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束の間の二人きり

 パン粉や塩が無くなりそうだ


行商も加わってから減りが早い


森には食べ物が沢山あるから


飢える事はないのだが、


流石に塩がないのは味気なさすぎる


自分一人なら我慢もできるけど


オスには美味しい物だけを食べて欲しい




 行商に買い物を頼むことにした


いつもしてくれていた事だから


二つ返事で行ってくれると思った


でも、今回に限って条件を出された


「少しの間だけでいいんですけど、

 …主さんと二人きりにしてくれませんか?」


「二人だけじゃ~?…うーん…」


「…ドーラさんが寝てる時とか

 たまにありましたけど…

 本当の意味で二人きりって、一度も無いんです…」


もちろん嫌だ


見えない場所にオスが行くなんてありえない


万が一逃げてしまったらどうするんだ


そんな考えが瞬時に浮かび、断ろうと決めた


意を決して口を開く直前、


行商の表情を見た途端に少し気持ちが揺らぐ


「…そんな顔…しなくてもよいじゃろ…」


「…だって、どうせダメなんでしょ…?

 …いいですよ、行ってきますから…」


こんなに拗ねてる行商を初めて見た


自暴自棄な雰囲気を感じ、


このまま送り出すのは気が引ける


オスも同感なのだろう


かなり不安そうな表情で此方を見ていた




 一応、聞くだけ希望を聞いてあげた


欲を言えば二人で森を歩きたかったそうだが


それは流石に許可できない


なので寝室か展望台でいいなら


安心できる室内でいいなら許可を出すと言った


「ほんとに、ほんとにいいんですね?」


「…ちょっとだけじゃぞ?」


「わかってますよ!

 あ、お茶入れてあげますね!」


「そんなのよいから早く行って早く戻るのじゃ!

 …もう一度言っておくのじゃが…

 キスはダメじゃぞ?抱き着くくらいじゃからな?」


それで十分だと言うように笑った


二階に上がる二人を途中まで眺めて


することもないので椅子に座り


今度はこっちが不貞腐れる


…。


 ドーラと少し離れる事はあった


でも見えない場所に行くのは


最初の頃と、トイレ以外では初めてだ


階段を上がるにつれて


どうにもドーラの様子が気になる


「なんだか寂しそうですね」


「…そう見える?

 確かに少し寂しいけど…

 リーフが元気になってくれるなら平気だよ」


「ほんの少しの間だけなので…

 ちょっとだけ、我儘に付き合ってくださいね」


寝室に着いた


いつも寝ているベッドに向かい


横になるように指示される


そして、ドーラが時々するように僕に乗り、


頭を撫でて欲しいと頼んできた




 数回撫でるとすぐに降りてしまった


あまりの短さに拍子抜けしたのは僕の方で、


その理由が知りたくて


戻ろうとするリーフを引き留めてしまった


「これだけでいいの?

 何か、気に障るような事しちゃったかな」


「ふふ、違いますよ

 …ドーラさんが心配でしょ?」


「そう、だけど…」


あれほど喜んでいたのに


この短い時間だけでいいのだろうか


それとも想像と違って幻滅したのか


言葉にできない僕の気持ちを


リーフはいとも簡単に察してくれた


「もしかして、短すぎて不安なんですか?

 …なんだか、いい反応してくれますね

 …なら私も、正直に言いますね…」


言い淀む僕を抱き締めてくれた


ドーラと全然違う力強さ、それに手の位置


それでも、心地よさは似ている気がした


「私も、貴方が欲しい

 主さんの事、一人の男性として好きなんです」


「…ありがとう…

 …でも、僕はもうドーラの物だから…その…」


「知ってます

 …それにドーラさんも私の気持ち、知ってるんです」


リーフの告白に驚いた


でもそれ以上にドーラが知ってる事と、


知っててなお、二人きりを許している


その事実にものすごく驚いた




 最近、ドーラの真似をよくするのは


好意があったからだと教えてくれた


諦めようとした事もあったけど


それを引き留めたのもドーラだったそうだ


「ドーラさんが許してくれた事しかしませんから…

 …私を避けないで、居てくれますか…」


「避けないよ

 …避けるわけないじゃないか…」


僕を欲しいという


リーフの気持ちには答えられない


何をしてあげられるのかわからない


でも避ける事も、嫌いになる事もない


そう言葉にして伝えると


リーフはとても長いため息を吐いた


「…はぁー…よかった…」


「そんなに心配だった?」


「当たり前ですよ!

 私、尻尾も角もないんですから

 …主さんの好みと全然違うかもしれないじゃないですか…」


心配事が減って気が楽になったとリーフが笑った


それから手を繋ぎ、


広間に戻る為の階段を少しゆっくり歩く


そしてその日のうちに


リーフは買い物をする為に大樹を後にした


…。

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