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 夜鳥の音が聞こえなくなった後に布団から顔を出す


耳を澄ませてオスの様子を伺うが物音は何もしなかった


あの騒音でも起きないほど熟睡してるのか


…そうでないなら、既にそこに居ないのか



 急に記憶が戻ったら夜鳥のように慌てて帰るだろうか


恐ろしいドラゴンが同じ部屋に居たら、息を殺して逃げるだろうか


これは全部妄想だ


あのオスはそんな薄情な事はしない


そう思うなら確認すればいい


今すぐ見に行って眠った姿を確認すればいい


そう思うのに、布団から出した足が地面に着く直前で固まった


(…もし…見に行って…本当に居なかったら…)


そうなれば耐えられる自信がない


探そうにもこの暗い森で逃げられたら流石に無理だし、


もし逃げたのなら、仮に見つけられても意味がない


見に行くのを諦めて布団に潜り直し、


どうしていいかわからずに声を殺して泣いた




 魔女が来てくれたんだと思った


泣きながら丸まっている背中に魔女が寄り添ってくれた


懐かしく優しい温かさに我慢できず、泣き叫んでしまった


ひとしきり声を上げて泣いた後、魔女が居るわけがないと我に返り、


だからこれは夢なんだと理解した


「…魔女…わしは怖いのじゃ…」


「何が怖いの?」


「…あのオスが、居なくなるのが怖いのじゃ…」


「居なくならないよ」


「…魔女がそう言うなら…安心じゃ…」


夢の中の魔女は欲しい言葉をくれた


この際、せっかくだから精一杯甘えてしまおう


頭を撫でて欲しいと言えば優しく撫でてくれたし、


角の周りを揉んでほしいと言えば優しく揉んでくれた


普段なら甘えん坊だねと笑われている所だけど、


今日は言わないから機嫌がいいのかもしれない


おかげで寂しい夜もやり過ごせそうだ




 翌日、夜鳥の帰宅する音で目が覚める


外は薄明るく、無事に一人で朝を迎えられたのだとホッとした


しかし奇妙なことに背中にまだぬくもりを感じる


本当に魔女が生き返ったのか?


いや、そんなわけはない


でも、魔女なら…と、思わなくもない


その正体を確かめるべく、ゆっくり身体を反転させた


「…主じゃ…」


そこに居たのはまだ眠っているオスだった



 オスの顔を見た瞬間、色んな事が頭を過った


昨夜の魔女はどこにいった?


それにオスはいつから此処に?


何をしに自分のところに?


もしかして、やっぱり襲うつもりだったり?


そんな様々な疑問が浮かんだが、


最後には理由なんてどうでもよくなった


目の前にオスが居る


その事実だけで嬉しかった



 されど、少し冷静になって昨夜を思い出す


甘えた相手は魔女ではなく、このオスという事になるのではないか?


どう取り繕えばいいだろうか


オスが起きる前になんとか言い訳を考えなくてはいけない


あんな情けない姿、嫌われてしまいかねない


自分はなんて言っていたんだっけ


それに対してオスはなんて答えていたんだっけ


何処から夢で、何処から現実なんだろう


「…あっ…」


なら欲しい言葉をくれたのはオスかもしれないと気が付いた


あの言葉は自分の夢で妄想なのか


それとも、本当にオスが言った言葉なのか


頭の中は残ったのはそれだけで、他には何も考えられなかった


…。

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