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恩返し

♢


夜鳥の羽ばたく音で目が覚めた。

意外と大きな音がしたから、窓の近くに居るかもしれない。

探してみようかと思ったけど、

隣で眠るドーラを起こしたくないから、やめておいた。


これから、僕はどうしたらいいんだろう。

二度寝する気分にはなれず、そんなことを考えてみた。

考えてはみたけど、解決の糸口さえ思い浮かばなかった。


結局、頭に浮かぶのはドーラの事だけだ。

昨日は色々と迷惑を掛けてしまった。

今日はそんな事にならないように気を付けよう。

そんな反省をしていると、もぞもぞとドーラが動き出す。



「起きた?おはようドーラ」

「…おはようじゃ…。

 …寝てる間に尻尾を触るなんて、意外と主はやらしいのじゃ…」

「えっ?」



指摘されるまで気付かなかった。

完全に無意識だったけど、僕はドーラの尻尾を遠慮なく触っていた。



「…ごめん!」

「…くふふ…別に怒ってないのじゃ。

 せっかくなら、もっと強く揉んで欲しいのじゃ」

「…いいの?」

「尻尾は意外と重いから、自分でもたまに揉んでほぐすのじゃ」

「そうなんだ。なら、起こしちゃったお詫びに揉んでみるね」



ドーラは後ろを向き、僕が揉みやすい位置に尻尾を置いてくれた。

改めて、大きくて立派な尻尾に触れる。

何処を揉んでいいかわからず、とりあえず真ん中らへんに触れる。



「…あ~…気持ちよいのじゃ…。

 …もっと揉んでくれるなら付け根を揉んで欲しいのじゃ…」

「わかった。ここかな?」

「…かなりよいのじゃ…。…あ~…」



どれくらい力を込めていいかわからなかったけど、、

ドーラが気持ちよさそうだから、僕なりに強めに揉んだ。

これが少しでも恩返しになってると嬉しい。


しばらくして、ドーラが少し申し訳なさそうに、

本当は一緒に寝てはいけなかったと言った。


理由は教えてくれなかったけど、それも魔女との約束らしい。



「…そうだったんだ…。

 …ごめん、僕が引き留めちゃったから…」

「教えてないから気にしなくてよいのじゃ。

 …でも、今日は一人で寝るんじゃよ?」

「うん。わかった」



そう返事をしてから気が付いたけど、

それは今日も泊まっていいと言ってるのと同じだった。


一応、もう一度ちゃんと聞いて確認しようか迷っていると、

満足したドーラが立ち上がり、聞くタイミングを失ってしまった。


その後、すぐに階段を降りた。

今朝も休憩することなく、無事に一階に辿り着けた。

昨日とは違う僕の様子に、ドーラも安心していた。



「起きたら、まずは顔を洗ってから、歯を磨くのじゃ。

 昨日はバタバタしてたから忘れてしまったけど、

 本当は朝も夜も、歯を磨かないといけないのじゃ」



教わった通りにドーラと一緒に冷たい水で顔を洗う。

しゃきっとして、清々しい気分になった。

なんとなく、身体の調子もいいように感じる。


これならいけると、意気込んで歯磨き用の枝を噛む。

でも、昨日と同じで小さな歯型が付いただけだった。



「あれ?…今度はいけると思ったのに…」

「…しっ、仕方ないから、また交換してあげるのじゃ…」

「…ごめんね…」



また迷惑をかけてしまったと反省した。

怒ってるかもと、歯を磨きながらドーラの様子をこっそり伺う。

でも想像に反して表情は柔らかく、尻尾は機嫌が良さそうに揺れている。


その様子にホッとしつつ、次から頑張ろうと気持ちを切り替える。



「次は食事をするのじゃ。

 準備をするから、主は座ってるのじゃ」

「僕も手伝いたい」

「洗い物だけで十分じゃ。

 すぐできるから座ってて欲しいのじゃ」



毎回食い下がっても迷惑かもしれない。

なので、今回は素直に待つことを選んだ。


静かな空間で、ドーラの何かを切る音だけが響く。

その音がなんとも心地良い。

しばらくして出来上がった朝食を、今日も美味しく頂いた。



「ねぇ、洗い物は僕が一人でやろうか?」

「主が一人でじゃ?

 …洗い物は、一緒に洗いたいのじゃ…」



恩返しになると思って言ってみた。

でも、これはかえって寂しそうな表情をさせてしまった。

なら洗い物は一緒にするとして、他を探そう。



「わかった。洗い物は一緒にやろう。

 …なら、他にも手伝えることはない?」

「他じゃ?…ん~…」

「何でもいいんだ。

 何でもいいから、ドーラの役に立ちたい」

「そうじゃなぁ~。

 …とりあえず、洗い物しながら考えるのじゃ」



それから食器を集め、今日も並んで洗い物をした。

その間もドーラは唸りながら、色々考えていたみたいだけど、

結局、何かを思いつく前に洗い物が終わってしまった。



「…もう終わりじゃ…」



僕が洗い物を手伝うと早くて楽だと言ってくれた。

でも今は、なぜか洗い物が終わる事が残念だと、

そんな風に感じているように見えた。


…。

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