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大走鳥

こういうのは早いに越したことはない


すぐ遊びに行くと伝えたら、可能な限り早い方が印象が良い


行商終わりは故郷で二日や三日はゆっくり休みたいけど、


せっかく友達になったのだからと足を急がせた


けど、流石に早すぎたかな?


しかも早朝だし、色々とタイミングを間違えたかもしれない


でも、もう訪ねる時の合図もしてしまった


とりあえず顔を出して、迷惑そうならすぐ帰ろう


近くを通ったから寄っただけと言えば簡単に誤魔化せる


そうして、少し身構えながら玄関の扉を叩くと


龍人達は笑顔で出迎えてくれた


「よく来たのじゃ!

 今から朝食を作るんじゃが、リーフもどうじゃ?」


「え?いいんですか?」


「よいのじゃ!

 さぁ、座って休んでおくとよいのじゃ」


「それじゃ、お邪魔しますね」


席に座ると龍人がすぐ水を持ってきてくれた


前回出会った時と対応が違い過ぎて、落ち着かないくらいだ


「因みに、今日はどっちから来たのじゃ?

 丘の方じゃ?湖の方じゃ?」


「今日は故郷から来たので丘ですね」


「ほれ!やっぱりあっちから来たじゃろ!」


「あはは、ドーラは耳がいいね」


そう言いながら調理場に戻り、彼に寄り添っていく


どうやら、私がどっちから現れたか賭けをしていたようだ


それについては何も思わないけど


数日会わないうちに、二人の距離が近くなっている気がする


何か、進展があったのかな?


後で詳しく聞いてみようかな?


そういう話はあまりしたことがないけど、興味はかなりある


なんだか楽しくなってきた


わくわくしながら、二人の後ろ姿を目で追った




 前回同様、温かいスープにパンを貰った


素直に嬉しいんだけど、この料理に使われてるパン粉とか塩とか芋とか、


元は私が運んだ物で、当然、既に対価の鱗は貰っている


それをタダで貰うのは少しばかり気が引ける


「後でお金払いますね」


「なんのじゃ?」


「この食事代ですよ

 鱗も貰ってるし、何度も食べ物まで貰えないですから」


前回のは向こうの気遣いというか、お詫びのようなものだと思って


好意に甘えてしまったわけだけど、


対等の立場なら、なおさらちゃんとしたい


「お金は要らないのじゃ

 持ってないし、使う場所もないのじゃ」


「…そうですか?じゃあ、どうしようかな…」


「遊びに来てくれて嬉しいから、何も要らないのじゃ」


「そういう訳にはいきません!

 何か、せめてお手伝いする事とかないですか?」


「ん~、じゃあ、何か考えとくのじゃ」


「遠慮なく、なんでも言ってくださいね!」


まぁ、もし何もなければ次回の物資を多めに持ってくればいいか


それに気づいてからは食事に集中することも出来て、話も良く弾んだ


意外にも、龍人も結構な話好きだ


お互いに何をして毎日を過ごしているとか、


そんな日常の話をしているだけなのにかなり楽しい


「リーフの話は新鮮で面白いのじゃ

 今日は泊っていくとよいのじゃ」


「ほんとにいいんですか?」


「良いのじゃ!

 …それとも、まだ行商が忙しいじゃ?」


話が止まらず、どうしようかと思っていたから嬉しい提案だ


行商も休むつもりだったから予定も決めてないし、ちょうどいい


「…じゃあ、お言葉に甘えて、一泊だけ…」


「本当じゃ!?

一泊だけじゃなく、ずっと居てよいのじゃ!」


龍人は目に見えて上機嫌だった


私も何日居ても大丈夫なんだけど、流石にずっとは建前だろう


とりあえずそれは流しつつ、食事の後に二人を外に誘った


「私の相棒を紹介します!」


森の奥に向かって指笛を吹いた


すると、茂みの中から大きな鳥の仲間が現れる


私達森人はそれを大走鳥ダイソウチョウと呼ぶ


「な、なんじゃ!?こんなのが森におったのじゃ?」


「これに乗って移動してるんです!

 私と荷物を乗せても、結構早いんですよ?」


「…大きい鳥じゃなぁ…」


「この子を買うまで大変だったんですよ!

 いや~、苦労したけど、頑張った甲斐がありましたね~」


「主!こっち見たのじゃ!」


私の説明を聞いているか不安になるほど、二人は夢中だった


それはそれで嬉しい反応ではある


まだ龍人を恐れていた頃は見つからないように隠しておいたけど、


もう隠す理由もなくなった


「いきなりは無理ですけど、仲良くなったら乗れますよ」


「本当じゃ!?」


「木の実が好きなので、食べさせてあげてくださいね」


大走鳥は賢く、基本的には自生している木の実を勝手には食べない


それに人の手から食べるのを好む


龍人達に食べさせ方の説明すると、大樹から大量の木の実を持ってきた


「ほれ、好きなだけ食べてよいのじゃ」


大走鳥は嬉しそうにパクパクと食べ始めるが、


その中にわりと貴重な木の実を見つけ、複雑な気分になった


「いつ頃乗れるじゃろうか?」


「ん~、多分、そんなに掛からないと思うんですけど…

 乗れそうだと思ったら教えますね」


「楽しみじゃな~」


多分、今は私が傍に居るから大走鳥も落ち着いてるんだと思う


いずれ私抜きで、龍人と二人だけで木の実を食べたら、まぁ平気かな?


「ねぇドーラ。この子にあげる木の実をもっと集めに行かない?」


「じゃが、せっかくリーフが遊びにきてくれてるのじゃ」


「私も手伝いますよ

 それに、この辺の森を散策したかったんです」


彼が良い提案をしてくれた


一度でいいからこの森を気ままに散策してみたかった


それを龍人に伝えたところ、不思議な顔をして首を傾げる


「散策くらい、好きにすればよかったじゃろ?」


「だってドラゴンの縄張りですよ?

 できるだけ荒らさないようにって、移動にも気を遣いますよ」


「言ってくれたらよかったのじゃ」


「この前初めて会ったばかりじゃないですか

 でも、想像と全然違って怖くないですね」


「そう言ってくれると嬉しいのじゃ」


出会った時こそ恐ろしい目にあったけど、


それを除けば、意外にも優しい性格なんだろう


きっと、隣に居る彼が龍人に大きな影響を与えていると思った


その後、色々気を遣ってきたんだと、


私の今までの苦労話をしながら散策を始めた


…。

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