ちょっとした興味本位
朝の日課が増えた
僕達の食事が終わると大走鳥に餌をあげるべく
ドーラは木の実を沢山持って外に出る
今日はドーラ一人でも木の実を食べてくれるか
それを確認するために
リーフと一緒に玄関から眺める事にした
「あ、食べてます!
ピーちゃんとかなり仲良くなりましたね
そろそろ乗る練習しても大丈夫そうですよ」
「ほんと?きっとドーラも喜ぶね
…因みに僕はダメかな?」
「主さんは最初から平気ですよ
ドーラさんはドラゴンだから仕方ないですけど…」
「でも懐いてくれてよかった」
「ふふん
ピーちゃんは賢いんです!」
ピーちゃんとは大走鳥の名前だ
戻ってきたドーラに
そろそろ大走鳥に乗れそうだと伝えると
とてもはしゃいで喜んだ
早速今日から練習したいと言い出した
場所は傾斜のある丘ではなく湖だ
座った状態の大走鳥にまたがり、
ドーラと共に注意事項を習う
「いいですね?
慣れるまでは決して手を離さない様に」
「わかったのじゃ」
とにかく両手を離さない事
それによそ見をしない事
これだけ気を付ければまず落ちないらしい
「あ、それと首を持つと苦しいから気を付けるように」
ドーラは真剣な顔で聞き、何度も頷いている
教わる時はああいう感じなんだなと
いつもと違う姿を見れて新鮮だった
荷物がなければ二人くらい余裕で乗れるようだ
僕は後ろ側でドーラの背中に抱き着いた
「いいですね?いきますよ!」
「…おぉ!立ったのじゃ!すごいのじゃ!」
リーフの合図で大走鳥が立ち上がった
最初だけ多少揺れたけど
動かなければ意外にも安定している
「どうですか?大丈夫そうです?」
「平気じゃ
いつもより目線が高くて面白いのじゃ」
「なら少し歩いてみますね」
手綱を持ったリーフがゆっくりと歩き出す
すると動きに合わせて大走鳥も歩き出す
言葉が通じているのかと思うほど
息がぴったり合うのが不思議だった
しばらく乗っていると
お尻と太ももに違和感を感じた
リーフに伝えると今日の練習は終了らしい
地面に降りるとまだ身体が揺れている感覚が残っている
「まだ揺れてる気がするのじゃ」
「ドーラも?僕もだよ」
「主もじゃ?
ならちょっと休んで行くのじゃ」
湖で休憩をすることにした
木陰に移動して三人で話していると
はしゃいで疲れたのか
ドーラが一足先に眠ってしまった
…。
静かだなと思ったら
龍人が眠ってしまった
彼に寄り掛かるようにして目を閉じている
彼と二人でゆっくり話す機会が訪れた
「私、二人の邪魔をしてませんか?」
「してないけど、どうして?」
「…私なら、私がドーラさんならそう思うかなって」
好きな人と暮らし始めたばかりなら
誰かが居座ったら邪魔に思わないだろうか
私なら多分、少なからず思うはずだ
仮に数日なら構わないかもしれない
でも、今はもう何日経ったかすら曖昧だった
私の話を聞いて少し考えている様子だった
答え次第では今日にでも帰らなければいけない
仮に気を使って嘘をついてくれても
私は嘘がわかるから、理由を付けて帰ろう
「僕はリーフが居てくれた方が楽しいよ」
「…本当です?」
「色々教えてくれるし、ドーラも喜んでるし…
それに、お茶がとっても美味しい」
「…えへへ…なら…
…もうちょっとだけ、お世話になりますね…」
悪意の欠片も感じられなかった
純粋で、とっても素直な人
こんな人はきっと他に居ないだろう
彼も少し雑談をした後に寝てしまった
二人の眠る姿に私も珍しく眠くなる
普段なら外で無防備に寝るなんてありえない
まして、素性の知れない男性の傍でなんて
普通ならありえないのだろう
でも、彼から下心を感じた事はないし
それに彼に寄り添って眠る龍人は
とても穏やかな姿で、それが羨ましい
ごくりと唾をのむ
ちょっとした興味本位だ
龍人の真似をして
彼の肩を少しだけ勝手に借りた
…。




