恩返し
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夜鳥の羽ばたく音で目が覚めた。
意外と大きな音がしたから、窓の近くに居るかもしれない。
探してみようかと思ったけど、
隣で眠るドーラを起こしたくないから、やめておいた。
これから、僕はどうしたらいいんだろう。
二度寝する気分にはなれず、そんなことを考えてみた。
考えてはみたけど、解決の糸口さえ思い浮かばなかった。
結局、頭に浮かぶのはドーラの事だけだ。
昨日は色々と迷惑を掛けてしまった。
今日はそんな事にならないように気を付けよう。
そんな反省をしていると、もぞもぞとドーラが動き出す。
「起きた?おはようドーラ」
「…おはようじゃ…。
…寝てる間に尻尾を触るなんて、意外と主はやらしいのじゃ…」
「えっ?」
指摘されるまで気付かなかった。
完全に無意識だったけど、僕はドーラの尻尾を遠慮なく触っていた。
「…ごめん!」
「…くふふ…別に怒ってないのじゃ。
せっかくなら、もっと強く揉んで欲しいのじゃ」
「…いいの?」
「尻尾は意外と重いから、自分でもたまに揉んでほぐすのじゃ」
「そうなんだ。なら、起こしちゃったお詫びに揉んでみるね」
ドーラは後ろを向き、僕が揉みやすい位置に尻尾を置いてくれた。
改めて、大きくて立派な尻尾に触れる。
何処を揉んでいいかわからず、とりあえず真ん中らへんに触れる。
「…あ~…気持ちよいのじゃ…。
…もっと揉んでくれるなら付け根を揉んで欲しいのじゃ…」
「わかった。ここかな?」
「…かなりよいのじゃ…。…あ~…」
どれくらい力を込めていいかわからなかったけど、、
ドーラが気持ちよさそうだから、僕なりに強めに揉んだ。
これが少しでも恩返しになってると嬉しい。
しばらくして、ドーラが少し申し訳なさそうに、
本当は一緒に寝てはいけなかったと言った。
理由は教えてくれなかったけど、それも魔女との約束らしい。
「…そうだったんだ…。
…ごめん、僕が引き留めちゃったから…」
「教えてないから気にしなくてよいのじゃ。
…でも、今日は一人で寝るんじゃよ?」
「うん。わかった」
そう返事をしてから気が付いたけど、
それは今日も泊まっていいと言ってるのと同じだった。
一応、もう一度ちゃんと聞いて確認しようか迷っていると、
満足したドーラが立ち上がり、聞くタイミングを失ってしまった。
その後、すぐに階段を降りた。
今朝も休憩することなく、無事に一階に辿り着けた。
昨日とは違う僕の様子に、ドーラも安心していた。
「起きたら、まずは顔を洗ってから、歯を磨くのじゃ。
昨日はバタバタしてたから忘れてしまったけど、
本当は朝も夜も、歯を磨かないといけないのじゃ」
教わった通りにドーラと一緒に冷たい水で顔を洗う。
しゃきっとして、清々しい気分になった。
なんとなく、身体の調子もいいように感じる。
これならいけると、意気込んで歯磨き用の枝を噛む。
でも、昨日と同じで小さな歯型が付いただけだった。
「あれ?…今度はいけると思ったのに…」
「…しっ、仕方ないから、また交換してあげるのじゃ…」
「…ごめんね…」
また迷惑をかけてしまったと反省した。
怒ってるかもと、歯を磨きながらドーラの様子をこっそり伺う。
でも想像に反して表情は柔らかく、尻尾は機嫌が良さそうに揺れている。
その様子にホッとしつつ、次から頑張ろうと気持ちを切り替える。
「次は食事をするのじゃ。
準備をするから、主は座ってるのじゃ」
「僕も手伝いたい」
「洗い物だけで十分じゃ。
すぐできるから座ってて欲しいのじゃ」
毎回食い下がっても迷惑かもしれない。
なので、今回は素直に待つことを選んだ。
静かな空間で、ドーラの何かを切る音だけが響く。
その音がなんとも心地良い。
しばらくして出来上がった朝食を、今日も美味しく頂いた。
「ねぇ、洗い物は僕が一人でやろうか?」
「主が一人でじゃ?
…洗い物は、一緒に洗いたいのじゃ…」
恩返しになると思って言ってみた。
でも、これはかえって寂しそうな表情をさせてしまった。
なら洗い物は一緒にするとして、他を探そう。
「わかった。洗い物は一緒にやろう。
…なら、他にも手伝えることはない?」
「他じゃ?…ん~…」
「何でもいいんだ。
何でもいいから、ドーラの役に立ちたい」
「そうじゃなぁ~。
…とりあえず、洗い物しながら考えるのじゃ」
それから食器を集め、今日も並んで洗い物をした。
その間もドーラは唸りながら、色々考えていたみたいだけど、
結局、何かを思いつく前に洗い物が終わってしまった。
「…もう終わりじゃ…」
僕が洗い物を手伝うと早くて楽だと言ってくれた。
でも今は、なぜか洗い物が終わる事が残念だと、
そんな風に感じているように見えた。
…。




