私の仕事
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リーフさんの里に来てから、今日で何日目になるんだろう。
主さんと離れるのは寂しいけど、
まさか雇って貰えて、お金が貰える日がくるなんて、夢にも思わなかった。
本当はお金は全部、リーフさんやドーラさんに渡そうと思っていた。
今まで食べていた食料のほとんどは、
リーフさんが街まで買い出しに行ってくれた物だったし、
元々はドーラさんの鱗の代金だった。
だから、少しでも恩返しがしたかった。
どちらに渡そうか魔女さんに相談したら、自分で使いなさいって言われた。
だから迷ったけど、一度だけ私の好きな事に使う事にした。
雑貨屋で働いてると、棚の奥に綺麗な鉱石を見つけた。
忘れられているかのように、少し埃を被っていたそれは、
キラキラしてて、とても素敵だと思った。
土竜族には土を掘って見つけた石や鉱石の中で、
もっとも綺麗な物を大切な人に贈る風習がある。
私は土を掘るのが得意じゃないからできないけど、
その代わりに、主さんにこれを贈ってみたいって密かに思ってた。
「よし。それじゃグラを借りて行くよ」
「ああ。でもあまり無茶はさせないでね」
「わかってるよ。ほら、仕事に行くよグラ」
「…うん…」
今日もフィーさんの雑貨屋で働いている。
私は裁縫ができないから服作りは手伝えない。
でもその代わり、フィーさんがいつの間にか請け負ってきた仕事を手伝っている。
一番多いのは家の模様替えの手伝い。
私は土竜族の中では考えられないほど非力なんだけど、
森人に比べればとても力があるみたい。
二階から一階へ棚を運ぶだけなのに、ものすごく感謝された。
「役に立つね。
ほんとに土竜族の中では非力なのか?」
「…うん…それに土を掘ると手が傷だらけになっちゃうし…」
「なるほどね。この傷跡はそういう理由なんだ」
お仕事の帰り道、中央の広場で休憩しようと言われた。
普段はまっすぐ帰って、掃除や品出しをするはずなのに。
不思議に思っていると、主さんの事について聞かれた。
「グラもあの坊やが好きなんだろ?何処が好きなんだ?」
「…主さん、優しいの…」
「例えば?」
「…私の手、触ってくれるし…パンもくれたし…
…あんなに優しい人、初めて会ったの…」
「ふぅん。まぁ優しそうだとは思うよ。
でも、それだけでそこまで惚れるものなのか?
私には人を好きになる感覚がよくわからないから、聞いてみたかったんだ」
「…私でいいの…?
…他の人に聞いた方がいいかもしれないの…」
「いや、グラにしか聞けないよ。
リーフも魔女も普通とは違うから参考にならないし、龍人はもっと特殊だ。
里の奴にも恥ずかしくて聞けないから、頼むよ」
そうフィーさんが言うから主さんを好きになった理由を話した。
その流れで生まれ故郷でいじめられて、逃げ出した話もすると、
少し渋い顔になって謝られた。
「嫌な事を思い出させて、すまなかったな」
「…ううん…おかげで主さんと会えたから…」
「前向きなのは良い事だ。
辛い過去のおかげで坊やに出会えたと思えるなら、グラは強いね」
「…そういって貰えると嬉しいの…」
自分の事をずっと弱いと思っていた。
力が出ない事だけじゃなくて、性格も含めた全てが弱いと思っていた。
だから、強いって言われるとなんだかくすぐったい。
皆と一緒に居て、強くなれてたらいいなと思った。
話は続き、一通りの事を話した。
主さんはドーラさんが一番好きで、二番目はリーフさん。
次に魔女さん、そして最後に私なんだと話す。
「グラは四番目でいいんだ?」
「…何番目でもいいの…少しでも好きになってくれたら…」
「私が新しく四番目になって、グラが五番目になってもいいって事?」
