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かくれんぼ

ある日、いつものように薪を集めていると、

遠くの方を見ながらフローラがこんな事を言いだした。



「…あっちの方角から違和感を感じないか?」

「あっちです?あっちって険しい山がある方ですよね」



すかさずリーフが反応し、耳を澄ませた。

僕もドーラも気になってフローラが示した方角を見る。

けど森の中だし、なんの変化も感じない。



「うーん。特に何も感じないですね」

「そうか。なら気のせいだったかもしれないね」



フローラは勘違いだったと言い、その話題はそれっきりになった。

だけど、次の日も同じような事を言いだした。



「…やっぱり、誰か居る気がする」

「誰じゃ?もう主を奪いに来る奴は居ないのじゃ」

「ハハッ、ドーラの心配は主くんの事だけだね。

 まぁ、流れ者だとしても夜鳥に気付けば逃げ出すさ」

「そうですよね」



リーフも同じ意見だった。

僕には夜鳥を見て逃げ出す感覚がわからず、腑に落ちない。



「そんなに夜鳥って怖がられるの?」

「夜鳥が棲む森の近くには必ずドラゴンが棲んでいる。

 これはどの種族も必ず教わる事だからね」

「ドーラは怖くないのにね」

「主くんにはその感覚はわからないかもね。

 でも、もしドーラとは別のドラゴンに出会っても近づいちゃダメだよ?」



ドラゴンは縄張り意識が強く、邪魔者を容赦なく排除するそうだ。

その話を聞いて、リーフと出会った日を思い出す。

あの日のドーラは確かに過激で、ちょっとだけ理解できた。



「数日立っても居なくならないようなら偵察してきますね」

「危なくない?やめた方がいいよ」

「森の中で隠れた森人を見つけるなんて不可能ですから、心配いりませんよ」

「でも、フローラには見つかったんでしょ?」

「…そ、それは…。…流石にドライアドには勝てないっていうか…。

 とにかく!他の種族なら見つからない自信があります!

 なんなら、試してみます?」



という事で、森に隠れたリーフを探すことになった。

隠れる範囲はリーフが自分で決めたんだけど、かなり狭くて僕達に有利に思えた。



「こんなの、絶対見つけられるのじゃ」

「見つけられなかったらどうします?

 明日、半日くらい主さんとデートしてきていいですか?」

「もちろんじゃ。見つけたらわしが行くのじゃ」

「ドーラさんはいつでも行けるじゃないですか…?

 まぁ、それでいきましょう。

 魔女さんはヒント出しちゃダメですよ?」

「ああ、静かに見守っているよ」



リーフが隠れている間、僕達は後ろを向いて待った。

そんなに時間は掛からず、開始の声が森に響く。



「もういいですよー!」

「よし、すぐ見つけてやるのじゃ」

「なんだか楽しいね」

「うむ!」



ドーラと手を繋ぎ、あちらこちらと確認する。

僕もすぐ見つけられると思っていたのに、意外と見つからない。

時間が経つにつれ、少しずつ焦りが生まれる。



「居ないのじゃ…。もっとあっちじゃ?」

「あっちは範囲外かも?」

「…もう一度さっきの場所を探すのじゃ!」



来た道を戻り、もう一度リーフを探す。

でも結局見つからず、仕方なく諦める事にした。

降参だと告げた途端、一度は探した木の上から現れた。



「そこじゃ!?…上も見たはずなんじゃけど…」

「残念でした!明日、主さんとデートしてきていいですよね?」

「…約束は約束じゃからな…」



勝負に負けてしまったドーラは落ち込んでしまった。

薪集めの途中だったので、それを大樹に運ぶ。

それからドーラを元気づけたくて、僕からデートに誘った。



「僕達は今日デートしようよ」

「…今日じゃ?」

「薪集めはもう終わりでしょ?

 だから、今から二人で湖でも行こうよ」

「…行くのじゃ!」



誘うとドーラはすぐに元気になってくれた。

フローラの感じた違和感も気になるけど、

今はドーラを笑顔にする方が大事だ。


翌日、約束通りリーフと二人で出掛けた。

行先は同じ湖だけど、今日は大走鳥も連れてきた。

リーフと一緒に乗って、僕は後ろ側から抱き着いている。



「…えへへ…ずっと二人で乗りたかったんです!」

「そういえばリーフと一緒に乗った事なかったね」

「ドーラさんから主さんを離せないから我慢してたんですよ。

 ほんとはずっと、ドーラさんが羨ましかったんです。

 …時間かかりますけど、せっかくだから湖を一周してもいいです?」

「湖を?僕もずっと一周してみたかったんだ」



昔、目覚めて間も無い頃にドーラを誘った事があった。

でも歩いては厳しいと言われて断念したはずだ。

そうか、大走鳥ならそれができるんだとワクワクする。



「それじゃ、少し走るので掴まっててくださいね!

 行くよピーちゃん!」



リーフが合図を出すと大走鳥が元気に走り出した。

すると思っていたよりもずっと速く、

思わずリーフの背中にギュッと掴まる。



「怖いです?もうちょっとゆっくりにしましょうか?」

「ううん、楽しいからこのままがいい」



景色が瞬く間に変わっていく。

風をこんなに鋭く感じるのも初めてた。

ずっと楽しくて、あっという間に湖の反対側に着いた。



「ちょっとだけ降りて休憩しましょうか」

「こんな遠くまで来たの、初めてだ」



大走鳥を降りて、畔を歩く。

湖ばかり見てたけど、目線を上げるといつもより小さく大樹が見えた。

不意に、こんなに離れてしまったのかと寂しい気持ちになる。



「…やっぱり、ドーラさんと離れると寂しいです?」

「そうだね。ずっと一緒に居るから変な気持ち」

「こうすると、気が紛れますか?」



僕より小さい身体で、力強く抱き締めてくれた。

だけど、僕を見つめる瞳に不安が映っている。

私じゃダメなのかと、そんな風に訴えているように見えた。



「ドーラと離れるとやっぱり寂しい。

 でも、リーフが居てくれるから大丈夫だよ」



これは本心だ。

もし僕一人だったら心細くて、ずっと不安に駆られている。

でもリーフが隣に居てくれるから、落ち着いていられる。



「…えへへ…私、今、幸せです…」



リーフは満面の笑みを浮かべた後、静かに目を閉じる。

僕は引き寄せられように、そっと口を重ねた。



…。


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