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稼ぎ方

♢



久しぶりに彼と二人きりになれた。

それも龍人の縄張りや住処ではなく、故郷で、私が借りた家で。


自覚できるほど、いつもより浮ついた気分になっている。

式はまだだけど、夫婦になるのだから少しくらい何かあってもいい。

そんな考えがチラつく。



「ね、ねぇ主さん…。ちょっとだけ、いいですか…?」

「どうしたの?」

「こっち、こっちきてください」



彼の手を引いて、寝室に連れて行った。

龍人が心配してたように彼を襲う訳じゃない。

ほんの少しだけ、ベッドでじゃれ合いたい。

雰囲気だけでもいいから、生まれ故郷でイチャついてみたかった。


明るいうちから一緒にベッドで寝転がる。

彼に抱き着き、目一杯に匂いを吸い込む。

いつも龍人がして貰っているように、頭を撫でて欲しいと頼んでみる。



「少しだけ、一緒に休みたかったんです」

「リーフと二人になるのは久しぶりだね」

「…えへへ…ゆっくり甘えられるのはいいですね…。

 こういう時、ドーラさんには何をしてあげるんです?」

「尻尾を揉んであげると喜ぶよ」



残念ながら私には尻尾はない。

でも代わりに、長い耳がある。

森人にとって、此処に触れて良いのは恋人だけ。

これが彼の好みかわからないけど、触ってもらいたい。


少し悩んだけど、耳を触って欲しいとお願いした。

彼はとても優しく耳を触る。

耳を触られながらキスをすると、どうしようもなく愛おしくなる。

もうパンなんてどうでもいいから、

許される時間をこうして過ごしたくなった。



「帰ったのじゃ~」

「…ごめんなさい…」

「…急になんじゃ?」



帰ってきた龍人達に早々に頭を下げた。

本当にあのままベッドの上で過ごしてしまった。

気付いた時には夕暮れに近く、急いで出来あいのパンを買ってきた。



「ごめんドーラ。パン、作れなかったんだ」

「そうなのじゃ?何してたのじゃ?」

「リーフとベッドでゆっくりしてた」

「ずるいのじゃ!

 …明日は、わしとしてくれるじゃ?」

「うん。でも、ほんとにごめんね」

「まぁ、たまにはリーフにもそういう時間があってもよいのじゃ」



龍人は意外なほどあっさり許してくれた。

それから魔女さんがさっとスープを作り、

買ってきたパンと一緒に食べた。



「もう暗くなってしまったね。

 今日、水浴びはどうする?」

「グラに任せるのじゃ」

「…私が決めていいの…?…なら、水浴びしたいの…」



スープで身体が温まっている間に三人が水浴びに行った。

お湯を沸かしつつ、火の維持をする為に私が残ったけど、

なぜか龍人も一緒に残った。



「ドーラさんも行ってきていいですよ?」

「ん?ん~…。

 …まぁ、二人一緒じゃけど主との時間を作ってあげようとしたのじゃ」

「えっ!…魔女さんと、グラさんに?」

「明日はわしが過ごしたいから、今のうちじゃ」

「ドーラさんも大人になりましたね」

「仕方なくじゃ」



龍人と二人になるのも久しぶりだ。

せっかくだから彼と二人になると何をしてるのか。

それを今度は龍人に聞いてみた。


粗方、彼に聞いたのと一緒だった。

ただ、首を舐めて味わうとか、ちょっと表現が生々しい。

それを真似する勇気はまだちょっとでない。



「リーフはパンも作らずに何をしてたのじゃ?」

「私の生まれ故郷ですからね。

 部屋で落ち着きながら、ゆっくり過ごしてみたかったんです」

「なるほどじゃな~。

 まぁ、わしより先に子を作らなければよいのじゃ」



龍人と彼について話せるようになるなんて思わなかった。

その後、三人が戻るまで彼との過ごし方で話し合い、

交代で龍人と二人だけで水浴びに行った。


すると、水浴びを済ませたはずの魔女さんが付いてきた。



「ん?魔女、どうしたのじゃ?」

「いやなに。グラにお礼をする為にね」

「礼じゃ?」

「さっき、水浴びの時に主くんと二人にしてくれたんだよ。

 寒いのに一人離れてね。そのお礼」

「薪集めの最中、魔女がリーフを羨ましいと何度も言うからじゃ」

「ハハッ、そんなに言ってたかな?」

「言ってたのじゃ」



グラさんの為に少し長めに水浴びをして身体が冷えてしまった。

家に戻り、暖炉の火にあたりながら温かいお茶を飲む。

少し、いやかなり大樹のお風呂が恋しい。



「やっぱり昼間に水浴びしたいですね」

「でも里を出て何かを集めるとなると、どうしても遅くなるね」

「そうなんですよね~…」



結局、出来るだけ早く水浴びをするとしか言いようがない。

まぁ後数日もすれば色んな物を備蓄出来てるはず。

そうなれば明るいうちに水浴びもできる。

それまでの辛抱だ。


翌日、朝から龍人達を家に残して出掛ける事にした。

魔女さんとグラさんを連れ、里のあちこちを案内する。



「あっちで木を加工して家具を作ってて、向こうが生地を作ってます」

「生地か…」

「その近くに家具屋さんも服屋さんもありますよ」

「見たいね。ちょっと寄ってもいいかな?」

「いいですよ。行きましょうか」



まずは家具屋に寄った。

家具は一応売ってはいるけど、街に卸すのがほとんどだ。

だから店員はおらず、一応並べてあるだけ。

もし欲しいのであれば、加工してる人達に声を掛けなければいけない。



「…誰も居ないの…」

「そんな頻繁に売れないですからね

 次に行きましょ。服屋さんは店員さんがいるはずです」



次に服屋に向かった。

服屋では店員と数名のお客さんが居た。

それがたまたま知り合いだったので少し話していると、

魔女さんは店員と何やら話し込んでいた。



「熱心に何を話してたんです?」

「どういう生地があるのかとか、形を依頼できるのかとかね。

 もしできるなら、結婚式に着る服が欲しいんだ。

 人間は記念日に着飾るのが好きなんだ」

「…本に出てきた女の子も着てた服…?」

「そう、ドレスだね。グラも憧れるだろ?」

「…でも、お金ないから…」

「私もないよ。何処かで働かせてもらおうかな」



私が知る限り、この里で他種族が働いた事はない。

でも私達なら許可してくれそうな気がする。


問題はこの里で働いても効率が悪い事だ。

人手は不足してないし、皆も半分趣味や、

無いと困るから頼まれてお店を開いてる場所が多い。



「私がお金を出しましょうか?」

「そこまで甘えられないよ。

 でも、知恵を貸して欲しい」

「一緒に何か考えてしましょうか!

 とりあえず、他にも色々見てみましょう」

「ああ、そうだね。

 何か思い浮かべばいいんだけど」



里を歩きながら、此処で稼ぐ方法を皆で考えた。

この里で人気なのは服屋とパン屋。

それと私達がスプーンを買った雑貨屋もそこそこだ。

とりあえず、次は雑貨屋の店主に相談しに行ってもいいかもしれない。



…。

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