取るに足らない違和感
次の日、ドラ達に経緯を話した
すると、意外にも理解を得られて
逆にこっちが驚いた
私のお風呂上りに合わせて
毎日時間をくれるというのだ
一緒に寝かせてあげられないことを
多少、後ろめたく思っていたのかもしれない
そのおかげで私もライアも
充実した毎日を過ごせることになった
そんなある日
森に違和感があるとライアが警告してきた
「なぁリーフ
今日、森に違和感を感じないか?」
「え?…うーん…
…私は特に感じないですけど…」
「私もなんだが、
ライアが言うにはあっちに何か居るらしい」
私も感じないから大した危険はないはずだ
他の森人が近づき過ぎただけかもしれない
なら、夜鳥を見かけて大慌てで帰るだろうと
とりあえずは様子を見る事にした
数日経っても違和感は消えないらしい
勘の鋭いドラに展望台で様子を見てもらったが
特に異変は感じられないそうだ
「主と半日一緒に見てたんじゃけど
何も動かなかったのじゃ」
「気のせいか?いや、心配だな
…明日、ピーちゃんを借りていいかな?」
「見に行く気じゃ?」
「はっきりさせておいた方がいい
危険な獣は居ないと思うけど、念の為だ」
「なら、わしも行くのじゃ」
「いいや、ドーラは主くんを守りなさい」
話し合いの結果、
森に詳しい私と森人が
違和感のある方を調べに行き、
ドラには家で主くんを守ってもらう事にした
…。
翌朝、出発前の二人をドーラと見送った
物々しい雰囲気に不安が募る
「やっぱり、行かなくてもいいんじゃない?
二人に何かあったら、僕は嫌だよ…」
「…ふふ、大丈夫ですよ
危ない事は絶対にしないですから…」
「約束だよ?必ず帰ってきてね」
二人が大走鳥に乗り、走り去った
誰かの背中を見送るのはひどく寂しい
「…二人とも賢いから、きっと大丈夫じゃ」
「…そうだね…」
「わしは主を守るのが役目じゃ
じゃから、中に入るのじゃ」
ドーラに手を引かれて大樹に戻った
こうして広間でじっと座っていると
フローラが現れた日を思い出す
あの日と違うのはドーラだ
なぜか今日はそこまで警戒しておらず、
普段とあまり変わりがないように見えた
「ドーラは落ち着いているね」
「主を奪いに来るわけじゃないから、
あまり心配はしてないのじゃ」
「でも、リーフとフローラが…」
「あの二人は危ない事はしないのじゃ
何かあれば、わしを呼びに来るはずじゃ」
「…ドーラが行くなら、僕も行く」
「それはダメじゃ!」
ドーラは僕に対して怒りを向けた
それは多分初めての事で、少しだけ驚いた
我に返ったドーラは
慌てて自分の爪を背中に隠す
「…っ!
…す、すまないのじゃ…つい…つい、その…
…怖がらないで、欲しいのじゃ…」
「おいで、ドーラ」
ドーラに向かって大きく腕を広げた
僕の様子を見ながら一歩、また一歩と
近づいてくるドーラを
ギュッと、思いきり抱き締めた
「驚いただけで怖がってないよ」
「…よかったのじゃ…」
しばらくの間は抱き合っていた
やがてドーラは落ち着いたのか
ゆっくり、僕から離れていく
調理場に歩いて行ったので追いかける
いくつかのハーブを用意しているので
お茶を作りたいんだとわかった
「手伝うよ」
「…ありがとうじゃ…」
「僕、危なくてもドーラと一緒に居たいんだ
…一人に、しないでよ…」
「…気持ちは嬉しいのじゃ…
…怒って、ごめんなさいじゃ…」
結局、一緒に来ていいとは
最後まで言ってくれなった
今はシュンとしてるから
これ以上食い下がれないけど、
でも、その時が来たら無理やりにでも
着いていこうと思う
お茶を飲み終わった後は
椅子に座ったドーラを
後ろから抱き締めながら過ごした
これで僕を置いて行けないはずだ
「ねぇ、ドーラは何があったなと思う?」
「魔女が言う、違和感じゃ?
…こんな事初めてじゃからなぁ…」
「…そっか…
…早く帰ってこないかな…」
「きっともうすぐじゃ
…くふふ…主は寂しがりやじゃな…」
そう言いながら僕の手を撫でたり、
背中やお尻を尻尾でくすぐってくる
こうしてじゃれていると
不安な気持ちは何処かに消えて、
想像していたより
静かに時間が過ぎていく
何かに気付いたドーラは辺りを見渡した
立ち上がろうとするので
腕にありったけの力を込めて
それを阻止しようとした
「動かないで」
「…主はしょうがないのじゃ」
半ば呆れたように大人しくしてくれた
そのまま二人でじっとしていると
すぐにリーフが帰って来た
「ただいま戻りました!
…ドーラさんと主さん、逆じゃないですか?」
「主が離してくれないのじゃ
それでどうじゃった?魔女はどこじゃ?」
「それが今、外でまたごね始めたから説得を…
…とにかく、一緒に来てくれますか?」
「説得じゃ?」
行けばわかるという事で
ドーラと一緒に外に向かう事にした
…。




