表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界一のストライカー【見て書いてきた少女】  作者: K3


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/45

第19話「日記の中の名前」

毎日書き続けた日記は、少しずつ、心まで映すようになっていました。

夜に、なった。


わたしは、


神棚の前に、立つ。


二礼。


二拍手。


一礼。


パン。


パン。


小さな手の音が、


部屋に、ひびいた。


海斗おにいさんが。


元気で、ありますように。


それから。


少しだけ、


目を閉じる。


ドイツは、


今も、


試合が続いているらしい。


時差があるから。


夜中に、


こっそり、


小さな画面で見る。


お母さんには、


ないしょ。


走る姿を。


ボールを追う姿を。


ずっと。


見ている。


    * * *


机に向かった。


日記帳を開く。


表紙は、


少しくたびれていた。


一番上には、


いつもの文字。


「ななちゃんの、しょうにん」


まだ、


字が上手じゃなかったころの、


ひらがな。


その下には。


今までの、


毎日が並んでいた。


海斗おにいさんが、


「こわい」


って、


教えてくれた日。


ジオンさんが、


いつもと少し、


ちがって見えた日。


うれしかった日。


悲しかった日。


ちゃんと、


見て。


ちゃんと、


書いた日。


全部、


ここにある。


    * * *


新しいページを、


開いた。


鉛筆を持つ。


少しだけ、


考えて。


書いた。


かいとくんのことを、書きたい。


書いてから。


わたしは、


手を止めた。


……あれ。


今、


わたし。


「海斗くん」


って、


書いた。


前は。


「海斗おにいさん」


だった。


いつから、


変わったんだろう。


思い出そうとしても、


思い出せない。


いつの間にか。


心の中では、


海斗くんに、


なっていた。


胸が。


少しだけ、


どきっとした。


なんでだろう。


自分でも、


分からない。


でも。


その「どきっ」は。


日記には、


書かなかった。


まだ。


名前を、


つけたくなかったから。


    * * *


海斗くんが、


ドイツへ行って。


もう、


ずいぶん、


時間がたった。


あの夏から。


わたしは、


ずっと、


見てきた。


見て。


書いて。


また、


見て。


いつか。


海斗くんのことを。


ちゃんと、


一つのお話に、


書きたい。


でも。


まだ、


その時じゃない。


今は、


見る。


そして、


書く。


それを、


続けるだけ。


日記帳を、


閉じた。


そっと。


「まだ、ないです」


と、


言った口。


「書きたい」


と、


書いた手。


その二つは、


どちらも、


わたしだった。


窓の外は、


春の夜。


風が、


やさしく、


カーテンを揺らした。


わたしは。


少しずつ。


前へ、


進んでいる。

毎日書く一行は、いつか誰かの物語になるのかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