表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/74

お互いの所有物

 オスは遠くの方に視線を向けていた


表情に変化はなくて


今のは聞き間違えたのかと不安になる


「…今、なんて言ったのじゃ?」


「いいよって、言ったんだよ」


確かにそう言った


すぐ飛びつくようにオスに抱き着き、唇を奪う


流石に困惑していたが無視だ


更に少しだけ舌を入れて、オスの味を堪能した


ずっとこうやって


オスを直接味わってみたかった




 都合のいいことがあった


唾液を交換した影響か


オスから微かに自分の匂いがする


鼻が利く相手ならこのオスが誰の物かわかるだろう


きっとその逆もまた然り


微量のオスの匂いが自分からもするのだろう


自分も、まるでオスの物になったようだ


二人の距離が縮まった気がして嬉しい


展望台を降りる時、


もう一度だけ唇を奪った


…。


 さっき、僕はドーラの物になった


でも、今までと何か変わるのだろうか


そう質問すると基本的には変わらないそうだ


「ただ、わしが我慢しなくなっただけじゃ」


そう言いながら笑顔で抱き着いてくる


元より逃げる気はなかった


なので僕自身にとっては変化はないけれど


ドーラが無邪気に笑えるなら、大きな意味があった


そう思っていた


「主はわしの物じゃし、

 …わしも、主の物じゃ」


「ドーラが?」


「…あの鱗のように…

 …わしも貰ってほしいのじゃ…」


それを聞いた瞬間、喜びに溢れた


ドーラが僕の物になったのだ


つい我慢できず、力一杯抱き締めると


少し苦しいと言いながら笑う


それからおかえしと言わんばかりに


ドーラもギュッと力を入れてくる


そうして僕達は


お互いがお互いの所有物になった




 一つだけ約束して欲しいとドーラが言った


「わしは主の物じゃから

 基本的には何をしてもよいんじゃけど…

 …こ、子を作るのだけは、待ってほしいのじゃ…」


顔を真っ赤にしてそう切り出した


ドーラが待ってほしいと言えば待つけれど


そもそもどうやって作るのかわからない


なのでそれを質問すると


なぜか尻尾で叩かれた


「いたっ

 …作り方はわからないけど、わかった」


「…ふぅ…身籠ってる間に記憶が戻られると

 流石に逃げられそうじゃからな…

 …それに、心の準備もまだじゃし…」


「僕は逃げないよ?」


「逃がすつもりもないのじゃ

 じゃが、身籠ると動けないって魔女が言ってたのじゃ」


万が一にも追えない状況になるのが嫌なようだ


とにかく、そういう行為は


僕の記憶が戻るのを待つらしい




 僕達の生活は大きく変わらなかった


強いて言えば好きな時に尻尾が触れるようになった事と


それにドーラが大胆になったくらいだ


後はリーフがいつ訪れるのかと


毎朝、外を眺めながら楽しみにするようになった


「あと何日したら来てくれるかの?」


「前はどれくらい?」


「…そうじゃなぁ…

 この前、置いていったパン粉があるじゃろ?

 あれが残り少しになったくらいじゃ」


確かパン粉は大きな袋で二つだった


一度使ったけど、一袋目の半分の、その半分も使っていない


話してるうちにドーラも察したのか


少しつまらなそうな顔だ


「僕だけじゃ足りない?」


「そうじゃないのじゃ!

 …でも、それとこれとは違うのじゃ」


そんな話をしていると


窓の外から、例の奇妙な音が聞こえてきた


…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