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決まり事

 望む答えが得られるはずもなく、


風が収まるとドーラは落胆した様子だった


なら、僕も同じようにドーラに決めて貰えばいい


でもそれを伝えると躊躇しているようだった


「…よいのじゃ?

 御主は忘れているだけで、きっと本当は名前が…」


「僕もドーラに付けて欲しい。思い出すまででも」


ドーラは僕の目をじっと見る


本気なのが伝わったのか、再び空を見上げて考え出した


「…そうじゃなぁ…」


再び森の声を聞くためか、ドーラは目を閉じた


それからあまり時間を置かずに"ヌシ"と言った



 魔女はドーラに向かって"お前は森の主だね"と言われたことがある


意味を聞いたドーラは主という言葉を大層気に入っており、


他人を指す言葉も御主にしているようだった


「御主は、相手を指す言葉らしいから、名前じゃないから…

 少し変えて主って呼びたいのじゃ」


「いいのかな?ドーラの話を聞くと強い人だけみたいだけど…」


主の意味を聞くと森で一番強い存在、のような意味だった


似合ってるかどうかはともかく、不釣り合いだ


「…気に入らないじゃ?」


「…いや!」


悲しげな声にとっさに強めの否定してしまった


ドーラが決めてくれた名前だ


不釣り合いでも、今日から主として生きてみようと思った


「僕も気に入ったよ。今日から僕は主だね」


「よかったのじゃ!

 そろそろ冷えるから家に入るのじゃ

 …。…ぬ、主…」


「あはは。そうだね、ドーラ」


「…名前を呼び合うのは、ちょっと照れるのじゃ…」


相当照れているのか、ドーラは頬を染めていた




 大樹に入ると中は明るかった


夜が来たはずなのにどうして明るいのかと尋ねると


ドーラが玄関の脇に置いてあったガラスの容器を持ち上げた


「これも覚えてないんじゃな

 これは念の為の予備じゃが、ヒカリゴケじゃ」


中には白い苔の乾燥したものが入っていた


使う場合は水を入れ、生き生きとさせないといけない


それを日差しを浴びせておけば暗くなった後に勝手に光るようだ


そして、その苔と同じ事を大樹にしてもらってる


なんて事を魔女が言ってたらしいが、


それはドーラにも詳しくはわからないようだ



 靴を脱いだ後、ドーラは丁寧にそろえ直した


それから冷たい水で手を洗い、勧められて水を飲んだ


「水分補給は大事じゃって、魔女が言ってたのじゃ」


靴を揃えて並べ、手をしっかり洗い、こまめに水を飲む事


これらすべて魔女の教えらしい


僕も守りたいと伝えると嬉しそうだ



 それから大樹の事を説明してくれた


この大きな広間にテーブルと調理場があり、


奥にはトイレとお風呂がある


らしいのだが、僕にはどちらもよくわからない


「トイレがわからないじゃ?

 えーと、そうじゃな…

 実際、行って見てみるのじゃ」


案内された小部屋で詳しい説明を受ける


とにかく催したら服を脱いで此処に座るらしい


「お尻と前に違和感があるはずじゃ

 で、した後は汚れがなくなるまで葉っぱで拭くのじゃ

 こうやって拭くのじゃ。…わかったのじゃ?」


「多分、大丈夫」


「まぁ、これは忘れてても本能じゃから…

 すれば思い出すと思うのじゃ

 使った葉っぱは同じ穴に捨ててよいのじゃ」


それに終わったら必ず手を洗う事


それも魔女との約束と言ったので覚えておこう



 次に案内された部屋は湯気が立ち込める部屋だった


此処がお風呂と呼ばれる場所で、


大樹が吸った水を日差して温めている


それが壁伝いに流れて一か所に溜まっていた


「ここで身体を洗うのじゃ

 お湯で身体を洗う種族は居るには居るらしいんじゃけど…

 全身浸かる種族は、今はほとんど居ないらしいのじゃ」


ドーラがお湯に手を入れた後、僕を手招きする


真似をして手を入れると温かくて気持ちがいい


僕が気に入ったのが伝わったのか、すぐ入ることを勧められた



 改めてお風呂の入り方を教わった


ひとつ前の部屋で服を脱ぎ、汚れた服を籠に入れる


次に浴槽に浸かる前に掛け湯をし、


汚れを落としつつお湯の温度に身体を慣らす


そして浴槽に浸かった後、身体が温まったら上がる


「…で、あってる?」


「あってるのじゃ

 何かあったら大声で呼んでくれればよいのじゃ

 わしは食事の準備をしたいから、主はゆっくり入るのじゃ」


そう言い残してドーラは去っていった


…。

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