頑張った先の光景
どうしてこんなことになったの
さっき、やっと自分の気持ちを伝えられたのに
勇気を出して、全部言ったのに
どうしてまた、こんな事に…
「…あぅ…」
「大丈夫?
今日はもう疲れてるよね」
「…うん…」
「僕がドーラ達に説明してくるよ
今日は許してあげてって」
「…ま、待って欲しいの…
…あっち…端っこ行きたいの…」
主さんはいつでも優しくて、
それに甘えてしまいそうになった
けど、さっきみたいに
急に終わりがくるかもしれないから
伝えられるときに伝えなきゃって
そう、思ったの
皆が遠巻きに私達を見てる
だから恥ずかしくて、なるべく離れたかった
無意識に選んだ場所だけど、
私にとって、此処は大事な場所だった
「此処、最初にグラが過ごしてたところだね」
「…うん…そうなの…」
この場所が好きだった
部屋の隅のこの一角が
最初の私の居場所だったから
此処ならあと少し頑張れるかもしれない
「…あ、あのね…
…もし、もし嫌じゃなかったらね…」
「うん、嫌じゃなかったら?」
「…。」
顔が熱い
手も足も震えている
頑張れるかと思ったけど
キスして欲しいなんてとても言えない
そもそも、何もしてくれなくていいって
言ったばかりなのに
嘘つきだって、嫌われたらどうしよう
やっぱり伝えるのが怖くなった
泣きそうになっていると
主さんが私の手に触れてくれて、
驚いて顔をあげると
大丈夫だよって笑ってくれた
「…物語の二人は最後に思い出の場所で
手を取り合って、キスをしてたね」
「…うん…」
「手を取り合うってこうかな?」
「…えっと…多分こうなの…」
向かい合って手を繋いで
二人の距離が近づいた
ずっとずっと夢見てた光景が
目の前に広がった
「それで、もう一度聞くよ
…もし、嫌じゃなかったら?」
「…もし、嫌じゃなかったらね…
…私とキス、して、欲しいの…」
やっと言ってくれたねって
そう言って主さんはまた笑ったの
そのまま初めてのキスをした
それもずっと夢見てた
物語の二人のような格好でできた
でも、緊張で立っていられずに
すぐ座り込んでしまった
それを見た魔女さんが駆け寄って
私を抱き締めて、褒めてくれたの
「よく頑張ったね
これでグラも主くんのお嫁さんだね」
「…お嫁さんなの…?
…主さんはそれでいいの…?」
「ああ、実は主くんには前もって聞いてたんだ
グラの事をどう思うかって」
「…主さん、なんて言ったの…?」
「それはさっきので分かっただろう?
でも、本当によく頑張ったよ」
「…うん…私、頑張ったの…」
主さんを見ればもうドーラさん達に盗られてた
私みたいに手を取り合って、
リーフさんと相談しながらじゃれている
「こうじゃ?
さっきはグラとこんな感じじゃった?」
「こうじゃないですか?
早くキスして変わってくださいよ」
その様子に魔女さんは呆れてたけど
真似をする二人の姿に
私はとっても嬉しかったの
それから遅めの食事を取った
胸がいっぱいで普段より食べられなかったけど
幸せで満たされていた
「でも主くん
グラが告白するまで助けちゃダメだよって
あれほど言ったじゃないか」
「あはは、グラも頑張ってるから
少しならいいかなって」
「…そんな事言ってたの…?」
「自分の気持ちくらい伝えられないと
ドーラやリーフと張り合えないからね」
「…なるべく頑張るの…」
食事が終わってすぐ寝室に向かった
本当は主さん達がお風呂を上がるのを
待ちたかったけど、
色々あったから身体が限界だったの
魔女さんは私と二人きりなると
また沢山褒めて、それに沢山謝ってくれた
「とても辛い言い方をしたね
本当にごめんねグラ…」
「…もう謝らなくていいの…
…私の為にしてくれたってわかるの…」
「…そう言ってくれると助かるよ」
「…ドーラさんとリーフさんにもね…
…応援してもらったから…
…お礼、言いたいの…」
「良いことだけど、それは明日にしようか
さぁ、今日はもうおやすみ…」
すぐに眠れそうだった
でも、今までの全部が夢なんじゃないかって、
寝たら夢から覚めてしまうんじゃないかって、
少しだけ眠るのが怖かった
…。




