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土竜の使い道

話が良い感じにまとまったのはいいとして、

食事の後、可哀想な事にオスは二人から責められていた。



「やっぱり主さんはドーラさんばっかりなんですね」

「主くん。私達も君のお嫁さんなんだよ?」

「あはは、わかってるよ」

「いいや、わかってないね。

 一番にドーラを愛しても、同じくらい大切にして欲しい」



行商は普段通りだが、最近の魔女は感情的な気がする。

なんとなく子供っぽくなった。

これもオスとキスをした影響の一部なんだろうか。



「明日と明後日、お詫びを兼ねてデートして欲しい」

「…なんで二日なんじゃ?」

「リーフと私で一日ずつ交代だとそうなる」

「…ドーラ、いいかな?」



二日なんて絶対にヤダ。

でも、自分を優先したせいで怒られるオスも可哀想に思う。

少し考えたが、仕方なく許可を出す。



「…夜、いっぱい構ってくれるならよい…」

「もちろんだよ。

 今日も少しだけ、二人で星を見に丘に行こう?」

「えー!ずるーい!」

「リーフは二人きりで過ごせるじゃろ!」

「私だって夜二人で過ごしてみたいんです!」

「まぁまぁ。それは追々にしようよリーフ。

 明日と明後日、どっちがいいか決めていいよ」



魔女は子供っぽくなったと感じたけど、

行商と比べるとまだ魔女の方が聞き訳がいい。


それから、食事の後片付けを魔女達に任せて外に出た。

夜にこうして二人で出掛けるのは久しぶりだ。



「夜にこうして二人になるのは久しぶりじゃ」

「そうだね。懐かしい感じがする」

「もう夜の森、怖くないじゃ?」

「…実はまだちょっと怖い。

 手、離しちゃ嫌だよ?」

「もちろんじゃ」



変わらないオスに少し安心するのはなんでだろう。

ゆっくり歩きたいところだけど、

遅い時間だからあまり長い時間は掛けられない。


手を繋ぎ、少しだけ早足で丘を目指す。



「ドーラはさ、本当に大樹を離れるの、嫌じゃない?」

「正直、昔なら嫌じゃったと思うのじゃ。

 魔女が亡き後、教えられた生活を守る事だけが生きる意味じゃった。

 でも、今は主が居れば何処でもよいのじゃ」

「僕もドーラがいいなら、何処でもいい」



丘に着いた。

でもほとんど星も見ずに抱き合っていた。

夜の森は肌寒く、オスの体温がよくわかる。


此処でオスを見つけたのが全ての始まり。

何処に行ったとしても、また此処に帰ってこようと思った。


翌日は行商に、翌々日は魔女にオスを盗られた。

その次の日、二人は大走鳥に乗って旅立つ。



「それじゃ行ってきますね!」

「二人とも、気を付けてね」

「リーフの故郷だし、心配いらないよ」



オスは心底心配そうだった。

出発する最後の最後まで二人の手に触れている。

心配いらないと言う割に、二人とも満更でもなさそうだ。


二人を見送った後、オスはしばらく動かなかった。

最初こそ自分も行商が街に行く時は寂しかったが、

こう何度も見送ると慣れてくる。


でも、オスがそれに慣れる気配はない。



「街に行くより近いらしいから、心配いらないのじゃ」

「そうだね」

「寂しいじゃ?」

「…そうだね…」



オスが強く抱き着いてきた。

なんとなく、普段より寂しそうに見える。

行商だけじゃなく、魔女まで居なくなったからだ。

二人欠けた穴は、二人じゃないと埋められない。



「グラ、主を背中から抱き締めて欲しいのじゃ」

「…わ、私が…?」

「早くするのじゃ!」

「…う、うん…」



二人の旅立ちに不安そうだったのは土竜も一緒だ。

普段は魔女にべったりだから、当然かもしれない。

だが、オスのつがいとして、為すべきことを為してもらう。



「どうじゃ?グラもくっついたら寂しくないじゃ?」

「あはは、ちょっと元気が出てきた気がする」

「グラ、もっと強く抱き着くのじゃ」

「…わかったの…」



三人でしばらく抱き合っていた。

オスは自分の鱗をとても褒めてくれる。

でも、鱗は鱗だからきっと硬い。


全身が柔らかい土竜が、少しだけ羨ましい。

土竜は身体が大きいし、身体のあちこちも大きい。

いや、大きくなった。

最初は手足も細く、何処を見ても骨が浮き出て見えていた。


でも魔女が沢山ご飯を食べさせたらこうなった。

だから、こういう時に役に立つ。


その後、日中は薪を拾って過ごした。

オスと自分と土竜の、珍しい組み合わせ。

土竜は行商と違ってオスに話しかける事も無く、

ただ静かに後ろを付いてくる。



「グラはなぜ後ろにいるんじゃ?」

「…二人の邪魔かなって…」

「グラもつがいなんじゃから、遠慮は要らないのじゃ。

 空いてる時は隣に来るのじゃ」

「…うん…」



薪を持ち帰り、片付けた後は休憩だ。

行商が居ないから自分だけでお茶を淹れる。

やっぱり行商には敵わないけど、それなりに美味しい。

それを飲みながら、土竜に話を聞いた。



「グラは全然違う場所で暮らしてたんじゃろ?

 此処の生活はどうじゃ?」

「…皆優しくて、毎日すごく楽しいの…。

 …まだ夢なんじゃないかなって、時々思うくらい…」

「身体はもう全然平気じゃ?」

「…うん…おかげさまで…」

「なら、夜は湖に行くのじゃ」



土竜の体調がいいなら、星を見に湖に行きたい。

これはもちろんオスの為だ。

二人が居ない広いベッドより、気が紛れると思った。



「ほんと?湖は今日これから行くの?」

「そうじゃ。早めにお風呂に入って準備するのじゃ」

「久しぶりだね。楽しみだな」

「…私も、行っていいの…?」

「当然じゃろ?」

「すごく綺麗なんだよ。一緒に行こうよ」

「…う、うん…」



夜の湖に行くのが決まったから、明るいけどお風呂を済ませよう。

オスの着替えを用意してから歩き出そうとした時、

動こうとしない土竜に気が付いた。



「何してるのじゃ?グラも行くのじゃ」

「…湖…?」

「お風呂じゃ。リーフが居ないから一緒に入れるのじゃ」

「…えっ…?…えっ…?」

「仕方ないの~…」



戸惑っている土竜の代わりに土竜の着替えも用意した。

それから手を引いて、強引に風呂に連れて行く。



「…む、無理だよ…。…裸、見られちゃうの…」

「見られたらなんじゃ?」

「…恥ずかしいの…」

「わしはずっと裸じゃ。気にするでないのじゃ」

「…うぅ…せめて、せめてタオルが欲しいの…」



土竜はどうしても恥ずかしいと言うので、

仕方なくタオルを巻いての入浴を許した。


入浴中、土竜は一番端っこで何時にも増してずっと静かだ。

改めて見ると、やっぱり土竜は行商と違って色々大きい。

それを見てると自分も少し変な気になりそうだ。


今度、オスに内緒で触ってみようと思った。



…。

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