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名前の知らない勇者探しの話  作者: 針鼠土竜


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18/20

決着の話

(……まだだ)


ルークスの視線が、グレイを捉える。


左腕は垂れ下がり、明らかに使い物にならない。


それでも――構えは崩れていない。


戦いを続ける。なぜなら、既にグレイは勝機を見出していたのだ。


大型獣族の弱点にーーー


「どうしたァ!!さっきの勢いはよォ!!」


ギロウが踏み込む。


速い。


だが――


(さっきより……勢いが無い?)


ルークスは違和感に気づく。


わずかに。


ほんのわずかにだが、動きに“引っかかり”がある。


グレイは動かない。


いや――


動きを、変えた。


これまでの“受け流し”ではない。


避ける。


最小限だけ、触れる。


右手一本で、剣を滑らせる。


真正面からは受けない。


流しきれないなら、そもそも受けない。


「チッ……逃げてんのか!」


ギロウの一撃が空を裂く。


その隙間を、グレイは紙一重で抜ける。


半歩。


いや、半歩すらない。


数センチの移動。


それだけで、致命を外す。


(受けてない……いや、“受けられない”のか)


ルークスは理解する。


左腕を失った今、さっきまでの戦い方は成立しない。


だから変えた。


即座に。


(対応……!)


グレイの呼吸は、まだ乱れていない。


対して――


「はぁ……はぁ……!」


ギロウの息が、荒い。


それでも攻める。


止まらない。


止められない。


「終わらせるッ!!」


さらに踏み込む。


さらに振るう。


力任せに、ねじ伏せにいく。


だが。


(……多い)


ルークスの目が細くなる。


無駄が。


ほんの少しずつ、増えている。


踏み込みが深すぎる。


振り抜きが大きい。


戻しが遅い。


「……そうか」


グレイが、小さく呟いた。


その目が、初めてわずかに変わる。


(気づいた……!)


ルークスは確信する。


「体力切れか!」


ギロウの体。


巨大な体躯。


膨れ上がる筋肉。


獣族の特徴だ。


だがそれは――


持久戦には向かない。


「はぁ……はぁ……逃げんなや……!」


ギロウは止まらない。


止まれない。これが東剣流の連撃の弱点。


だからこそ、加速する。


「押し切るッ!!」


振り下ろし。


だが。


その一撃は――


ほんのわずかに、鈍い。


「――遅い」


グレイが、前に出た。


再び。


自分から。


「っ!?」


ギロウの目が見開かれる。


読まれた。


そう理解した時には、もう遅い。


グレイは、内側にいる。


最短距離。


無駄のない軌道。


右手一本。


それでも十分だった。


これまで積み上げた“読み”が、全てそこにある。


「これで――」


ギロウが無理やり剣を引き戻す。


だが、間に合わない。


呼吸が。


筋肉が。


疲労による痺れが体に轟いた。


もう、追いつかない。


振るわれた一撃は、静かだった。


速さも、重さもない。


だが――


完璧だった。


キィン――


乾いた音。


ギロウの剣が、弾かれる。


力ではない。


タイミングと角度。


“読まれた”結果。


体勢が、完全に崩れる。


「……ああ、クソ」


ギロウが笑う。


悔しさと、納得が混じった顔。


次の瞬間。


グレイの剣が、喉元で止まっていた。


勝負は決した。


静寂。


そして――


歓声が、爆発する。


だがルークスは、それを聞いていない。


(変えた……戦い方を)


折れた。


それでも、止まらなかった。


戦い方を捨てて、組み直した。


(……これが)


ルークスは拳を握る。


(“勝つ”ってことか)


力でも、技でもない。


状況に応じて、全てを変える。


それでも最後に残るのは――


勝ちだけ。


その先に。


自分は、立てるのか。



こうして、剣術大会が終了した。







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