宣戦布告
夕暮れ時に二人が帰って来た
仲良く手を繋いでいるまではよかったけど、
土竜の雰囲気がやけに落ち着いていて、
欠片の焦りも緊張も無くて、
その様子に少しだけ違和感を覚えた
「主、おかえりじゃ!
一日居ないから寂しかったのじゃ」
「あはは、ただいまドーラ
掃除、任せちゃってごめんね」
「よいのじゃ
お腹空いてるじゃろ?
温めればすぐ食べられるのじゃ」
龍人は彼に夢中で気に留めていない
今朝の土竜は普段通りに控えめで、
それに自信が無さそうだった
なのに、今は魔女と似たような雰囲気を漂わせて、
余裕があるように思える
そんな彼女はとても可愛らしくて、
彼とお似合いに見えてしまった
土竜が気になって食事が喉を通らなかった
あれは強敵だ
決して彼女の事は嫌いではないし、
あの性格は好ましいし、応援もしたかった
けど、彼の二番目を盗られるのは
到底、許容できるはずがない
「グラさん!
ちょっと可愛くて胸が大きいからって
主さんの二番目は渡しませんからね!」
「…褒められてるの…?」
「…違います!
宣戦布告です!」
あえて彼の目の前で宣言した
やっぱり、戦うなら
正々堂々と勝ち取らないと意味がないし
モヤモヤした気持ちで居るのはよくない
「…私は何番目でもいいの…」
「そんな事言っても信じられません!
主さんを見る時の目が乙女でしたもん!」
「…そ、そんな事言われても…」
隣では龍人が興味無さそうに欠伸をし、
魔女はいつものように笑っていて、
土竜は困ったようにオロオロとしていた
最後に当の本人を見ると目を逸らした上に
頭を搔いている
その姿を見た瞬間、血の気がサッと引いた
もしかして、彼の中で既に
序列の変動があったのかもしれない
そう思った矢先、彼が口を開いた
「ねぇリーフ」
「…な、なんですか…」
彼が何て言うのか怖かったけど
今更逃げ出すわけにもいかない
手をギュッと握りしめ、
今から飛び出す答えに備えておく
「僕はドーラの次にリーフが好きなままだよ」
「…本当、ですか…」
「リーフは嘘がわかるんでしょ?」
「…そうですけど…」
「変わらないよ
確かにグラは好きになった
でも、リーフへの気持ちはずっと変わってない」
確かに彼の言葉に嘘はない
でも、角も尻尾も無くて、
皆に比べると貧相な身体の私が
本当に彼の好みなんだろうか
既に外は暗かったけど
丘まで散歩しようと彼が誘ってくれた
龍人も付いて来ようとしたけど
それは魔女が止めてくれた
「…ごめんなさい…
…急に、あんなこと言い出して…」
「僕は気にしてないよ
グラもびっくりしてたけど、
多分、怒ってないと思うんだ」
本当、みっともない
勢いよく宣戦布告したのに
結局、彼に気を使わせている
「…もう帰りましょう…
…グラさんに、早く謝らないと…」
丘に着く前にそう言うと
彼は繋いだ手に力を込めて
私を引っ張るように歩き出す
「リーフが元気になるまで帰らないよ」
「…朝までかかりますよ?」
「あはは、ドーラに怒られそうだね
そしたら一緒に謝ってくれる?」
わかったと伝えると
彼は安心したと笑った
丘に到着した
座ると彼は背後に回り、私を背中側から抱き締める
これは龍人が好む格好だ
「寒くない?
毛布持ってくればよかったね」
「…ねぇ、主さん
私の外見で、何処が好きですか?」
「外見?えっとね…」
「あ、待ってください!
言いながら、触ってくれませんか?
ドーラさんの、尻尾を触るみたいに…」
彼は龍人の尻尾が何より好きだ
いつだって触って愛でている
私にはどうしようもない事だけど、
少しくらい、雰囲気を味わいたい
一つ、できれば二つあればいいな
身体は貧相だけど、顔には自信があるし
足だって細いから、その辺だと思った
「…ひゃっ!」
「リーフの尖った耳が好き
後ね、緑色の目と金色の髪も好き」
耳は敏感だから変な声が出てしまった
その後、彼は身体の部位を細かく口にして
優しく触れてくれた
長い間、丁寧に触れられると変な気分になる
「…も、もうその辺でいいです…」
「まだまだあるのに…」
「…私を好きな事が十分わかりましたから、
これ以上は、恥ずかしくなっちゃって…」
キスもしてるし、一緒に寝てるし、
それにお風呂で裸も見せている
だから、照れる事なんてないと思ってた
でも、沢山好きと言わせるのは
想像以上に恥ずかしくなった
「…主さんはなんて言うか…
結構、怖い人ですね」
「え?どういう事?」
「女の人の扱いが上手いです
私、もう元気になりました」
「ほんと?それはよかったけど
あと一つ、好きなところ言っていい?」
「どこです?足ですか?
触りたいんですか?」
「あはは、足に自信があるんだね
足も好きだけど…僕の腕に納まるくらいの、
皆より少し小さい身体のリーフが好きなんだ」
そう言って強い力で抱き締められる
ああ、この人は本当に私を好きなんだと、
不安になった心を満たしてくれた
…。




