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久しぶりの料理

龍人と夜明けまで話し合いを続けた。

龍人の気が変わらないように気を付けながら、

今の約束を確実にする為の大切な話し合いだった。



「よいな?主がリーフでもいいって言ったらじゃからな?」

「わかってますよ」

「それと、主の記憶が戻るまで内緒じゃからな?」

「わかってます」



龍人と条件を細かく決めた。

私が彼と添い遂げる為にするべき事は、

記憶が戻った後に、二人の仲を取り持つことだ。


記憶が戻って、二人がまだ好き合っていたら問題ない。

そうじゃなかった場合、私が彼を説得する。

その辺が明確になって初めて、私は彼に告白できるという訳だ。


後は自分で言った通り、何をするにも龍人に許可を取る事くらい。

概ね想定通りだけど、他の心配事が浮かんでくる。

冷静に考えると私は彼の好みなんだろうか?


自分の身体については、あまり自信を持ってない。

そう、いくら私が好きだと言っても彼に好かれないと意味がない。

今のうちにどんな女性が好みなのか龍人に聞いてみようかな?



「ところで、主さんってどんな女性が好きなんです?」

「わしじゃ」

「よく褒められるところはあります?」

「尻尾と鱗じゃ」

「…艶が、素敵ですよね」



私が褒めると龍人は嬉しそうだった。

一応本音だが、私にはどちらも無いから参考にならない。

龍人の答えに先行きが不安になったけど、

彼のお嫁さんになれる可能性が出てきただけでも、きっと喜ぶべきだろう。


空が白んできた。

龍人も限界なようで、少しだけ眠るそうだ。

私は眠る気にならず、彼の体温を感じながら物思いに耽る。


例えば今すぐ告白したら、彼は受けてくれるかな?

もうちょっと女性としてアピールしておいた方がいいかな?

そんな事を検討してるうちに彼が目を覚まし、もぞもぞと動き出す。



「起きました?おはようございます主さん」

「…一緒に寝てたんだね…おはようリーフ…」



私が一緒の布団に居るのに驚いた様子はない。

彼は龍人に小さく声を掛け、起きているかを確認した。



「あの、ドーラさん起こすの待ってくれませんか?

