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龍人の採寸

買い物をした後、まっすぐ家に戻ってきた。

日暮れまでまだまだ時間はある。

きっと残りの時間を二人でゆっくり過ごすのだろう。


二人きりにする為に私一人で再度出掛ける事にした。

ドラも森人も居ないからどうしたものかと考え、

もう一度、雑貨屋の扉を叩くことにした。



「いらっしゃ…なんだ、また魔女か」

「お金はないけど、邪魔していいかい?」

「まぁいいさ。今日はグラのおかげで気分が良い」



ただ居るだけだと悪いかなと、手伝いを申し出た。

簡単な品出しや掃除などをしながらフィーの身の上話を聞く。


フィーが雑貨屋を始めた理由は簡単に言えば暇だったから。

だんだんとお金の魅力に取りつかれ、稼ぐのが趣味になったそうだ。



「金はいい。分かりやすい」

「行商はしないのか?あっちの方が儲かるだろう?」

「街で店を構えるならまだしも行商は嫌だね」

「それはなんで?」

「ただ趣味じゃないだけ。

 それに基本は男がやるし、リーフが特別なんだよ。

 父親が行商人だった影響が大きいんだろうけど」



今度は反対に私の生い立ちについて話した。

ドライアドである事はぼかして伝えるか考えたが、

フィーなら平気かと、ほぼ全てを話してみる事にした。



「魔女、それは隠した方がいいぞ?」

「やっぱりそうか?」

「グラも大概だと思ったけど、お前もかなり世間離れしてるよ。

 こうして話しているとボロが出る」

「もう言ってしまったけど、秘密にしてくれるかな?」

「まぁいいけどさ…。

 もう少し私と話して常識を身に着けた方が良い」



隠した方が良いと言った割に、根掘り葉掘りと質問が飛んでくる。

流石にドーラを人の姿に変えた事と、大樹を大きくした事は言わなかったけど、

主くんを生み、恋をした話をすると驚かれた。



「へぇ。一応坊やは自分の子なんだね」

「自分の子を好きになるなんて変かな?」

「変だけど別にいいんじゃないか?

