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リーフの料理

リーフが帰ってしまう日なのだけど


広間に降りてもドーラは眠そうだった


いつもなら顔を洗い、歯を磨くのに


今日はテーブルに突っ伏して動かない


「…ドーラ、大丈夫なの?」


「…今、食事の準備をするから…」


「僕は平気だよ

 眠いなら二階に眠りに行こうよ」


「…ん-ん…」


二度寝の誘いは断られたけど


やっぱり眠くて動けないようだ


こんなことは初めてで


体調が悪いのかと心配で仕方ない




 心配でオロオロしていると


顔を洗って戻ってきたリーフが


眠そうな理由を教えてくれた


どうやら二人して朝まで話していたみたいだ


「明るくなるまで話しちゃって…

 だから、ほとんど寝てないんですよ」


「そうなの?

 リーフは平気そうだけど…」


「私は慣れてますからね」


リーフは夜通し歩くこともあるらしく


その気になれば二日や三日は


起きて行動ができると言った


「その後、丸一日は寝ちゃいますけどね」


「行商っていうのは大変なんだね」


「色々苦労もあるし、楽しい事もありますよ

 …竈、借りてもいいですか?」


「きっと大丈夫だと思うよ

 …ドーラ、いいよね?」


一応ドーラに確認したけど返事がなかった


いつの間にか完全に眠ってしまったようだ




 竈で聞きなれない音がした


ちょっと見てみたいけど


ドーラの傍にも居たいし


そもそもドーラが服を掴んでいる為に動けない


しばらくそのままで過ごしていると


リーフがコップを二つ持ってきてくれた


「ハーブティーを淹れてきました」


「いい香りだね」


「目が覚めてすっきりしますよ

 ドーラさんの分もあるんですけど…」


リーフが声を掛けたけど


起きる様子はまったくなかった


肩をすくめているリーフに


気になる事を聞いてみた


「ねぇ、リーフも口から火が吹けるの?」


「ふふ、そんな訳ないじゃないですか

 なんでです?」


「だってこれが温かいから」


「手間はかかりますけど…

 火を付けられる道具を持ってるだけですよ」


さっきの音の正体は火付けらしい


その火が残っているからと


リーフは調理場に戻っていった




 しばらくすると匂いに釣られたのか


ドーラがモゾモゾと動き出す


「…良い香りじゃ…」


「リーフがハーブティーを淹れてくれたんだ

 飲める?」


「…ん…」


ドーラは一口飲み、身体を伸ばした


けど、まだまだ眠そうだ


「…お腹減ったじゃろ…?

 …ちょっと、待つのじゃ…」


「あ、食事もうすぐできますからー!」


「…リーフが作ってくれてるのじゃ…?

 …助かるのじゃ…」


動かなくてよくなったと嬉しそうだった


ハーブティーを飲むと少し目が覚めたらしく


元気も出たようだ


それから間もなく、食事が運ばれてきた




 リーフが用意したのはスープだけ


でも具材が盛りだくさんで


食べ応えがありそうだった


「すみませんドーラさん

 勝手に薪と食材を少し使っちゃいました」


「全然よいのじゃ

 …美味しそうじゃな?」


「携帯食用の硬いパンがスープに入ってるんです」


「パンじゃ?これがパン…」


確かにパンと言われればパンに見えてくる


浸して食べた事はあるけど


具材として入ってるのは初めてだ


リーフは硬いと言っていたけど


スープをたっぷり吸ってかなり柔らかい


「主さん、私のスープはどうですか?」


「とっても美味しいよ

 これ、結構好きかも」


「ほんとですか!

 …えへへ…褒められると嬉しいですね」


ドーラもこのスープを気に入ったようだ


パンを硬く焼けば似たような物が作れるらしく


いくつか質問していた




 半分ほど食べ終わった


このスープは確かに美味しい


でも、この後リーフは帰ってしまう


それが寂しくて思うように喉を通っていかない


「…お口に合いませんでしたか?

 …やっぱり、ドーラさんが作らないと駄目です…?」


「いや、ちゃんと美味しいよ

 …美味しいんだけど…」


「…だけど、なんです?

 はっきり言ってもらって大丈夫ですよ」


「…リーフはこの後、帰っちゃうんでしょ?

 なんだか寂しくて上手く呑み込めないんだ」


そんな僕の言葉を聞いて


不安そうだったリーフの表情が一変し、


出会ってから一番いい笑顔を見せた


「…そういえば、言ってなかったです

 私、しばらく此処に住むことになったんです」


「ほんと?」


「ほんとです!

 …お世話になりますね?」


ドーラに目線を向ける


当然知っているようで、肯定するように頷いた


僕はリーフとお別れしない事実に安心し、


残りのスープを一瞬で平らげてしまった


…。


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