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お気に入りの香り

 オスと行商が二人で出掛けた


魔女が行かないなら自分が行きたかった


それについて文句を言うと


明日、朝から行けば


長い時間過ごせると言われて


それはそうかと納得した


「魔女は行かないのじゃ?」


「行きたいけどね

 でも、皆にも迷惑を掛けたから

 ゆっくり順番を待つさ」


「…キス以外、しちゃダメじゃからな??」


「わかってるよ

 ドーラはキス以上の事はしないのか?」


「…も、もうちょっとだけ…

 …心の準備が整ってからじゃ…」


「思ったよりも奥手なんだね

 まぁ、子供を作るなら

 主くんが環境に適した後の方がいいか」


オスが逃げる可能性が無くなったから


すぐ子を作っても良いのだけど


でも、もう少し時間が欲しい


今は何の心配もいらなくなった


平穏な時間を、ただ過ごしたかった




 願い通り平穏な日々


時々、誰かがオスと二人で出掛けたり


行商が買い出しに行ったりもしたけど


同じような毎日が続いていた


その中で気になるのは


魔女が昔はしていなかった事をするようになった


「花なんか干してどうするのじゃ?」


「新しくサシェを作ろうと思ってね」


「それはなんじゃ?」


魔女は自分の着替えをしまっている木箱から


小さい袋を取り出した


中身は乾燥したハーブや花で


かなり薄くなっているがいい匂いだった


「…この匂いはあれじゃ!

 オスと出掛ける時だけしてる

 いい匂いと同じじゃ!」


「えっ!どれですか!」


調理場に居た行商もすぐに反応した


竈の火をオスに任せて


急ぎ走って来たようだ


「どうして教えてくれなかったのじゃ!」


「ドーラは服を着ないじゃないか

 服や物に匂いを移らせる為に作るんだよ」


「なら私に教えてくれたらよかったのに!」


「おや、うっかりしてたよ」


絶対嘘だ


自分だけオスの気を引こうとしてる


そうに違いない


行商もそれがわかっているのか


なんとも言えない表情だ




 とにかく、魔女に作り方を教わった


なんとなくハーブティーを作るのと


よく似ている雰囲気がする


今日は魔女が持っていた残りで作ったが


本来は自分の好きな花やハーブで作るらしい


「いい匂いじゃ」


「抱き着いた時、ふんわりと

 香るくらいがいいんだ」


「そんなにちょっとじゃ?

 もうちょっと強い方が…」


「花の匂いしかしないと

 ドーラ本人の匂いが主くんに残らないよ」


確かにそれは大事だ


仮にオスが強い花の匂いを纏い、


オス自身の匂いがわからなくなるのは


自分としても極力避けたい




 なのでオスには使わないことに決めた


オスが嗅ぎたくなったら


誰かに抱き着けばいい話だから大丈夫だ


「わしは服を着ないからどうすればよい?」


「匂いの弱い物を作って

 首から下げてみるかね?」


「そうするのじゃ」


一人一つを作り終わった


首から下げ、オスに抱き着けば


いい匂いだと褒めてもらえた


「どうですか?

 まだ明るいから森に行って

 花とかハーブとか探しませんか?」


「賛成じゃ!

 次は自分で採った奴で作りたいのじゃ」


森に散策に行く時は


ちゃんと魔女も付いてくるようになった


でも、隙を見てはオスの隣に来て


見せつけるようにキスをする


ちょっともやもやするが、仕方がない




 ただ、これが行商にも悪影響だった


行商は最初の頃はこっちを優先して


遠慮してくれていたはずなのに


魔女が大胆だから、それに対抗しだした


まぁ、二番目としての意地があるとか、


そんなことを言ってたからこっちも仕方ない


気を取り直し、本来の目的に戻る


「匂いのする植物なら何でもよいのじゃ?」


「そうだね、自由に選んでいいよ

 まぁ、強いて言えば…

 当たり前だけど、ドーラの好きな匂いと、

 後は主くんが好きな匂いにしたらどうかな」


「なるほどじゃ!」


そうして各々が好きな花や葉を採取した


オスは自分で作らないから


皆のためにと、お茶になる葉を


教わりながら採取していた




 食事も終わり、平和に一日が終わる


そのはずだったに


魔女がこれがまたやっかいな事を言いだした


「私も主くんと寝てみたい」


「ダメじゃ!」


「なら一緒にお風呂でもいいよ」


「もっとダメじゃ!!」


「お風呂の方がダメなのかい?

 別に何もしないよ?」


行商を見ると黙って首を横に振る


という事はつまり嘘なのだ


「…何をするつもりじゃった…?」


「…まぁ身体は洗ってあげようと思ったかな?」


再び行商を見れば複雑な顔で頷いている


つまりこれは本当


でも魔女の思惑がわからない以上


許可はできない


「どちらもダメか…

 ならせめて、此処で二人きりにしてくれないか

 寝る前に、ほんの少しの間でいい」


「…まぁ、それくらいなら…」


眠る時は魔女はいつも一人きりだ


ベッドに四人は多すぎるし、


自分は絶対にオスと寝たい


行商もこの場所だけは譲らないと


多分、そう思っているはずだ


だからそれくらいなら、


目の届く範囲でなら、許してあげよう


…。

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