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世界一のストライカー【見て書いてきた少女】  作者: K3


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31/43

第29話「プレーオフ」

夢に一番近づいた日に、人はもう一度、自分の弱さと向き合います。

プレーオフ。


一部と、


二部を分ける、


最後の二試合。


相手は、


一部リーグ十六位。


ずっと、


一部で戦ってきたクラブだった。


スタジアムへ入る。


大きい。


二部とは、


空気が違う。


観客席は、


試合前なのに、


もう埋まっていた。


旗が揺れる。


歌が響く。


地面まで、


震えている。


ぼくは、


ゆっくり息を吸った。


芝の匂い。


少し湿った土の匂い。


スパイクで、


地面を踏む。


柔らかい。


でも、


逃げる場所はない。


    * * *


笛が鳴る。


試合開始。


最初の十分で、


分かった。


強い。


相手のセンターバックは、


ぼくを見ていなかった。


ぼくだけじゃない。


ボール。


味方。


空いた場所。


全部を、


一度に見ていた。


ぼくが、


右へ動く。


相手も、


半歩だけ動く。


まだ、


パスは出ていない。


ぼくは、


さらに中へ入る。


それでも、


相手は、


もうそこにいた。


読まれている。


三年間、


積み重ねてきた、


ぼくの半歩が。


通じない。


    * * *


ルカなら、


力で押した。


マルティンなら、


速さで抜いた。


でも、


ぼくには、


どちらもない。


だから、


動き続ける。


相手の背中へ。


死角へ。


何度も、


入り直す。


右足で止まる。


左足で切る。


もう一度、


走る。


でも。


ボールが来ない。


相手は、


ぼくより、


先に動いていた。


前半二十八分。


相手のカウンター。


右サイドを破られる。


低いクロス。


合わせられる。


失点。


〇―一。


スタジアムが、


大きく揺れた。


ぼくは、


拳を握った。


まだだ。


まだ、


終わっていない。


    * * *


後半。


監督が叫ぶ。


「前へ!」


ぼくらは、


攻める。


クロス。


こぼれ球。


ミドルシュート。


全部、


止められた。


ぼくも、


何度も走る。


ニアへ。


ファーへ。


センターバックの背中へ。


でも。


最後の一歩で、


触れない。


あと少し。


その、


あと少しが、


遠かった。


笛が鳴る。


試合終了。


〇―一。


負けた。


    * * *


ロッカールームは、


静かだった。


誰も、


話さない。


汗の匂いだけが、


部屋に残る。


ぼくは、


スパイクを脱いだ。


土が、


ぽろりと落ちる。


その音だけが、


聞こえた。


合計、


〇―一。


ホームでは、


二点が必要。


簡単じゃない。


ぼくは、


ロッカーに座ったまま、


目を閉じた。


そのとき。


頭の中に、


マルティンが浮かんだ。


あいつが、


いたら。


あの一歩目が、


あったら。


一点、


取れたかもしれない。


そう思った。


でも。


すぐに、


首を振る。


違う。


もう、


いない。


ルカも。


マルティンも。


ここにいるのは、


ぼくだ。


速くない、


ぼく。


それでも、


逃げなかった、


ぼく。


だったら。


ぼくが、


やるしかない。


    * * *


ホテルへ戻る。


夜だった。


窓の外には、


知らない街の灯り。


机に、


ノートを広げる。


今日の試合を、


思い出す。


センターバック。


右足から、


踏み込む癖。


クロス対応は、


ニアを優先する。


七十分を過ぎると、


足が止まり始める。


左へ向いたあと、


右へ戻るのが、


少し遅い。


全部、


書く。


一ページ。


二ページ。


三ページ。


鉛筆が、


短くなっていく。


書けば、


少しだけ、


落ち着いた。


怖い。


正直、


怖い。


昇格できなかったら。


また、


二部だ。


全部、


やり直しだ。


でも。


三年前も、


怖かった。


ドイツへ来た日も。


初めて試合へ出た日も。


ロッカーで、


笑われた日も。


全部、


怖かった。


それでも。


逃げなかった。


だったら、


今回も同じだ。


ノートの最後に、


一行だけ書く。


まだ、終わっていない。


鉛筆を置く。


窓の外を見る。


夜空は、


雲に隠れていた。


星は見えない。


でも。


雲の向こうに、


空があることは、


知っている。


ホームがある。


九十分、


残っている。


ぼくは、


ノートを閉じた。


今度は、


ぼくが、


半歩、


先に立つ。

一度負けても、次の九十分が残っている。それもサッカーの面白さです。

キチャ━━━━(゜∀゜)━━━━!![笑]

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