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本の結末

 グラは一緒にパンを作った日から


表情がだいぶ柔らかくなった


遠慮してばかりなのは相変わらずだけど、


それでも、前よりは皆と打ち解けている


「…ご馳走様でした…」


「グラは足りたのじゃ?

 足りなかったら木の実でも食べるのじゃ」


「…ありがとうなの…

 …今日も美味しかったの…

 …洗い物、させてほしいの…」


洗い物もそうだけど、


グラは何でも手伝わせて欲しいと


積極的になってきた


気を使わなくていいと断ると


かえって悲しそうな顔をするのが


少しだけ悩みの種だ




 ハーブを集める手伝いとして


リーフにグラを連れ出してもらった


「グラはなんとかならんのじゃ?

 何から何までしなくてよいのじゃ」


「本人が手伝いたいと言うんだから

 好きにさせてあげればいいじゃないか」


「そうじゃけど…」


「きっと任せてもらえるのが嬉しいんだよ

 必要とされたいんだ」


「…そんなものじゃ?」


「そんなものだよ

 何かこう、グラにしかできない事があれば

 もっと安心してくれるんだろうけどね」


グラの為にしばらく三人で考えたけど


土竜族の事はフローラも詳しくなくて


残念ながらいい案はでなかった




 そうして日々が過ぎていく中、


ついにグラの本を読み終わってしまった


最後は生まれ故郷に戻った二人が


昔遊んだ思い出の場所で、


初めてのキスをして幕を閉じた


「最後は幸せになってよかったのじゃ」


「途中、もうダメかと思いましたね」


「男の子が頑張ったのじゃ

 …主、今すぐキスがしたいのじゃ」

 

「あ、ずるい!

 …次、私もいいですか?」


誰が決めたわけじゃないけど


今まではグラに見えない様にキスをしていた


でも、僕も物語にあてられて


考える前にドーラと抱き合っていた




 リーフともキスをした後、


意外な行動をとったのはフローラだった


グラの前どころか


ドーラ達の前でも甘えた姿を


ほとんど見せなかったのに


今は抱き着いて離れようとしない


「…主くん、撫でて」


「魔女、いい加減離れるのじゃ」


「…。」


「無視するでないのじゃ!」


フローラは普段と少し様子が違う


それに気づいたリーフとグラが


協力してドーラを宥めてくれた


「本を読んで貰ったわけですから

 少しの間だけ我慢しましょ?ね?」


「…お願いなの…」


「…むぅ…まぁ…

 …二人がそこまでいうなら…」


それからフローラが落ち着くまでの間、


本の感想を言い合う事で


リーフが上手く気を逸らしてくれていた




 僕から離れたフローラは


頭を押さえながら皆に謝った


「…すまないね

 久しく甘えてなかったから

 ライアが抑えられなくてね…」


「今のはライアじゃ?

 まったく仕方のない奴じゃ…」


「グラと過ごしたいのは私の方だからね

 ライアにはずいぶんと我慢させている」


普段、身体はフローラの自由にできるらしいけど


限界がくるとライアの意思も混ざるようだった


その話を不思議そうに聞いていたグラに


そういえば説明してなかったと


フローラが自分の過去の話を聞かせていた




 話の流れで僕の事にも触れた


フローラが僕を産んだ事に驚いていたけど


人間だとわかった後、


グラはひどく動揺していた


「…だ、だって…人間さんは…

 …昔に滅んだって、おばあちゃん…言ってたの…」


「私が元人間だからね

 ドライアドの力を借りて人として産んだ」


「…本の中の…男の子と、一緒なの…?」


「ああ、ほとんどそうだね」


「…信じられないの…

 …だって…何処にも居ないって…」


視線が定まらないほど


混乱している様子だった


フローラがリーフに目配せをすると


僕の手を引いて大樹に向かい始めた




 当然ドーラも付いてきてくれた


大樹の庭先で


これからどうしようかと話していると


すぐにフローラ達も帰って来た


「グラは落ち着いたのじゃ?」


「一応ね

 …ほら、主くんに言いたいことがあるんだろう?」


「…。」


グラはおずおずと僕に近づいてきた


無言で近づく様子に


ドーラが警戒しているのがわかった


「…主に何の用じゃ」


「…あの…あのね…

 …嫌ならね、全然いいの…

 …でも、よかったら…

 …友達にね…なって、欲しいの…」


「…友達じゃ?」


「…で、できればね…

 …ドーラさんと、リーフさんも…その…」


そこまで言うのが限界だったのか


グラは顔を真っ赤にして俯いてしまった


ドーラも肩の力が抜けたようで


笑いながらグラを撫でていた


…。

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