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質問

行商人はドーラよりも小柄な女の子だった。

その子は僕を見ているというより、睨んでいる。

鋭い視線のまま、僕の足元から頭までをじっくりと観察し、

次に部屋全体を見渡して僕の背後にある階段から二階を流れるように見た。


僕が何処から現れたか予想しているみたいだ。

とにかく、鱗は僕の物だと伝えて急いで戻ろう。

そう思ったけど、今度は彼女の方から話しかけてきた。



「…貴方、こんなところで何してるんですか?

 此処は龍人様の住処なんですよ」



龍人とはドーラの事なんだろうか。

それを確認する前に、次の質問が飛んできた。



「いつから此処にいるんですか?」

「いつから?えっと…」

「何処から来たんですか?」

「何処?何処からかわからないんだけど…」



説明しようにもすぐに次の質問が飛んでくる。

それも矢継ぎ早に、少し威圧的な雰囲気に尻込みしてしまう。

そんな僕の態度に彼女はさらに怪しんでいる様子だった。



「…種族と、故郷はどちらですか?」

「…。」



彼女はきっと答えやすい質問を選んでくれたんだろう。

でも、そのどちらも僕には答えられない。

誤魔化していると思われたのか、彼女が少し呆れた表情になった。



「…なんの目的があって此処に?」

「…目的はないというか、なんていうか…」

「…はぁ…。

 …もういいです。一旦、外に出ましょう」



ふいに彼女が近づき、僕の手首を掴んだ。

華奢に見えた彼女から想像もつかない力で玄関に向かって引っ張られる。



「…ダメだ。僕は外に行けない」

「…は?なんでですか?

 此処で言い争っても龍人様の迷惑になるでしょ?」



足に力を入れて抵抗するとさらに呆れた声を出された。

それから彼女は本気になったのか、両手で僕を引っ張る。

僕も必死で抵抗するけど、少しずつ玄関に向かって引きずられる。


「…もう!大人しく外に行くんです!」

「ごめん。外はダメなんだ」



最後の抵抗として片方の手でなんとか柱を掴んだ。

でも彼女の引く力の方が強く、既に軽く痺れ始めている。

手が離れるのも時間の問題だ。



「少しだけ待って。最初から、全部話すから…」

「もう遅いです…!とにかく外に…!」



限界が近い。すぐにでも柱から指が離れそうだ。

もう外に連れ出される事からは逃げられない。

ならせめて、早く戻れるようにしたい。


そういう風に考えを変え始めた矢先、

彼女は小さな悲鳴を上げて僕から手を離した。


彼女の表情が恐怖に歪む。

その様子に戸惑いつつ、僕も柱から手を離して声を掛ける。



「…ど、どうしたの…?」

「…逃げますよ、早く!」



態度が一変し、鬼気迫るといった雰囲気だ。

力強い眼差しで僕の目を見た後、今度は腕を思い切り掴んで引っ張られる。



「あっ!待ってよ!」

「いいから!命が惜しくないんですか!」



彼女がそう叫んだ瞬間、二階から咆哮が聞こえた。

周辺の物がカタカタと震えるほど大きな音。

彼女は腰を抜かしたようにその場に座り込み、耳を塞いだ。

その直後、階段をすごい速さ下るような音が続いた。


あっという間にドーラが現れた。

一階に現れたドーラは四つん這いで初めて見る表情をしてる。

その瞳も普段の優しいものとは程遠く、鋭く、獲物を睨むかのようだ。

ただ、その目が僕を捉える事は無かった。



「…あっ、あのっ…!」



彼女は座り込んだまま、ドーラに話しかけた。

けど、その声が切っ掛けになったのかわからないが、

ドーラが彼女に向かって走り出した。


このまま、彼女に突っ込む気なんだろうか。

突然の事に声も出せず、そんな事だけが頭に浮かぶ。


…。

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