先だ。


 もっと見る力を。


 もっと上へ。


 大丈夫。


 見ててくれる人が、いる。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


この章で描きたかったのは、「速い選手」ではなく、「見える選手」になるまでの物語でした。

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