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四番目

ドーラさんは、いつでも好きな時にキスをしてる。

リーフさんはドーラさんに聞いてから、日に何度かキスをする。

魔女さんは寝る前の二人きりの時間に多分、一度だけ。


私も一度だけ、夕方や暗くなる前に魔女さんに言われてからしてる。



「そういえばさ」

「…何…?」

「グラは主くんの恋人とお嫁さん、どっちがいい?」

「…えっ…」



寝室で眠るようになってからも朝の散歩は続いていた。

皆より少しだけ早く起きて、掃除して、

皆が起きてきた後に散歩に出かける。

この時間が好きだった。



「…き、急に何を…」

「毎日キスをするんだよ?

 ただの友達という訳にもいかないじゃないか。

 まぁ、肩書だけで生活の何が変わると言う訳じゃないけど」



確かに主さんに言ったのは、私を選んでと言っただけ。

そういえば、明確に恋人だとか、お嫁さんになる約束はしてない。

主さんとキスをする、最後の相手になれただけ。


今まで、自分に恋人が出来るとも、

まして結婚するとも思ってなかった。

ただ毎日が苦しくて、誰にも助けを求められなくて。

ついこの間まで、あの洞穴の中で死んでいくんだと思ってた。


なのに今、私は主さんの伴侶になる選択肢を与えて貰ってる。



「…主さん、嫌がらないかな…?」

「聞いてごらんよ。お嫁さんにしてくれる?って」

「…でも…」

「因みに私はお嫁さんにしてくれるって言って貰った」

「…うぅ…」

「でもまずはドーラ達に許可を貰わないとか。

 帰ったらドーラとリーフに聞いてごらん?

 私もお嫁さんになっていい?って」

「…そんなの、言えないの…」



どっちがいいって聞かれたら、答えは決まってる。

でも、言えない。

今のままで充分幸せだから。

それを聞いて何かが変わっちゃうのが怖い。



「早く聞かないと聞きづらくなるよ」

「…だけど…」

「それに多分、許してくれるよ。

 ダメならキスだって許すはずない」

「…。」



勇気が出ないまま、大樹に帰った。

色々な事が頭の中でぐるぐる回って、落ち着かない。


朝食後、魔女さんは毎日少しだけ本を読んでくれる。

物語はもう終盤で、人間さんと土竜族の女の子は無事に結ばれるところだ。

私が一番、好きな場所。



「ついに結ばれたのじゃ!」

「よかったですね!

 本ってなかなか興味深いですね~」

「最後の告白、向かい合って手を取り合ってって、どんな感じじゃ?

 こうじゃ?」

「こうじゃないです?」



ドーラさん達は主さんを相手に物語の二人と同じ格好を模索してる。

私も昔、ずっと想像してた時があった。

いつか、私もあれをやってみたいと思ってた。


なんて、懐かしく感じているとドーラさんに声を掛けられた。



「グラ~。グラはどんな格好だと思うのじゃ?」

「…私…?」

「グラが一番詳しいじゃろ?

 ちょっとこっちにきてやって欲しいのじゃ」

「…え、えっと…わかったの…」



主さんと向かい合う。

私がずっと想像してたのはこんな感じ。

見つめ合って、胸の前で両手を絡め合う。

二人の距離が近くてドキドキする。



「おぉ!流石グラじゃ!

 わしもやりたいから代わって欲しいのじゃ」

「…ね、ねぇドーラさん…」

「なんじゃ?」

「…わ、私もね…主さんのお嫁さんに…」

「…待つのじゃ!」



良い雰囲だから言えるかと思ったけど、ドーラさんに止められた。

やっぱり私は、ダメなのかな…。



「それ、物語の二人みたいに森の中で言って欲しいのじゃ」

「…えっ…?」

「告白するところを見てみたいのじゃ」



それを聞いて、皆がドーラさんの意見に賛成した。

皆で森の中に移動してから、また主さんと見つめ合う。

さっきと同じように手を取ったけど、今度は口が動かない。



「グラ、主がよいと言ったらよいのじゃ。

 じゃが、自分でちゃんと言うのじゃ」

「こうして見てるとドキドキしますね」



皆にじっと見られてると言いづらい。

許してもらえたのは嬉しいけど、やっぱり恥ずかしい。

どうしよう。

期待を裏切っちゃったら、ダメになるかもしれない。


そう焦れば焦るほど、頭が真っ白になっていく。



「グラ」

「…な、なに…?」

「二人はこの後、何をしたんだっけ」

「…物語の…?

 …えっとね、二人は手を取り合ってからキスをするの…。

 …それから、女の子がね…」



キスの後、土竜の女の子が改めて告白する。

それを説明してる最中に主さんがキスをしてくれた。

今なら、言えるかもしれないと思った。



「…私…主さんが好きなの…」

「うん。僕もグラが好き」

「…私も…四番目のお嫁さんにして欲しいの…」

「いいよ。グラ」



繋いでいた手を離されたと思ったら、すぐ抱き締められた。

突然の抱擁にびっくりして声が出ない。

そのまま固まっていると、ドーラさん達が拍手しながら近づいてきた。



「おぉー。上手くいったのじゃ」

「いやー、物語と同じ種族なのがいいですね!

 主さん、次は私と…」

「わしからじゃ!」

「はいはい。私はドーラさんの後でいいですよ~」

「とにかくグラ、おめでとうじゃ」

「…あ、ありがとうなの…」



次はドーラさんがさっきの私と同じ格好をした。

それを見てると、ゆっくりと実感が沸いてくる。

私はさっき、主さんのお嫁さんにして貰ったんだ。

そう思うとつい顔がニヤけてしまう。



「グラさん、嬉しそうですね」

「…うん…でも、私なんかでいいのかなって思うの…」

「主さんが選んでくれたんですよ?

 あんまり自分を下げる事を言っちゃ、主さんに悪いです」

「…そっか…そうだよね…気を付けるの…」

「自信を持ってくださいね!

 お嫁さん同士、よろしくお願いします!」



リーフさんと握手をした。

それから交代でリーフさんが物語の真似をしに行った。

そして、最後に魔女さんも真似しに行ったのが少し意外だった。



「魔女もそういう事をするんじゃな?」

「私もしたっていいだろう?」

「それはそうじゃけど、ただ意外だったのじゃ」

「いつもは大人しく二人に譲っているだけだよ。

 でも皆がするなら私もいいじゃないか」



魔女さんはそう言って笑った。

いつも落ち着いてて、大人の女性に見えてた。

でも今日はなんだか、物語に出てくる普通の女の子みたいに見えたの。


…。

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