 …多分、眠ったばかりなんです」

「そうなの?」

「…私も実は寝てなくて、…ちょっとだけ眠りますね…」

「二人で起きてたんだね。おやすみリーフ」

「…おやすみ、なさい…」



眠くはなかったけど、布団の中で彼と話すのがなんだか恥ずかしかった。

少しだけ彼に寄り添うようにして、寝たふりをする。

でも起きてる彼に寄り添えるこの状況は悪くない。


しばらくの間、彼が少し動くたびに"何かされるかも"と、

ちょっとだけ身構えてたけど、結局何もなかった。


そして龍人が起きた。

思ってたよりかなり早く、声もまだまだ眠そうだ。



「…おはようじゃ…すぐ食事を…」

「おはようドーラ。まだ寝てていいよ?」

「…大丈夫じゃ…」



龍人が起きるようなので、私も目を覚ましたふりをした。

でも龍人は一階に着いてすぐに椅子に座る。

そして頭を突っ伏して動かなくなった。



「ドーラ、部屋に戻ろうよ。お腹空いてないから」

「…んーん…」



寝不足に加えて色々考え続けたから疲れているんだろう。

動きたくても動けない。そんな感じ。

ただ、彼の服だけは思い切り掴んで離す気配がない。

その執着は素直にすごいと思う。



「…座ったままですけど、寝かせてあげましょうか。

 ドーラさん?調理場とか食材とか色々借りますよ?」

「…うむ…」



龍人に許可を貰い、一人調理場に移動する。

この部屋なら何処に何があるかわかる。

念の為に用意して、一度も使われなかった火打石。

まさか私が使う事になるとは予想してなかった。


自分で火を付けるのは久しぶり。

少してこずったが、なんとか着火できた。

まずはお湯だけを沸かし、お茶を二杯入れる。


「お茶淹れましたよ」

「…。…良い、匂いがするのじゃ…」

「濃い目に作ったのできっと目が覚めますよ。

 私、まだ火が付いたままなので戻りますね」



調理場に戻って後ろを振り返る。

龍人はまだ突っ伏したままで、彼は一人でお茶を飲んでいる。

さて、次は朝食を作ろうかな。


一応私だって料理はできる。

行商中は食べられれば何でもいいかと、保存食ばかりだけど、

行商を始めた頃は手間暇かけた料理にも挑戦していた。

懐かしさすら感じながら、スープの準備を始める。


最後に龍人達の真似をしてパンも焼き直した。

それらを持ってテーブルに行くと龍人はまだ突っ伏していた。

でも一度は起きたのか、コップの中は空っぽだ。



「起きてます?一応、食事を作ってみたんですけど…」

「…助かるのじゃ…。

 …主を腹ペコにしてはおけないから…流石、リーフも主のつがいに…」

「わー!!」



つがいという言葉を大声を出して誤魔化した。

その声で龍人も気付いたようで、ハッと起き上がる。



「リーフ?どうしたの?」

「どどど、どうもしませんよ!

 冷めないうちに食べましょう!ほら、ドーラさんも!」

「そ、そうじゃな!いただきますじゃ!」」



彼は突然叫んだ私と急に元気になった龍人を不思議そうに交互に見た。

けど何も言わず、食事を始めてくれた。

今のはびっくりした…。



「リーフも朝まで起きてたんでしょ?元気だね」

「私はその気になれば三日くらい起きていられますからね」

「それはすごいね。僕はすぐ眠くなっちゃって…」

「それが普通ですよ。

 でも、私も無茶しちゃうと後で丸一日くらい眠り続けます」



私に興味を持ってくれて、なんだか嬉しくなった。

昨日までそんな事なかったのに、私が彼を意識しているからかな。

龍人は食事をしながらも再び眠くなっているようで普段よりも静かだし、

必然、私と彼の二人だけの会話ばかりになる。



「そういえばリーフも火が吹けるの?」

「え?ふふ、そんなわけないじゃないですか」

「だって、これ温かいよ?」

「火を付けられる道具があるんですよ。

 使った形跡はなかったですけどね」

「へぇー。そんなのあるんだね」

「竈があったから一応用意はしておいたんです。

 それより主さん。…スープ、お口に合わなかったです…?」



会話に夢中だったが、ふと彼のスープに視線を落とすとあまり減ってない。

失敗してたかな?

自分で食べる分には、そこまで変だとは思わない。

でも久しぶりだから、自信はそこまでない。



「リーフのスープも美味しいよ」

「その割に減ってないように見えますけど…。

 正直に言ってもらって、いいですよ」



私がそう言うと彼はお腹をさすった。

やっぱり美味しくなかったのかな?

きっと種族が違うから、味覚が少し違うだけ。

すぐ彼の舌に合わせられる。気にしなくて大丈夫。


そうやって、何を言われても傷つかないように身構える。



「リーフはこの後に帰っちゃうんだよね?

 そう思うと、なんだか食欲が出なくって…」



そうか、彼は私と離れるのが寂しかったんだ。

それを理解した瞬間、思わず顔がニヤけてしまう。



「…ふふ、そういえば言ってなかったですね?

 ドーラさんに説得されたので、しばらく此処で一緒に暮らします!」

「えっ、ほんとに?それはすごく嬉しいよ!

 でも、最初に言ってくれてもよかったのに」

「ごめんなさい、うっかりしてました」



その後、食欲を取り戻した彼はスープをぺろりと平らげた。

彼の反応と答えは嬉しかった。

でもそれ以上に料理を完食してくれた事に喜びを強く感じる。

龍人がどれだけ眠くても食事を作ろうとした気持ちが、よくわかった。



…。

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