気になる人
人間さんに会えるかもって、
正直に言えば、ほんの少しだけ期待してた。
でも途中から怖くなって、主さんでとっても安心した。
けど、、主さんと二人で話すのも初めてだから、
それはそれで、少し緊張する。
「大樹に着いてからフローラに言われたんだ。
グラを迎えに行ってくれないかって」
「…ありがとうなの…」
「グラは僕に会いたかったの?」
「…魔女さんにそう聞いたの…?」
魔女さんはなんて言ったんだろう。
主さんと二人きりになりたいと思われてたら、
ドーラさん達に怒られそう。
なんて答えた方がいいのかな。
そう悩んでいると、主さんが驚くことを言い出した。
「あ、先に言う事があったんだ。
僕は人間らしいんだ」
「…えっ…に、人間さん…なの…?」
「僕もよくわかってないけどね。
それも教えてあげてって頼まれたんだ。
座って話そうよ」
「…う、うん…」
二人で並んで木の根元に座った。
主さんは地面を触りながら、此処で倒れていたって言った。
「倒れてる僕をドーラが助けてくれたんだ。
それからずっと助けて貰ってる」
主さんは長い時間を掛けて、今までの事を教えてくれた。
ドーラさんとリーフさんと出会って助けられて、
魔女さんが現れて、自分の事をやっと知れたって言った。
聞いてる最中、私は驚き過ぎて何も言えなかった。
「だから、僕は人間みたいなんだ」
「…そ、そうなんだ…」
「あはは、僕でがっかりした?」
「…そっ!…そんなこと、ないの…」
ずっとずっと物語の人間さんに憧れてた。
現実は男の人で優しい人なんて居ないと思ってた。
でも主さんは優しくて、人間さんみたいって思ってた。
「…実は主さんの事、人間さんみたいに優しいなって思ってたの…」
「ほんと?ならよかった」
主さんは私に対しても優しく笑ってくれる。
本の冒頭のように、森で遊ぶ二人みたいだと少し思えた。
今、少しだけ夢が叶っている気分。
「そろそろ暗くなるから帰ろうか」
「…う、うん…」
「手、繋ごうよ」
「…えっ…。…ど、どうして…?」
「これもフローラに言われたんだけど、嫌かな?」
「…嫌…嫌じゃないの…」
差し出された手におずおずと触れる。
そしたらギュッと掴まれて、大樹に向かって歩き出した。
手も顔も熱くて仕方ない。
何を話していいかわからない。
でも、こうして森を歩くと本当に物語の二人みたい。
あっという間に大樹に着いた。
玄関では魔女さんが出迎えてくれていた。
「おかえり主くん、グラ。
本のお礼になったかな?」
「…驚いたの…魔女さんも、人間なの…?」
「私は半分だけ。さぁ食事にしよう」
もっと色々聞きたかったけど、食事が始まった。
私は魔女さんの隣に座って、主さんは二人の真ん中。
私が意識してるからか、二人は主さんが好きなんだって改めて感じた。
「そうだ。ねぇドーラさん?
今日から私もお風呂一緒に入っていいですか?」
「普通にダメじゃけど、なんでじゃ?」
「私だけ一人で使って待たせるのも嫌じゃないですか?」
「…あ~…それもそうじゃなぁ…。
…まぁリーフなら主も興奮せんか…」
「…怒りますよ?」
「冗談じゃ冗談。
でもそうなったら一緒に責任取ってもらうのじゃ」
「えっ?…い、いいですよ…」
今日からお風呂は三人で入るみたい。
お風呂は本当に気持ちが良い。
私が入るのが勿体ないくらい。
毎日身体を洗えるなんて、昔の私が聞いたら信じられないだろう。
「ついでに私達も今日から寝室で眠ろうか」
「…寝室…?」
「二階だよ。皆と一緒に並んで寝るんだ」
「…でも…」
「でもじゃない。もう決めた。
私も主くんの傍で眠りたいんだ」
「…わかったの…」
「いい子だね」
そう言えば魔女さんも主さんが好きなんだ。
きっと、今まで私に付き合って、我慢をいっぱいさせてきた。
交代でお風呂を済ませてから、皆でお茶を飲み、
最後に並んで歯を磨いて、これから初めて二階に行く。
「グラ。わしらは先に行くのじゃ」
「…魔女さんと、主さんは…?」
「最近は作れなかったけど、
今からちょっとだけ二人の時間なのじゃ」
ドーラさんに手を掴まれ、階段を上り始める。
後ろを振り返ると、少し照れた表情の魔女さんが手を振っている。
階段の途中でドーラさんが立ち止まり、三人で一階を見下ろすと、
魔女さんと主さんが抱き合ってるのを見てしまった。
なんだか、見てはいけないところを見てるみたい。
「…見てていいの…?」
「見てないとダメじゃ。
勝手に子供でも作られたらたまらないのじゃ」
「心配なら先に作ったらどうです?
もう主さんは何処にも行かないでしょ?」
「ん~…。主は子ができたらきっと溺愛するじゃろ?」
「しそうですね~。良い事じゃないですか?」
「わしが構って貰えなくなったらどうするのじゃ?
リーフと過ごす時間じゃって減るんじゃぞ?」
「…。…子供はまだやめましょう」
「じゃろ?」
子供を作るとか作らないとか、縁遠くて話に入れなかった。
皆、主さんの事ばかり考えている。
私も、今はちょっとだけ主さんが気になっている。
もっと、もっと人間さんと話してみたい。
でも、私が主さんと話す機会はあんまりない。
ある程度まで主さん達を眺めてから寝室に移動した。
暗い部屋の、窓際の大きなベッド。
今日から私も此処に並んで寝るそうだ。
「…大きなベッドなの…」
「グラも夜目が利くのじゃ?」
「…土竜は穴を掘るから、暗い場所も少し見えるみたい…」
「便利じゃな~」
ほんの少し待つと主さん達が帰ってきた。
魔女さんはドーラさん達にお礼を伝え、私の傍に来た。
そして、皆でベッドに横になる。
右からリーフさん、主さん、ドーラさんと並んで、
魔女さん、私の順番だった。
「こうすれば主と魔女と並んで眠れるのじゃ」
「今日も魔女さんに抱き着いて寝ていいですよ?
主さんの事は私に任せてください!」
「リーフはもっと離れるのじゃ。
風呂でもじろじろと主を見て…」
「何言ってるんですか!ちょっとしか見てません!」
ベッドでも二人は賑やかだった。
魔女さんはちょっと呆れてたけど、
私が一緒なのに、皆、普段通り楽しそうで安心したの。
…。




