控えめ過ぎる友達
モグラは身体が大きいから威圧的で、
無言で近づいてきた時は
オスをどうする気かと警戒もしたが
ただ友達になりたいだけだった
「もう友達みたいなもんじゃったろ?」
「…でもね、魔女さんがね…
…そういうのはちゃんと言った方がいいって…」
魔女に視線を向けると
微笑みながら頷いている
オスの前ではメスなのに
こうして見ればモグラの母にしか見えない
どっちが本当の魔女なのか疑問だが
今はモグラと友達になってあげようと思った
握手をしようと手を出すと
モグラは困ってるようだった
「わしに触るのは怖いじゃ?」
「…ち、違うの…
…私の手、傷だらけだから…」
そういえばパンを作る時も思ったが
確かにモグラの手は傷だらけだ
最近できた傷は少なそうだけど
目立つ傷も多い
「…だから…気持ち悪いかなって…」
「わしは気にしないのじゃ
主も気にならないじゃろ?」
「もちろんだよ
ほら、手を貸して」
オスは自らモグラの手を取り
しっかりと握手をした
それを真似して
反対側の手と同じように握手すると
モグラはまた涙ぐんでしまった
続いて行商と、ついでに魔女とも
握手を済ませてモグラは皆と友達になった
「…皆と友達になれたの…
…人間さんとも…なれたの…」
「よかったね
でも、もう一つのお願いはどうしたんだ?」
「…あ、あれは…」
「呼んであげるから言ってごらん
主くん、ちょっといいかな」
呼ばれたオスが近づいていった
自分も行こうとすると
此方に魔女がやってきてそれを阻まれた
「何にも起こらないよ
主くんとの時間を賭けてもいい」
「…まぁ…そこまで言うなら…」
何かが起これば飛び出す準備をしつつ
二人を見守る事にした
モグラが顔を真っ赤にし、
モジモジしてるから告白するのかと思ったが
本当になんてことない内容だった
「…こ、今度ね…
…朝、一緒にお散歩して欲しいの…」
「フローラと一緒に行ってるやつだね」
「…ずっとね…夢見てたの…
…人間さんとね…並んで歩いてみたいの…」
「いいよ、なら明日行こうよ」
「…ほんと…?
…今、すごくね…嬉しいの…」
そこでまた感極まったモグラは泣き出して
すぐに魔女が慰めに向かった
「よく泣く奴じゃなぁ…」
「境遇を考えれば仕方ないですよ
…でも、いいんですか?
主さんとグラさん、二人にして…」
「またこっそり付いていけばよいじゃろ?
魔女より簡単そうじゃし…」
それもそうだと行商も納得し、
話はそれまでになった
翌朝、広間に降りる時は
自分と行商の間にだけ少し緊張感が漂ったが
それも魔女の一言で無くなった
「それじゃ、今日は主くんを借りるよ」
「…魔女も行くのじゃ?」
「うん?毎朝行っているだろ?
二人もたまには来るかい?」
行商と顔を見合わせ
それならばと付いていく事にした
「フローラ達はいつも何処に散歩に行くの?」
「だいたい丘の手前だね
この辺の植物をグラに教えながらね」
オスと魔女とモグラは三人で並んで歩く
そこから少し離れて自分達
後ろから見ていると話してるのはオスと魔女だけで
モグラはオスの隣で静かに歩いているだけだった
「…あれでグラさんは嬉しいんですかね?」
「でも横顔は嬉しそうじゃ」
後ろから見ていると丸わかりだが
モグラはチラチラとオスの様子を見ている
たまにオスが話を振る為に視線を向けると
慌てて目を逸らし、頷いて対応していた
森の途中で引き返し、大樹に戻ると
モグラは何度もオスと魔女にお礼を伝えていた
「…隣で歩けて嬉しかったの…
…ちょっとだけ…物語の二人みたいだったの…」
「朝の散歩は気持ちが良いんだね
また僕も付いて行っていい?」
「…もちろんいいの…」
「歓迎するよ主くん
さぁ、皆で食事の準備をしようか」
魔女の呼びかけに
オスとモグラが大樹の中に入っていくが
自分と行商は話し合うために残った
「本当に散歩だけじゃったな」
「グラさんは控えめですね
…なんていうか、応援したくなりません?」
「応援?なんのじゃ?」
「物語の二人みたいに、仲良くなれるように?」
「…主とグラも仲良くじゃ?
…ん~…まぁ、わしもグラは嫌いじゃないんじゃが…」
オスとキスをする最後の一人が
モグラになっても、そんなに悪くはないと思う
だが、あの気の弱さは少し不安だし、
もう少し様子をみたい気がした
…。




