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諦めの眼差し

 グラがドラ達と一緒に寝た次の日から


皆で寝室で眠るようになった


主くんと眠るのは相変わらずドラと森人だが


同じ部屋で眠れるのは悪くない


「ほれグラ、先にわしらと上に行くのじゃ」


「…う、うん…」


二階で眠るようになったおかげで


再びお風呂上りに時間が貰えるようになった


まぁ、もうグラの前で隠す必要もないわけだが


最近少し様子がおかしい


「…ねぇ主くん

 主くんから見て、グラの様子はどう?」


「グラ?別にいつも通りだと思うけど…」


「そう?例えば少し…

 …ああもう、わかったよライア…」


もう少し詳しく話を聞きたかったが


少ない時間を無駄にするなとライアが喚く




 主くんとのひと時が終わり、


今日もグラと同じベッドに入る


「待たせたね」


「…おかえりなさいなの…

 …今日も、キスしてきたの…?」


「ああ、そうだよ

 興味があるのかい?」


「…物語で二人もしてたから…

 …どんな感じなのかなって…」


それを言葉にするのは難しい


それに、キスに興味を持つという事は


主くんに興味が沸いたという意味でいいだろう


「グラも主くんとしてみたい?」


「…私なんかと…きっとしたくないの…」


「それは聞いてみないとわからないね

 …聞いてみる?」


「…絶対、ダメなの…」


我々がキスを許すのはあと一人だけ


それを主くんがちゃんと理解してるなら


正直、拒まれないとは思うけど


断られる可能性も無くもない




 平和に日々が過ぎていく中で


グラもこの生活に馴染んできた


強引に手伝う事も少なくなり、


よく気が利く程度に落ち着いてきた


「グラ、今は幸せかい?」


「…うん…すごくね…幸せなの…」


「それが聞けて私も嬉しいよ」


不安そうな表情もすることも大分減った


今もこうして湖の木陰で本を読み、


穏やかな時間を過ごせている


「…。」


ただ、ふとした瞬間に


ボーっと主くんを眺める事が増えた


「グラも皆と遊んでおいで」


「…ううん…いいの…」


遠慮しているのとは少し違う


手に入らないものに焦がれるような


何かを諦めたような表情だった




 夕食前のひと時に


話があると皆に集まってもらった


「魔女、改まって話とはなんじゃ?」


「そろそろ、最後の一人を探そうと思う」


「…それは最後のキスの相手じゃ?」


ドラがそう口にすると


グラは俯いて悲しそうな顔をした


だが、それに構わず話を続ける


「身体が変わる兆しがあってからでは遅いからね

 候補の一人や二人くらい見つけておかないと」


「…そうじゃけど…」


ドラと森人の視線はグラに注がれている


なんとなく、最後はグラになるだろうと


想像していたんだろう




 探しに行こうという事はつまり


グラ以外にしようと言っているようなものだ


それを素直に受け入れるのかを見極めたかった


「グラはどう思う?」


「…私は…関係ないの…」


「本当にその答えでいいんだね?

 最初から諦めて、

 ただ遠くから、後から来た誰かに盗られた

 主くんをじっと見ているだけで、本当にいいんだね?」


「…。」


グラは俯いたまま、黙って首を振った


すぐに言葉にはできなかったが


意思は示してくれた




 グラは静かに泣いてしまった


それでも甘やかすわけにはいかない


全てを諦めてしまう前に


自ら希望に手を伸ばして欲しかった


「…。」


しばらく無言の時が流れる


少し酷だったかと反省し、


助け舟を出そうとしたその時、ドーラが手を上げた


「一言だけグラに言いたいんじゃけど」


「ああ、いいよ」


「グラが何を言っても

 主が一番好きなのはわしじゃ

 だから、何も変わらないのじゃ」


「…。

 …わかってるの…私は別に…」


「何も変わらないから

 グラは主に何を言ってもいいのじゃ」


「…。

 …何を、言ってもいいの…?」


「わしらに迷惑は掛からないから

 素直な気持ちを主に伝えるのじゃ」


「…。」


ドーラの言葉を聞いた後、


グラは何度も涙を拭って深呼吸を繰り返した


やがて、俯いたままの姿で


小さく口を開いた


…。

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