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モグラの処遇

 翌朝、僕達が広間に行くと


フローラ達も既に起きていた


布団は綺麗に畳まれて、


あの子は相変わらず


大きなタオルを頭から被っている


「おはようフローラ

 その子は大丈夫?」


「おはよう主くん

 …ほら、挨拶してごらん…」


「…、…。」


「いい子だね」


聞き取れないほどの小さな声


それでもフローラは頭を撫でて褒めていた




 ドーラとリーフも同様に挨拶をした


その度に小声で何かを呟き


その度にフローラは優しく褒めた


食事は昨日同様に床で取るようで、


フローラの指示で多めの量を作り、


二人分とはいかないまでも大盛りにして運んだ


「僕も此処で食べていい?」


「もう少しそっとしてあげようか

 ごめんね、主くん」


「ううん、大丈夫

 何かして欲しい事があったら言ってね」


食事を終えるとフローラを残し、


森に散策に出る事にした


あの子が沢山食べるから


木の実でも集めようという話になった




 久しぶりに日暮れまで木の実を採った


これだけあればしばらく持つだろう


これを炒ってもらい


またあの子に分けてあげよう


「魔女は彼奴をどうするつもりじゃろうな?」


「どうするんですかね?

 もしあれなら私が町に送ってもいいですけど」


「一族の元に帰れないんじゃ

 そうするしかないのじゃ?」


「…うーん…

 まぁ、それしかないんじゃないですかね…」


そんな話をしながら大樹に戻ると


神妙な顔をしたフローラが待っていた




 相談があると持ち掛けられた


あの子をしばらくの間、住まわせたいと


そういう内容だった


「もしダメなら、一緒に旅をするよ

 この子が暮らせそうな場所を見つけたいんだ」


「フローラ、何処かに行っちゃうの?

 僕は嫌だよ?」


「必ず戻ってくるから、

 それだけは約束できるよ、主くん

 …信じて、待ってて欲しい…」


「…でも…」


ドーラ達も複雑そうな表情だ


重たい空気に飲まれて誰もが口を閉ざした


そんな中、最初に口を開いたのは


意外にもあの子だった


「…いいの…私、一人で出て行くの…」


「いいや、ダメだ

 一人で追い出したりはできない」


「…死ぬつもりだったから平気なの…」


「ほっとけないよ

 大人しく言う事を聞いておくれ」


二人が言い争っている隙に


フローラを行かせないで欲しいと


ドーラ達に強くお願いした




 結果、雑用を手伝ってもらう事を条件に


しばらく一緒に暮らすことになった


「魔女さん、あまり言いたくないですけど

 主さんを悲しませないでくださいね?」


「わかってはいるんだけど、すまないね…」


「いいえ、わかってません!

 わかってたらあんなこと言いませんから!」


フローラはリーフに怒られていた


フローラも誰かに怒られることがあるんだなと


少し新鮮な気持ちになった


その間、僕とドーラで


モグラの子に話しかけてみる事にした


「しばらく此処で暮らすなら

 名前が知りたいのじゃ」


「…無くなったの…」


「無くなったじゃ?

 無くなる事なんてあるのじゃ?」


「…。」


その子は悲しそうな顔で俯くだけで、


それ以上何も答えてはくれなかった




 ドーラと一緒に困り果てていると


名前が無くなった理由を


フローラから教えてもらえた


どうやら名前の一部に故郷の名前が混じり、


追放されると名乗れなくなるようだ


「…はぁ…やっとリーフが解放してくれたよ…」


「まだまだ言いたい事はいっぱいありますよ?」


「わかってる、わかってるから…

 …主くん、リーフのご機嫌を取ってきてくれないか…」


「あはは、わかった」


リーフの手を取り、調理場に連れていく


そこで一緒にお茶を作りながら


僕の為に怒ってくれた事の


お礼を伝えようと思う




 その日、皆で初めて食卓を囲んだ


その子は僕達の顔色ばかりを窺って


全然食べようとしないけど


事前にフローラから気にしないようにと言われていた


「そうだ主くん

 この子の名前を考えてくれないか?」


「僕が付けていいの?」


「ああ、気に入るかはわからないけどね」


「…モグラ族の子だから…グラって呼んでいい?」


「…。

 …私、グラなの…」


「そのまま過ぎな気もするけど…

 まぁこの子がいいならそれでいこう」


「よろしくね、グラ」


皆がグラに挨拶をした


それからグラとは関係のない


他愛のない話をし始めると


グラもおずおずとだが食事をし始めてくれた


…。

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