 ま、それも隠した方がいいと思うけどね」

「フィーはどうなんだ?」

「なにが?」

「好きな相手とか」

「この里にはロクな男が居ないからね。どいつもこいつもつまらない。

 街に行ったら探してみるよ」



その後も少し雑談をしてから店を後にした。

冷静になれば確かに隠すべき事柄も話過ぎた気もする。

でも色んなことを包み隠さず話せる機会は少なく、どこかすっきりした。


まっすぐ帰ろうかと思ったけど、里の広場で時間を潰した。

すると思った通り、帰ってきたドラ達と合流できた



「魔女じゃ。こんなところで何してるのじゃ?」

「雑貨屋の店主と雑談した帰りだ。

 此処で待てばドーラ達に会えるかもしれないと思ってね」



ドラ達と一緒に家に帰った。

すると、予想に反して主くん達が家の中に居なかった。

てっきりベッドで過ごしているか、出迎えてくれるかと思っていた。



「…主達はまだ出掛けてるのじゃ?」

「さぁ…。最初は私も一緒に出掛けてたんだけどさ。

 途中で帰ってきて、家で二人で過ごしたいだろうから、

 再度、私だけ出掛けてあげたんだよね」

「で、主は何処じゃ?」

「…何処だろうね」



主くんの居場所がわからないと知ったドラは慌て始めた。

内心、私とて想定外たから少しだけ動揺している。


この里に二人だけで出掛ける場所がどれくらいあるんだろうか。

せいぜいが里の中心の広場か、共通の知り合いの雑貨屋。


そのどちらも今私達が居たのだから違うとすると、

いよいよ二人が何処に行ったのか見当がつかない。



「里の何処かに居るんだから心配しなくて大丈夫ですよ」

「裏の山を越えて何処かに逃げたらどうするのじゃ!」

「何処にです?グラさんは自分の故郷に帰れないんですよ?」

「…そうじゃけど…」

「結婚式にも憧れてたし、少しは信用してあげましょうよ」

「…むぅ…わかったのじゃ…」



冷静な森人に諭され、ドラはすぐに落ち着いた。

本来なら私が言うべき事だったのかもしれない。


それをこっそりと、礼と共に森人に伝える。

すると、森人は私にも同じような事を言ってきた。



「魔女さんも動揺してたでしょ」

「わかるかい?」

「わかりますよ。

 動揺の仕方がドーラさんと似てますから。

 やっぱり親子なんですね」

「似てる?私とドーラが?」



言われてもピンとはこなかった。

だけど、似てると言われて嬉しさを感じる。

もちろん血は繋がってないけど、大切な娘のつもりだ。


ほどなくして主くん達の居場所がわかった。

耳が良い森人が、裏の川付近から二人の声が聞こえると言い出した。

見に行ってみると二人とも服を泥だらけにしながら遊んでいた。



「主!何処に行ったのかと思ったのじゃ!」

「おかえりドーラ。グラに泥玉の作り方を教わってたんだ」

「泥玉じゃ?」

「綺麗に作ると光るんだって。ほら、これグラが作ったんだよ」

「まん丸じゃ。…面白そうじゃな?」

「…ドーラさんも一緒に作る…?」

「…二人の邪魔してよいじゃ?」

「…うん…もう沢山二人きりにしてもらったから…」



流石に泥遊びに参加する気は起きず、

ドラを置いて森人と二人で家に戻った。


川の近くで遊んでいると身体を冷やすだろうから早めにスープを作り、

その間に最近の出来事を森人と共有し合った。


戻ってきた三人は泥だらけでひどい状態だった。

それでも嬉しそうに泥玉を見せてくる三人を怒る気にはならず、

とにかく出来るだけ泥を叩いて落とし、

温かいスープを飲ませた後、再び三人で水浴びに向かわせた。



「あの三人は本当に子供みたいですね」

「主くんは仕方ないさ。生まれてからさほど時が立ってない」

「そうですよね。

 そういえば、主さんと一日過ごしてみてどうでしたか?」

「ああ、とても楽しかったよ。

 大樹で過ごすより特別な時間に感じた」

「いいなぁ~。私も丸一日、過ごしてみたいんですよね…」

「そうか、リーフは短い間だけだったね」

「…はい…。

 ドーラさんは二日も主さんと離れてたから、しばらく無理ですよね?」

「そうだねぇ…」



今日も昨日も、森人がドラを宥めてくれていたんだろう。

そんな彼女の願いをなんとか叶えてあげたい。



「流石に明日や明後日だとドーラが嫌がるだろうけど、

 近日中ならなんとかできると思うよ」

「ほんとですか!」

「服の採寸と言ってドーラには付き合ってもらうよ。

 本当はすぐ終わるけど、一日くらいなんとかする」

「やった!嬉しいです魔女さん!」



いつも落ち着いてる森人も主くんの事となると無邪気にはしゃぎ、笑う。

その素直さが眩しい。


水浴びから三人が戻り、交代で私達が水浴びに行った後も、

森人はずっと上機嫌で主くんについて話していた。


数日後、ドラの機嫌が良さそうな日を選んで雑貨屋に連れ出した。

もちろん私もグラも仕事だから、必然森人と主くんは二人きり。


これで少しは日ごろの恩を返せるだろうか。

私の方が長い年月を生きているはずなのに、

気が付けば森人に頼りっぱなしになっている。


「いらっしゃい。とうとう龍人様のお出ましだね」

「世話になるのじゃ」

「さっそく始めようか」



最近の雑貨屋には服を作る為にフィーが雇った子が数名いる。

今日はドラの採寸をするから急遽休みにして帰ってもらった。


遠目で見る分には大丈夫だとしても、

部屋の中でドラと対峙するのは慣れが必要だろうと判断した。


フィーにも部屋の奥で待っててもいいと伝えた。

だが物おじせず会話をし、堂々としたものだ。


ドラには角と尻尾が生えているから、当然皆の服と形を変える必要がある。

ベールは穴を開ければいいけど、尻尾の部分をどうしようかと悩んだ。

最終的には尻尾より下は切れ目を入れ、後方が二つに分かれる形を選んだ。


これで全員分の服の目途が立ち、一安心だ。


…。

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