「…それは…嫌なの…」
「冗談だからそんな顔しないでよ。
さて、面白い話も聞けたしそろそろ帰ろうか」
最後に少しからかわれた後、雑貨屋に帰った。
雑貨屋に戻ったフィーさんは、
私の話を元に、魔女さんにも色々と聞いていた。
主さんを好きな理由と、三番目でいい理由。
そういえば聞いた事なかったから、私も興味はある。
「魔女は坊やの何処が好きなんだ?」
「うん?なんだ突然に」
「さっきグラにも聞いたから、興味が沸いたんだ」
「何処と言われてもね。気が付いたら好きになってたんだよ」
「一番になりたいと思わないのか?」
「思わない。でももっと愛して欲しいとは思う」
「うん?どういう事だ?」
「一番に愛してくれとは言わない。
でも、今よりもっと求めて欲しいとは思う」
「ふぅん。なんとなくわかった」
フィーさんはなんとなくって言ったけど、
私は魔女さんの気持ちがよくわかった。
私も他の人より好きになって欲しいとは思えないけど、
確かにもっともっと、愛して欲しい。
今のままでも十分なのに、それは我儘な願いなんだろうか。
それを雑貨屋からの帰り道に、魔女さんに聞いてみた。
「ハハッ。好きな人にもっと好かれたいと思うのは当然だろう?」
「…そう…?」
「正直、ドーラやリーフより愛して貰えるとは思ってない。
でも、やっぱりもっと愛して欲しいとは思うだろ?」
「…すごく、よくわかるの…」
「確かに我儘かもしれない。
でも、気持ちは止められない」
そんな話をしてると早く主さんに会いたくなった。
ううん、広場でフィーさんと話してる時から、ずっと会いたかった。
私達が借りてる家の煙突から煙が見えてる。
そこに居るんだと思うと、気持ちが逸る。
「行っておいで」
「…でも…魔女さんだって…」
「私は後でいい。ほら」
そういって背中を押してくれた。
そうするともう我慢できなくて、残り短い帰り道を走って帰る。
家に着いた。
息を切らせて現れた私に、ドーラさんとリーフさんは少し驚いていた。
でも主さんはいつもと同じく、優しい笑顔でおかえりって言ってくれた。
「おかえりグラ。慌ててどうしたの?」
「…ただいまなの…主さんに会いたくなって急いで帰って来たの…」
「ほんと?僕もグラに会いたかった」
迷ったけど、主さんに抱き着いた。
普段ならドーラさん達に遠慮して、見える所ではあまりできなかった。
でも、今日は気持ちがどうしても収まらない。
遅れて帰ってきた魔女さんが二人に説明してくれた。
そのおかげで、少しの間だけど、そっとしておいてもらえた。
「もう落ち着いたのじゃ?」
「…急にごめんなさいなの…」
「帰ってきていきなり主に抱き着くなんて、
グラも大胆になったものじゃな~」
「…うぅ…あんまり言わないで欲しいの…」
晩御飯を食べながら、今度は皆に少しだけからかわれたけど、
急に抱き着いた事も、笑って許してくれた。
それから、いつもみたいに交代で水浴びに行った。
今日は私と主さんとドーラさんが一緒。
最初の頃は水が冷たくて驚いたけど、
慣れるとこれはこれで、気持ちが良いような気がする。
冷たい川の中で髪と身体を洗い、暗くなりつつある空を見上げる。
久しぶりに昔の話をしたからか、少し感傷に浸ってしまう。
もう一度、主さんに抱き着きたい。
「グラ、平気じゃ?」
「…ちょっとボーっとしてたの…ごめんなさい…」
「仕方ない奴じゃな~…。
主、もうちょっとグラに抱き着くのじゃ」
「…えっ…ほ、ほとんど裸だからいいの…」
「よいから、早くこっちに来るのじゃ!」
強引に主さんの前に連れてこられた。
一応、大事なところはタオルで隠してる。
でも、服を着てる時とは全然違う。
恥ずかしくて動けなくなっていると、
主さんは、優しくそっと抱き締めてくれた。
…。




