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雑貨屋の店主

三人で雑貨屋に相談しに行くと露骨に嫌な顔をされた。

此処の店主は悪い人ではないのだけど、

お金が好きで無駄を嫌う。



「金にならない相談なら受けないよ」

「そこをなんとか!

 フィーさんは一からこのお店を初めて大きくしたじゃないですか。

 なにか、この里で効率的にお金を稼ぐ方法ないですか?」

「…。」



店主は私の質問に答えず、顎で商品棚を示す。

多分、何かを買っていけと無言で言っている。

情報料という事だろうけど、

商品を買うおまけで教えてくれるなら良心的だと思う事にしよう。



「じゃ、これとこれ。それにこれもください」

「いいね。毎度」

「…これで何か教えてくれますか?」

「この里で金を稼ぐのは難しいね。

 この里の奴がどうやって金を得てるか知ってるだろ?」



この里でお金の得る方法は大きく二つ。

一つは里の人に何かを売って対価を得る。

もう一つは何かを作って行商人に頼み、代理で街で売ってもらう。

因みに、それを請け負ってる行商人は私のお父さんだ。



「だから相談してるんじゃないですか!」

「落ち着きなって。

 買い物分くらいの相談はちゃんと乗ってあげるよ。

 まずは何に使うか、いくら必要なのか」



そこから魔女さんと交代した。

どうやら里で一番上等な生地を使い、

更にそれを複雑に縫い合わせる必要があるそうだ。



「なるほどね。かなりの金額が掛かるよ」

「…やっぱり、諦めるしかないか」

「いや?金儲けじゃないならどうにでもなるよ。

 聞いている限り、未知のデザインだ。

 多分服屋の店員の中で興味がある奴が居る気がする」



店主の言い分はこうだった。

魔女さんがその服の製造を教えて手伝い、

その代わりに最低限の費用で作ってもらえるように交渉すればいい。

お金じゃなくて、情報で服を買う。

私には無い発想だ。



「できればそれを四着欲しい」

「四着?」

「結婚式を挙げる時に皆で着たいんだ」

「例の龍人の結婚式だな?

 それにしても森人の里でしか作れない生地を使った未知の服…。

 金の匂いがする。楽しくなってきた。

 全部私に任せてくれないか?」

「何を企んでるんですか?」

「出資をする。

 私自身が生地を買い、服を仕立てられる奴を探して雇う。

 報酬は四人分の服。対価は製造方法と街での独占販売の許可だ」



呆れたものだ。

店主は森の雑貨屋だけでは飽き足らず、街で服屋を営みたいようだ。

まぁ黙ってやらずに許可を得ようとする分、紳士的とも言える。



「どうだ?」

「それ、私達がお金を出して服屋さんに頼むのと何が違うんです?」

「私が儲かる」

「…私達にメリット、無くないです?」

「まず私が全部出資するからそっちの費用はゼロだろ?

 それにアンタを正式に雇うから給料も出す。

 さらに私がオーナーになれば細部まで拘って作れる。どうだ?」



魔女さんは逡巡したが、最終的には頷いた。

独占販売は私も魅力を感じるけど、

あの高価な生地を使う事もあってかなりのリスクを背負う事になる。

昔の私ならいざ知らず、今は検討にも値しない。



「なら、頼むよ。

 魔女と呼んでくれ」

「任せてくれ。私はフィーだ」



皆で改めて自己紹介をした。

それから魔女さんが服の詳細を説明すると、

店主はもとより、グラさんがかなり興味深そうに聞いていた。



「…私も何かお手伝いしたいの…」

「確かグラと言ったね?裁縫はできる?」

「…したことないの…」

「ふーむ。まぁ、いいだろう。

 土竜族は力が強いから普段できなかったことが出来そうだ。

 よし、君も雇おう」

「…頑張るの…」



こうして魔女さんとグラさんは雑貨屋の店主に雇われた。

私も雇おうか聞かれたけど、丁重に断った。

此処で働くより街を往復した方が儲かるし、

今は働かずに彼の傍に居たい。



「服が完成して量産できたら街で店を開きたいんだが、

 街で誰かツテはないか?」

「珍しい物を買い取ってくれるお店は知ってますよ。

 確か色んなお店も出してるはずです。

 もしかしたら空いてる店も持ってるかも?」

「色々成功したら街に一緒に行って紹介してくれないか?

 報酬は弾むよ」

「ん~、一度だけならいいですよ。

 それに、報酬は私も服でいいです」

「ずいぶん欲が無くなったな。

 大事な人ができるとこうも変わるもんか?

 まったく、恋はしたくないね」



話が一段落すると店主は店を閉めた。

これから服屋に向かい、生地と人材の交渉をするのだろう。

魔女さん達はその結果次第で明日から働くかもしれない。



「助かったよリーフ」

「なんとかなってよかったです!

 でも、やっぱり魔女さんも働く事になっちゃいましたね」

「構わないよ。

 自分で手掛ける事ができるならそれもいい。

 それに、ドーラの角や尻尾の部分は私が作った方がよさそうだ」



確かに、龍人の採寸は里の人には無理かもしれない。

それを魔女さんがしてくれるなら私としても安心だ。


しかし、龍人といえば先に許可を得ておくべきだったろうか。

店主と話は付けてしまったけど、龍人がダメだと言えばダメだろう。

服を作る事自体は良いとしても、滞在期間が延びる事をどう思うだろう。


それを聞くために一度帰る事にした。

仮にダメでも、店主に伝えるなら早い方が良い。


ベッドで彼とイチャついてたら邪魔をしてしまいそうだと思い、

できるだけ静かに、様子を見ながら家に入るつもりだった。

でも、煙突から煙が上がり始めたので普通に家に入る。



「ただいまです。…今帰るとお邪魔です?」

「今はもう大丈夫じゃ。

 流石にずっとベッドにいると夜寝れなくなりそうじゃからな~。

 リーフ達もお茶、飲むじゃ?」

「頂きます。それで、ちょっとお話が…」



龍人の淹れたお茶を飲みながら先程の服の話をした。

魔女さんとグラさんが雇われ、服を作りたい事と、

製造に伴う滞在期間の延長、それと家の家事の負担の増加だ。



「ほー。魔女はどうしても服を作りたいじゃ?」

「…いいだろうか?

 生活面でドーラにも主くんにも迷惑を掛けてしまうんだけど…」

「それくらい別によいのじゃ」

「本当かい?ちゃんとドーラの分の服も作るから楽しみにね」

「わしの分もあるのじゃ?」

「そうだよ。皆でお揃いのドレスにするんだ」

「お揃いならまぁ、着てもよいかな…?」



龍人はドレスにそこまで興味を示さなかったけど、理解はしてくれた。

明日から彼と私と龍人は物資を集めに里の外まで行くし、

魔女さんとグラさんは服を作りに雑貨屋に行く事になる。


想定よりかなり長い期間をこの里で過ごす事になりそうだ。


…。

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