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初めての買い物

行商の里について二日目。

今日は食事をしたらまず里長に挨拶に行くらしい。

本来、森人以外は長期滞在なんて許されないそうだけど、

それを特別に許してくれたお礼を伝えに行くそうだ。



「うちの里、森人以外住んでないんですよ。

 稀に移住したいって人もいますけど、許可が出た事ないんです」

「なんでじゃ?」

「さぁ、聞いた事ないですけど…」

「そういう集落は多いよ。

 その人が悪いんじゃなくて、異分子が無い方が安定するからね」

「今回はなんで許されたんじゃ?」

「我々は移住じゃないからね。

 まぁどれくらい滞在するか、まだわからないけど」



食事を済ませてから全員で出掛ける。

里長は此処から少し歩いた場所にある家で一人暮らしをしてるそうだ。

この里で一番偉いのだから、さぞ立派な家なんだろうと思っていたのに、

着いて見るとそれはそれは小さな家だった。



「ちっちゃい家じゃなぁ…」

「ドーラ。一応言っておくけど失礼のないようにね」

「わかってるのじゃ」



魔女が行商に向かって頷くと、行商が扉を軽く叩いた。

返事はなかったけど、しばらくすると扉が開き、

中からこれまた小さなメスが現れた。


そのメスに向かい、行商と魔女が交互にお礼を口にする。

メスは何も言わなかった。

だが優しい顔で何度も頷いていた。



「----、---。」



メスは自分に向かって何かを言った。

聞き取れなかったが、自分に向かって手を出しだしている。

触れて良いものか迷ったが、行商が頷くので触れた。

すると嬉しそうにまた何かを言ったが、やはり理解できない。


「里長はこっちの言葉はわかるんですけど、話せないんです」

「なんて言ったのじゃ?」

「そのまま訳しますね。

 龍人様。よくおいでくださいました。

 ずっと感謝申し上げておりました。

 ああ、噂よりずっとお優しそうですね」



行商がその後もひたすら訳してくれた。

内容はほとんどが感謝だったが、身に覚えのないものばかりだ。

自分が居るだけで森が平和になっていると言われてもピンとこない。

でも悪い気はしない。



「好きなだけ滞在してください。

 そしていつでも、また遊びに来てくださいな」

「そうじゃ?助かるのじゃ」

「最後に、里の者の中には平和な時代を生きる者が多くいます。

 龍人様の恩恵を授かっていても、理解できてないのです。

 奇異な目を向けられることもあるでしょう。

 何卒、ご容赦くださいますよう、お願い申し上げます」

「それくらい気にしないから大丈夫じゃ」

「ありがとう。では…」



森人のメスは笑った後、手を離した。

そして家の中に入っていく途中、行商に何かを言った。

行商は照れながらも同じ森人の言葉で返していた。



「魔女。リーフになんて言ってるのじゃ?」

「ああ、いい男を捕まえたねって」

「ほー。見る目があるのじゃ」

「それと、子供はまだかってさ」

「…なんじゃって?」

「ハハッ。子供は里の未来で、宝だからね。

 変な意味じゃなくて、純粋に楽しみなんだろう」



こうして里長への挨拶が終わった。

後は結婚式の為の風を待つだけ。

しかし、その風がいつ吹くのかまだわからないそうだ。



「ヒカリゴケに全然その兆候が見られなくて…。

 下手するとすごく長くなっちゃうかもしれないです」

「どれくらいじゃ?」

「…摘んだ木の実がまた実るくらい?」

「そんなにじゃ?」

「一度、大樹に帰ります?」

「ん~…。…まぁでもせっかく来たからしばらく居たいのじゃ」



一度帰るにしても、すぐ帰らなくてもいいだろう。

せっかく里長に挨拶も済ませたし、後はのんびり過ごせる。

それにもうちょっと里を見てみたい。


この後は里をゆっくり見て歩く事にした。

お店は里の中心に多いらしく、とりあえずそこを目指す。



「主さん。これがお金なんです」

「これがあればドーラの鱗が買えるの?」

「ドーラさんの鱗は結構高いですよ?

 街で働くとだいたいのお給金が…」



歩きながら行商がオスにお金の説明をしていた。

土竜も興味深そうに見ていたので、

その辺に座り、行商がより詳しく教えていた。



「街によってはお金の種類が違うから気を付けてくださいね」

「そうなの?使えない時はどうするの?」

「手数料を払って交換して貰うんです。

 でも勿体ないので基本的には同じお金の街しか行かないですけどね」



実際に使ってみようと行商が提案した。

オスと自分と土竜がそれぞれお金を受け取り、お店の一つに向かう。

その店は雑貨屋らしく、広い店内に様々な物が置いてある。



「いらっしゃ…おや?リーフか」

「こんにちはフィーさん。お邪魔します」

「また何か売りつけに来た訳じゃないだろうね?」

「お父さんと一緒にしないでください!

 今日は皆とお買い物しに来ました」

「例の龍人様と旦那様、それにお嫁さん達ね」

「皆お金を使うの初めてなんですけど、ゆっくり見てもいいです?」

「この時間は暇だからゆっくりしていって。

 でも必ず何か買うんだよ?」

「はーい」



土竜には魔女が付き、自分達は行商に教わりながら店内を見て回る。

木の実や花の種に加えて、それらを育てる植木鉢や肥料も多数ある。

それに用途不明な道具もちらほら。


色々見た結果、お揃いのスプーンを買う事にした。

硬い木を削って加工した物らしく、丈夫で長持ちするそうだ。



「毎度。次はもっと買っていきな?

 リーフのお父さんに払った金額、すごいよ?」

「それはお父さんか、もしくはお母さんに言ってくださいよ」

「今遠くに行商中で居ないんだよ」

「みたいですね。何処に行ったか知ってます?」

「私は聞いてないから知らないね」

「そうですか…。それじゃまた」



店主に挨拶して店を後にする。

買い物は初めてしたけど、新鮮で面白かった。

機会があればもう一度あの店に行って、また何かを買ってみたい。


家に戻ってきた。

そろそろ自分達で集められる物は集めようという話になり、

薪を集める係とパンを作る係に別れる事にした。

だが、なぜか自分とオスが離れる事になる。



「…じゃあ、行ってくるのじゃ」

「気を付けてねドーラ」

「…主もリーフに襲われないように気を付けるのじゃ…」

「あはは、わかった」



家にオスと行商を残し、魔女と土竜と共に大走鳥に乗った。

本当は自分も残りたかった。

でもずっと頑張っていた行商の為に、二人きりにしてあげた。

まぁそれも魔女に言われて仕方なくだけど。

なるべく早く集めて、家に戻ろう。



…。

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