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昔の名前と嫉妬心

 大人しかった二人は何処に行ったんだ


我が子が女の名前を言った途端に


ドラも森人の子も大騒ぎだ


「知らないメスじゃ!」


「いつの間に知り合ったんですか!

 何処の誰ですか!」


「そいつは今どこに居るのじゃ!

 八つ裂きにしてやるのじゃ!」


「この辺の人なら森人ですか!?

 私が居るじゃないですか!」 


我が子は肩を掴まれて


前に後ろに揺らされ続けている


あれでは口を開くことも叶わず


答えられないだろう




 本来、すぐに止める入るべきだった


でも私も動揺して


声を掛けるのが遅れてしまった


「…落ち着きなさい

 それじゃ話したくても話せないよ」


「落ち着けるわけないじゃろ!

 いつの間にか

 知らないメスが主を奪おうと!」


「まぁ、まずは揺らすのをやめなさい」


「あまつさえ主じゃってその気なんじゃから!

 今すぐ探し出して

 八つ裂きにしてやるのじゃ!」


あれでは埒が明かない


二人は我が子が言った女を見つけるまで


きっと止まらない




 我が子を助けるために立ち上がる


まずは自らの身体を使って


森人の前に割り込むように入り込み


強引に一歩下がらせた


「まずは落ち着きなさい」


「…はい…」


次にドラの手を掴む


一瞬揺らす手を止めたところで


目を見ながら冷静さを取り戻させた


「こら、もっと優しくしなさい

 流石に主くんが痛そうだ」


「…っ…」


怯んだその隙をつき、


我が子を守るように抱き抱える




 我が子はかなり疲弊しているようだ


遠慮なく、私の腕の中で身を委ねている

 

「…助かった…ありがとう…」


「可哀そうにね主くん…

 …少し、顔を見せてくれないか」


「…どうしたの?」


こうして近くで見ると綺麗な顔だ


まだ世の中の憂いを知らず、


人の悪意も知らない純粋な瞳がいい


その瞳に吸い込まれるように、


ゆっくりと顔を近づける


そして、私は我が子に、


主くんに口づけをした




 フローラは私の名前だ


生前と言っていいのかわからないが


純粋な人間だった頃にそう呼ばれていた


それを主くんに教えただろうか


名前の概念を教える時に


もしかしたら、一度くらい


名乗ったかもしれない


まさか、覚えているとは思わなかった


「…覚えていてくれたんだね…

 …ありがとう、主くん…」


「さっき思い出したんだ

 …フローラであってるんだよね?」


「…ああ、すごく嬉しかった…」


名前を覚えていてくれた君なら


主くんが私が良いと言うなら


私もそれを受け入れよう




 急にキスをしたものだから


ドラと森人の子はとても驚いていた


「…ま、魔女…な、な、なにを…」


「キスだよ

 お前達が言ったんだろう?

 私が一番都合が良いって」


「…だって、さっき断ったのじゃ…」


「主くんが私を選んでくれたからね

 とにかく、説明するから座りなさい」


私は主くんと並んで座った


仕方なく目の前に座った二人は


ジトっとした目で私を睨む


警戒しているような


半ば呆れているような、そんな目だ




 名前の経緯を説明し終えた


あまり納得はいってない感じだが


最終的には私の行いを受け入れてくれた


「…まぁ、魔女さんが理想的って…

 …そう言ったのは私ですけど…」


「だろう?」


「…でも、なんていうか…積極的に

 キスされるとなにか違うっていうか…」


「何が違うんだ?

 リーフの理想通りの結果なのに」


「…そうなんですけど…

 …まぁ…いいです…」


とりあえず一件落着だ


最後に主くんの匂いを確認してもらったが


残念ながら私が二種族分を補う事は


できなかったようだ





 出来る事なら、後一種族欲しい


それでも、半分近くは私と森人の匂いがするようだ


私とも相性が良くてよかった


「…際どいんじゃけど…

 多分、ぎりぎり半分いってない…と、思うのじゃ」


「そんなにぎりぎりなのかい?

 なら、今後ドーラがキスをしなければ

 半分よりいくんじゃないか?」


「…それで、魔女達だけがするのじゃ?」


「そうだね」


「絶対に嫌じゃ!!

 なら後一人適当に見つけた方がマシじゃ!」


「ハハッ、流石にそれは冗談だよ

 そんなに単純な話でもないし…

 …それでも、少し安心していいだろう」


半分に近い匂いを維持できるなら


極端にドラゴンになる事はないだろう


最悪でも鱗が数枚生えたり


爪が鋭くなったり


その程度の小さな変化で終わるはずだ


それを伝えると二人とも大いに喜んだ




 私を除いた三人はお風呂に向かった


普段、主くんとドラだけが一緒のようだが


今日から森人の子も入るようだ


ドラにはオスの近くで水浴びをしてはいけない


そう教えたはずだが


あれだけ本気で好きなら仕方ない




 何度も主くんとのキスを思い返す


不死に近い身体になり、


長く生きて様々な経験をしたが


キスをしたのは初めてだった


あんな感じでよかったのだろうか


最初は驚いていた主くんも


途中からはかなり積極的になった


何方かと言えば


向こうがキスに慣れている感じだった


きっと、ドラと沢山のキスを重ねたんだ


「…はぁ…

 …本当なら、主くんは私の…

 …ん?」


私の、なんだと言うのだ


私の物だったとでも言いたいのか


この感情は私か、ドライアドかはわからない


でも、ドラに嫉妬している


それに気が付いてしまった


つまり、私は、私達は


主くんに対して


初めての恋をしてしまったんだ


…。

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