第四話 幽霊電車
1
主人公…天掴陽陰は、決して一般的とは言えない育ちの高校生だった。彼の両親は彼とはある事情で不仲であり、特に彼の父との関係はというと、陽陰に憎しみ以外の感情はないく、父はほぼ無関心という、かなり歪なものだった。それには、彼の出生そのものが関わっているが、彼はそれを知る由もない。なぜなら、それは彼の出生に関わるある計画の存在を示すことであり、彼は初めから造られたものであると伝えることであり、それどころか彼の存在が____と告げることなのだから…
2
今、陽陰は久々の学校で定期考査を終えて帰宅する途中なのだが、
陽陰 (まずいことになってしまった…)
電車の周りに大量の骸骨の霊が寄ってきて、しかもすべてが顕現しているため、電車が緊急停止して動けない状況なのである。外から大量の骸骨が窓を叩いてくる地獄絵図の中、かれこれ2時間囚われていた。
赤子「うぇーん、うぇーん…」
女性「ほーら泣き止んで。ごめんなさい、ごめんなさい…」
近くに座っていた赤子を連れた母親が子供をなだめながら謝っている。正直この状況で泣かない赤子は筋金入りだし、泣くのは仕方ないと思っている。
だが、依然として緊急事態に変わりはない。そもそもなぜこんなにも多くの骸骨が寄ってきているのか。少なくとも今朝この電車に乗った時、こんなことになるどころか一体の骸骨も見えなかったはずだ。というか、骸骨に電車がジャックされるなど、あったらニュースになる。
陽陰「この状況を抜け出さなきゃいけないのは変わらないんだ。そのために、今取れる手段は何だ…?」
骸骨が現れた時考えていた思考に立ち返る。今でこそ電車が停止して乗客も落ち着いてきたが、当初は動く電車の中でパニックになり、骸骨が襲ってきたのもあって脱線寸前だった。車内が落ち着き、骸骨の攻勢も落ち着いてきた今だから取れる手段は…
………ッ ヴーッ ヴーッ ヴーッ ヴーッ ヴーッ
突如として、さっきまで音沙汰もなかったスマホからマナーモードのときの振動がきた。
3
???「もしもーし!おーい!聞こえてるー!?さっきの電話なに___」
電話に出るやいなや大声で話しかけてきたので(ほぼ)反射で音量を0にして、同時にもう片方の手でワイヤレスイヤホンをバッグから取り出し、耳につけて起動した。
陽陰「電話で大声出さないでください。今電車の中なんです。」
電話の向こう側の人物を咎める。
???「ごめんごめん、電車の中で電話してきてるって、今止まっちゃってるやつの中?」
陽陰「はい、かくかくしかじか(省略)でちょっと脱出は厳しいので、助けてもらえるならと…」
電話の向こうの人物は、少し沈黙したあと、
???「いいよー?お腹へってたし…」
本音ダダ漏れのOKサインが出た。
陽陰「じゃあ、お願いします、みつはさん。」
みつは「オッケー、すぐ行くねー!」
そうして、一台の幽霊電車に一人のカミノコが向かうこととなったのだった。
4
電車が停止して2時間強、多くの人は既に精神的に参ってしまっている。ただ骸骨が窓を叩く音だけが鳴り響く静かな時間は、一つの音に破られた。
___パリッ、と音が鳴った。窓にとても僅かなヒビが入る音。
…それは、心の限界を迎え始めていた人々を恐怖の底に落とすものだった。
男性「うあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
男性「嫌だぁぁぁぁぁぁ!!」
女性「何で、さっきまで…!?」
男性「やめろ…来るなぁぁぁ!!」
車内が再度パニックになったことで、骸骨の攻勢も再度激化し、窓にどんどんヒビが入る。流石にこの人数を落ち着かせる手段は陽陰には無い。そしてついに、
骸骨「ーーー!!」
言葉にならない咆哮が響き、先頭車両の一番前の窓が砕けた。割れた窓から中に大量の骸骨が入り、人は次々と喰われ…
???「狂骨の群れか。多いけど、こんなの相手にならないね。」
そうなる前に聞き覚えのない声が聞こえ、窓の前に黒ずくめの女性が現れた。
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その女性は黒スーツに身を包む、三つ編みをした黒髪を靡かせる。そこだけ見れば印象は至極普通な社会人なのだが、そうはならない理由が二つ。一つ、この女性は前兆なく、電車の入口も開けずに突如として現れた。そしてもう一つ、その女性は、左手に拳銃を持っていた。
???「さーて、さっさとこなして帰りますか。」
女性はそう言うと、襲い来る骸骨に拳銃を向けて一発発砲した。
弾丸は骸骨に当たり、骸骨は砕け、
???「『穿』!」
着弾すると同時に女性が唱えると、弾丸から無数の棘が生え、迫りくる骸骨をまとめて串刺しにした。
こうして、骸骨による電車停止事件は、意外と呆気なく終結した。
女性は骸骨が全滅したことを確認した後、陽陰に話しかけてきた。
???「貴方、見えてるのね。いつから?」
陽陰「えーっと、ずっと前から…?」
女性は少し顔を傾げ、悩んでいる。その後、
???「じゃあ、神と付き合ったのは?」
陽陰「別にそんなじゃ…って、え?」
返答を考えた瞬間、陽陰の視界が暗転した。
???「もう分かったから、寝てなさい。」
6
電車騒動の終結から5分後、一人のカミノコが電車に到着した。既に警察が駆けつけており、現状はわかりやすかった。
みつは「陽陰くんはどこだろう」
救助されていく乗客を一人ひとり確認し、ついに陽陰を見つけた。
みつは「陽陰くーん!!」
陽陰「_____?」
応答がない。どころか、何もない。ただ歩いているだけなのに、まるで何も考えていない、無気力な状態だ。
みつは「何で…?」
???「あなたが関わったからよ、みっちゃん。」
後ろから聞き覚えのある声。先程、陽陰の前に現れた女性である。そして彼女は、みつはにとって重要な女性で、かつての親友であった人物だ。その名は…
みつは「___久しぶりだね、リンちゃん。卒業式ぶりだから、十年経たないくらい?」
その名は神名部 凜。みつはの中学時代の親友で、名門祓魔師「神名部家」の次女である。




