見上げた空の美しさ
ゆっくり湖に続く道を歩いた
こうして手を繋いで歩くのも
ずっとずっと、憧れていた
「今日は良い天気だね」
「…う、うん…」
「あはは、緊張してるみたいだね」
「…とっても…」
主さんは色々話しかけてくれるけど
緊張して上手く返事ができない
それに焦って、手も汗ばんできた
だから、手を離そうとしたけど
指を絡めているせいで
上手くいかなかった
「…手、汗かいてきたから…
…離して、欲しいの…」
「僕が繋ぎたいからダメ」
「…あぅ…」
仕方なく手を離すのを諦めた
大人しくなった私に
主さんは満足そうに笑ってたの
森を抜けて湖に着くと
少し冷えた風が火照った身体を通り過ぎて
すごく気持ちがよかった
それに、やけに湖が綺麗に見える
此処には何度も来た事はあるけど
今日は普段より水面がキラキラと輝いていた
「…綺麗なの…」
「後で少しだけ湖に入ってみようよ
でもその前に、話したいことがあるんだ」
「…話…?」
二人きりで話したい事ってなんだろう
もしかして、やっぱり私が嫌になって、
皆に聞かれない様にこっそりお別れを…
なんて不安に思っていると
全然、想像と違う事を言ってきたの
「グラは、僕でいいの?」
「…どうして…?」
「グラだけの僕にはなれないから」
主さんはドーラさんが一番好きだし、
リーフさんと魔女さんも好き
それでも、僕の傍に居てくれる?って
自信が無さそうに聞いてきたの
不安そうな顔をする主さんが意外だった
ずっと明るくて、皆に好かれているのに
こんな顔もするんだなって思った
「…わ、私は主さんがいいの…
…ずっと傍に居るから…
…そんな顔、しないで欲しいの…」
「よかった
僕、優しいグラが好きだよ」
「…あっ…」
嫌われなければいいって思ってた
でも、好きって言われると嬉しくて
どうしようもないくらい涙が溢れてきた
「グラ、大丈夫?」
「…だって…嬉しくて…ヒック…」
ずっと涙が止まらない
そんな私を見兼ねたのか
主さんは初めて抱き締めてくれたの
「嫌じゃない?」
「…うん…うれっ…嬉しいの…」
皆を見てて羨ましかった
好きな人に抱き締められるのは
こんなに幸せなんだって思ったの
やっと涙が止まった後は
靴を脱いで、少しだけ湖に入って遊んだ
水の中をゆっくり歩いて
冷たいねって、笑ったの
「暑い日は泳いだりもできるんだよ」
「…私、泳いだ事ないの…」
「僕もドーラに教わったんだ
今度、グラにも教えてあげるね」
「…うん…よろしくなの…」
気が付くと全然緊張していなかった
身体も軽いし、自然に笑えている
「…。」
ふと見上げれば青空は透き通っていて
周りを見れば森は綺麗で、
足元の湖はキラキラと輝いて、
主さんを見れば笑っている
私のいる世界は
こんなに美しかったんだって、思ったの
大きく息を吸って
ゆっくりと全部を吐き出した
両肩の力を抜いて
ただボーっと空を見上げてみる
「グラ、どうしたの?
何か見える?」
「…こんなに穏やかな気分は…
…本当に久しぶりだなって…」
もしかして初めてかもしれない
物心ついた時から
ずっと嫌われてきたし、
皆に助けてもらってからも
心のどこかで遠慮してたし、
幸せを感じてはいたけれど
絶対に迷惑を掛けない様にって、
ずっと気を張っていた
そんな複雑に絡んでいた感情が
今、全部解けていった
全部、主さんのおかげ
初めて傍に居てって言われたから
必要としてくれたから
だからきっと、自由になれた
「…貴方が好きなの…」
隣で空を見上げる主さんに抱き着いた
相手の了承も得ず、
誰かに甘えられる日が来るなんて
想像すらしてなかった
それから、湖の中で二回目のキスをした
昨日は緊張してよく覚えてないけど
今回は主さんを鮮明に感じられる
「少し寒くなってきたね
水から出ようか」
「…うん…
…でも、まだ帰りたくないの…」
「まだ暗くなるまで時間はあるよ
少し日向ぼっこして…
それからまた遊ぼうよ」
よかった
まだ二人で居られるんだ
どんどん我儘になってる気がするけど、
自分の気持ちを口にできるのは
とっても気分が良い
…。




