ずっと伝えたかった
この世界の何処にも居ないと思っていた
そんな人間さんを見られるだけで、
一緒に暮らせるだけで夢みたいだった
主さんは想像してた人間さんより優しくて、
私なんかと違って皆に好かれてたし、
正直に言えば、私も主さんを好きになってた
でも、私を好きになってくれるはずがないから
頑張って諦めようとしてたのに
でも、まだ諦めきれてなくて
「最後の一人を探そうと思う」
そう魔女さんが言った時、
心がギュッと潰されるような感覚がしたの
どうしてって思った
あと少し時間をくれたら、
主さんの事をちゃんと諦められたのに
もう少し時間をくれたなら
ちゃんと、身の程をわきまえられるのにって
でも、魔女さんが悪いわけじゃない
悪いのは、私なの
どうすればいいかわからなかった
なんとか私には関係ないって言えたけど、
結局、首を振って否定してしまった
色んな感情が渦巻いて、
頭の中がぐちゃぐちゃで、
何も考えられなくなったその時に
ドーラさんが何を言ってもいいって
そう、言ってくれたの
「…わ、私…私は…グスッ…」
一度止めたはずの涙が再び溢れだした
やっぱり無理だと諦めかけた時、
今度はリーフさんが私の手を取ってくれた
「落ち着いて、大丈夫ですから
もう一度、ゆっくり深呼吸してくださいね」
「…。」
「何も伝えないで諦めるのは勿体ないですよ
勇気を出して、頑張って…」
優しい言葉を掛けてもらって
ほんの少しだけ落ち着けた
皆に背中を押してもらって
気持ちを伝えてもいいのかなって
初めて思えたの
なんとか涙が止まった隙に
本当はずっと言いたかったことを
やっと人間さんに伝える事が出来た
「…わ、私…私もね…
…私も人間さんが…
…主さんが…好きなの…」
一度も好かれた事は無いし、
私に好かれても迷惑を掛けるだけだから
一生、誰にも伝える事はないと思っていた
「…何もしてくれなくていいの…
…嫌いにならないでくれたらいいの…
…でも…貴方を好きでいたいの…」
物語の二人みたいになれなくていい
手を繋がなくていいから
二人で出掛けなくていいから
キスをしなくていいから
だからせめて、私を嫌いにならないで
ただ貴方を好きでいさせて欲しい
それをやっと、伝える事が出来た
顔を見るのが怖かった
あの優しい主さんが、もしも今
嫌悪に満ちた顔で私を見ていたらって、
そう考えるだけで怖かった
「大丈夫、嫌いになんてならないよ」
でも、主さんは優しいままだった
その言葉が聞こえた時
私は我慢の限界で大声で泣いちゃったけど
主さんも皆も駆け寄って慰めてくれたの
私の頭を撫でながら
魔女さんは何度も謝ってくれた
「グラ、よく頑張ったね
…厳しい事を言ってすまなかったね」
「…ううん…
…魔女さん、ありがとうなの…」
おかげで気持ちを伝える事が出来た
ずっとずっと言いたかったことが言えて
生まれて初めて自分を褒めたかった
それから、疲れただろうからって
魔女さんがお風呂に誘ってくれた
皆に食事の準備を任せるのも
先にお風呂を済ませるのも気が引けるけど
皆も勧めてくれたから、甘える事にしたの
普段よりもお風呂が気持ちよかった
皆のおかげで少しだけ前向きになれたし、
ほんの少しだけど、自分を好きになれそうだ
沢山泣いてお腹が空いたから
食事もとっても美味しくて、幸せな気分だった
後はゆっくり眠るだけ
そう思っていた
「で、いつキスするのじゃ?」
「…魔女さん…?
…いつもなら寝る前なの…」
「いや主とグラがじゃ」
「…?
…どうして私と主さんがするの…?」
「元々キスの相手を探す話じゃったろ?」
ドーラさんが言ってる事が理解できなかった
でも、よく思い出せば
確かに最初はそんな話だった気がする
「話が決まったなら
早めにしてくれた方がわしも安心できるのじゃ」
「…で、でも…だって…」
「なんじゃ?」
「…主さんは私の事、嫌いにならないだけで…」
「あ~…あの言い方ならそうじゃな…
よし、ならちゃんと告白するのじゃ」
「…え…?」
ドーラさんは私が止める間もなく
すぐに皆に何かを話しに行った
あれよあれよという間に
なぜか主さんと向かい合う事になったの
…。




