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抜け落ちた鱗

 ドーラが僕に乗って眠った翌朝


起きようとすると布団の中で


何か硬いものが手に触れた


「これなんだろう?」


「どうしたのじゃ?

 …なんじゃ、わしの鱗の抜けたやつじゃ」


「ええっ!?大丈夫?痛くない?」


身体の一部が取れたのだ


痛くないはずがない


とにかく傷口を確認しようと


慌てて布団を退かしてドーラの身体を調べる


「へ、平気じゃ!

 そんなに顔を近づけて見るんじゃないのじゃ!」


「だってドーラの鱗が!」


「よくある事!よくある事じゃ!」


薄暗い寝室では顔を近づけないと良く見えなかったのだ


珍しく恥ずかしかったのだろうか


ドーラは腕で身体を隠すような仕草を初めてした




 話を聞けば珍しい事ではないそうだ


それに完全に抜けるわけじゃなく


鱗の外側が剥がれ落ちるだけ


だから痛くもないし、見た目も変わらない


「なんだ、驚いちゃった」


「わしの方が驚いたのじゃ!

 …もしかして、今、襲われるのかと…」


「襲われる?」


「…な、なんでもないのじゃ…」


驚いてしまったけど、痛くないなら何よりだ


ドーラが大丈夫なら


次は剥がれた鱗が気になった




 観察するために明るい窓際に移動した


日差しを当てるとキラキラと輝く


ドーラの鱗は基本的には黒色に見えるけど


日差しの中では


角度によって時折赤色に見える事があった


それが今、僕の手の中で自由自在だ


「…そんなに面白いじゃ?」


ドーラが真横に着た事にも気付かなかった


とりあえず食事にすると言うので


鱗を持ったまま一階に向かう事にした




 起きた後の流れは毎日同じような感じだ


顔を洗い、歯を磨く


それからトイレを済ませて


二人そろったらゆっくりと食事の準備を始める


「今日はパンと魚、どっちがよい?」


「魚がいいな」


スープは必ず作る


それの付け合わせとしてパンか魚を選ぶ


それらを食べながら今日の予定を決めるのだ


…。


 今日は木の実を集めに行こう


オスと手を繋ぎ森を散策して


沢山生えている場所を探した


「ドーラは森で迷わないの?」


「慣れてるから大丈夫じゃ」


森を少し歩くだけでオスは方向を見失うようだ


決して離れ離れにならぬよう


手を離さない様に気を付けた




 無事に木の実を集め終わって帰ってきた


今日採ってきた木の実は


洗って天日干しにする予定だが


それは休憩した後にしよう


まずはオスに水を飲ませたい


自分の分と合わせて水を二人分用意すると


先に座っているオスが


再び自分の鱗をじっと眺めていた




 とっくに手放したと思っていた


多分、ポケットに入れていたのだろう


「…もしかして、欲しいのじゃ?」


「…うん…」


図星だったらしい


言い当てられたオスは照れたように笑う


鱗は使い道があると言えばあるが


オスが喜ぶなら貰ってほしい


「なら、それは主にあげるのじゃ」


「えっ!いいの?ありがとうドーラ!」


オスは予想以上に喜んでいる


鱗の艶には自信があった


とはいえ、そこまで喜んでくれると鼻が高い


「でもポケットに入れ続けたら落としそうだね…

 どうしたらいいかな?」


「ん~、落としたら新しいのあげるのじゃ」


「それは嬉しいけど、これがいい」


「…そうじゃなぁ…

 …なら、こういうのはどうじゃ?」


窓際に飾る事を提案してみた


もうしていないけど


昔、魔女がよくそうして花を飾っていた


「こうすればいつでも見れるし

 無くさないし、すぐ触れるのじゃ」


「いい考えだね」


鱗が触りたければ


自分の身体を触ればいいのに


そう言いたかったが


本気にされそうなのでやめておく


…。

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