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久々の感覚

落ち着きを取り戻してから主くんと一緒に一階に移動した。

そして最初にするべき事は森人に謝る事。

彼女の許しが得られなければ、やっぱり諦めるしかない。



「すまないリーフ。私は…」

「何も言わなくていいですよ。ドーラさんから聞きました」

「…だが…」

「謝る必要もありません。いいんです」

「…しかし…」

「いいんです!

 あ、でも私の方がお嫁さんとしては先輩ですからね?」

「そうだね、ちゃんとわかっている。

 …とにかく、ありがとう…」


お礼を言うと森人は笑ってくれた。

こうして、二人に意外なほどすんなりと受け入れて貰った。


確かに、お嫁さんになれたからと言って何かが変わるわけでもない。

一緒にお風呂に入るのはドーラだし、寝るのもドーラ。

森人は時々、二人のベッドにお邪魔しているようだけど、

そこの私の席は無い。


羨ましくは思うけど、代わって欲しいとは思わない。

ただ主くんのお嫁さんとして日々を過ごせるだけで幸せを感じられる。



「そうだ。食事の準備はこれからかな?

 今日から私も食べていいかい?」

「ん?魔女、お腹も空いたのじゃ?

 もちろんよいのじゃ」

「助かるよ。準備も私にさせてくれ」

「あ!ならついでに芋を崩さない方法を教えて欲しいのじゃ」

「ああ、いいよ」



ドラと一緒に調理場で準備を始める。

ある程度準備が進み、

今から一番大事な芋の処理をするという絶妙な頃合いで森人が主くんを連れてやってきた。



「私、主さんとお散歩してきますね!」

「なんじゃって!?」

「…ドーラさんも行きますか?」

「でも芋が…ちょうど準備も終わったし…。

 …仕方ないから二人で散歩に行ってきてよい…」

「やったっ!それじゃ行きましょ!」



二人の背中をドラと見送った。

僅かな隙も見逃さず、強かな子だと改めて思う。



「リーフは手強そうだね。それに頭が良い」

「そうなのじゃ…。

 いつか、主の一番を盗られるかもとたまに思うのじゃ…」

「ハハッ、ドーラでもそんな心配するんだね。

 主くんはドーラを一番愛してる。それはずっと変わらないよ」

「そう思うじゃ?」

「ああ、思うね。

 お嫁さんになりたいと伝えた時、最初に気にしたのはドーラの事だった」



それを聞いたドーラの機嫌は少しだけ良くなった。

その後、久々に料理の指導をしながら話していると、

ご機嫌な森人と主くんが帰ってきた。



「ただいま戻りました!」

「おかえり。そろそろスープが出来上がるから良い頃合いだね」



主くんが帰ってくるとドーラはくっつきに向かった。

まだスープが途中だったので、久しぶりに自分だけで最後の味付けを行う。

味見をすると美味しく感じるが、皆の口に合うか不安は多少が残る。

今回は自分の分を含めた四人分用意して、テーブルに運ぶ。



「今日は味付けも私がしたんだ。主くんの口に合えばいいのだけど」

「そうなの?きっと美味しいから大丈夫だよ」



私は食事に口を付けず、三人が口に運ぶのを待つ。

しばらく緊張とは無縁だったから気持ちが逸る。



「ん、美味しい!フローラのスープも美味しいよ」

「ほんと、美味しいですね!」

「そう?ならよかった」



主くんと森人は口を揃えて褒めてくれた。

いつの間にか膝の上で握っていた手をゆっくりと解放し、

皆にばれないようにゆっくりと息を吐く。



「…はぁ…、魔女にはまだ勝てないのじゃ…」

「でも途中まで一緒に作ったじゃないか。もう一歩だよ」

「…頑張るのじゃ…」



それぞれの感想を聞いた後、自分もスープを口に運ぶ。

キスをした日から少しずつ感じていたが、味覚も正常に戻った。

久々の皆と同じ食事は、とても美味しく感じられた。


そうして食事が終わった後、森人に頼んでお茶を淹れてもらった。

以前とはまるで違う味わいに衝撃を受ける。



「本当はこんなに美味しい物だったのか」

「お茶の味も違います?」

「全然違う。これは良い物だね」



匂いや清涼感はそれなりに感じられたから気に入っていた。

でも、味覚が戻った今はまるで別物だ。

目を閉じて何度も口に運び、味と香りを楽しんだ。


ドラ達がお風呂へ行っている間、森人とお茶について話を弾ませた。

しばらくして戻ってきたドラ達と森人が交代する。



「魔女も眠るようになったんじゃからお風呂もどうじゃ?」

「うん?ああ、入ってみようかな…?」

「久しく入ってないじゃろ?臭かったら主に嫌われるのじゃ」

「ハハッ。それは気を付けないといけないね。

 …ん?主くん。今日、私はどうだったかな?」



時折、汚れが目立った時は川で身体を拭いたりはしていた。

だがドラに指摘されるまで自身の匂いを気にしていなかったのは事実だ。

最初は笑い飛ばそうとしたけど、急に不安になる。



「ううん、良い匂いだったよ」

「…なら、安心かな?とりあえず今日から私も入るよ」



というわけで、さっそく森人が出た後にお風呂に向かう。

服を脱いだ後の無防備になる感覚や、

肌に触れる空気の冷たさも久しぶりだ。

その感覚を味わいながら桶でお湯を汲み、

身体を流してから湯船に浸かる。


幼い頃はそれなりにお風呂にも入った記憶がある。

だが旅をするようになってから水が貴重品に変わった。

飲める水にこうして浸かる事など考えられなかった。


気まぐれで大樹にお風呂を作る事にした自分を褒めたい。

しばらくお風呂の気持ちよさに身を委ね、何も考えない時間を楽しんだ。


長い時間お風呂を楽しんだ後、

広間に戻ると、皆揃って座って待っていた。



「おや?もしかして待っててくれたのか?」

「誰も居なかったら寂しいじゃろ?」

「気持ちは嬉しいよ。長湯して悪かったね」

「構わないのじゃ。

 しかし、主がそろそろ限界じゃから寝室に行くのじゃ」



私も一緒に歯を磨いた後、階段を上がる三人を見送る。

するとドーラが不思議そうな顔で此方を振り向いた。



「魔女は一人で起きてるのじゃ?」

「ベッドが足りないから椅子で寝ようかと思ってね」

「嫌じゃなければ私と一緒なんてどうです?」

「いいのかい?」

「もちろんですよ!

 私一人じゃ寂しいなって思う時もありますし、一緒に寝ましょうよ」

「ならリーフのベッドにお邪魔しようかな」



そう言われて断る理由もない。

好意に甘え、今日から森人と一緒に眠る事になった。


…。

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