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暗くて細い道の先

 食事をする前に歯を磨いた


どうやら寝る前の他に起きた後も磨くようだ


体調もいいので意気込んで枝を噛んだけど


昨日同様、僕の枝は痕が少し付く以外に変化がない


「…しっ、仕方ないからまた交換してあげるのじゃ…」


「…うん…ありがとうドーラ…ごめんね…」


謝ると返事はなかったけど頷いてくれた


交換した枝で歯を磨くドーラの横顔は


少し赤いように見える




 歯磨きの後は朝食だ


また座って待ってて欲しいと言われ、大人しく待った


食材を切る心地のいい音を聞いてると


すぐに出来上がり


今日も美味しく食べさせてもらった


「ねぇ、洗い物は僕がするよ」


少しでも恩返し…になるかわからないけど、


せめて洗い物くらい任せて欲しいと伝える


けど、ドーラの顔は渋かった


「…一緒に、洗いたいのじゃ」


「…なら、他に何かして欲しい事、あるかな?」


「…他じゃ?…えーっと…」


すぐに思い浮かばないようだ


洗い物をしながら考えると言ったけど


その間もなく、あっという間に終わってしまった




 綺麗な食器を前になぜか残念そうだ


物足りなさそうに皿を手に取り、ため息を吐いている


洗っている最中はあんなに楽しそうだったのにと、


今、ドーラが何を考えているのかが気になった


…。


 並んで同じ事をするのは楽しい


でも、呆気なくすぐに片付いてしまった


これでは物足りない


もっと何か一緒にしたい


記憶を取り戻し、古巣に帰ってしまう前に


もう少し、オスと戯れていたかった


 


 名案を思い付いた


洗濯をすればいいんだ


それも使った物だけじゃなく


仕舞ってあるものすべて洗おう


オスと寝た時は良い匂いがしてたけど、


貸した服から少しだけ埃っぽい匂いもしていた


それさえなければもっといい匂いだし


オスだって綺麗な服の方が気持ちが良いはずだ


そこまで考えてオスに提案した後、


また一緒に眠る気になっている


自分に気が付き、驚いた




 大樹の裏手に川があるので移動した


自分は服を使わないので


普段はタオルくらいしか洗わない


「こうやって優しく揉むように洗うのじゃ」


「…こう?」


「…くふふ…そんな感じじゃ…」


服の洗い方も魔女に習っておいてよかった


一枚ずつ手に取り、オスに教えながら洗う


このオスは多少不器用みたいで


洗うのに苦労しているようだけど


真剣な顔で手元に集中する姿は愛おしく感じた




 タオルを洗ったくらいなら


木の枝に引っ掛けて適当に干すところだ


今日は大樹にある服の半分ほど洗ったので


木々にロープを張り、ちゃんと干す事にした


オスが支え、自分が固定していく


この作業も一緒にすると楽ちんだ




 一度にこれほど洗濯した事があっただろうか


綺麗になった服がこうも並ぶと気持ちが良い


しばらくの間、風になびく洗濯物を


オスと共に眺めていた


…。


 洗濯物が乾くまで半日ほど掛かるらしく


このまま放置し、暗くなる前に回収するようだ


「普段ならお昼寝とかして待つんじゃけど

 何か、主はしたい事あるかの?」


「したい事か…

 …僕、あっちに行ってみたい」


「あっちじゃ?」


川が流れていく方向を見ると


その流れに沿うように小さな道がある


少し暗いように見えるその道の先に


何があるのか気になっていた




 ドーラも同意してくれたので


その細い道を進んでみる事にした


湖という多いな水溜まりがあるらしく、


とても気になる


「この道は狭くて危ないから手を繋ぐのじゃ

 川に落ちたら危ないって

 魔女もよくそうしてくれたのじゃ」


ドーラと手を繋ぎ、ゆっくりと歩いた


魔女の話が出たからか


此処でした魔女との約束も教えてもらった


この道は木々が鬱蒼して日差しを遮っている


なので夜は寝室より暗くなるから


この道を夜通るのは禁止なんだそうだ




 そういった理由で


夜鳥を見かけたらすぐに帰った方がいいらしい


「…今は夜鳥、居ないよね?」


「…くふふ…まだ夜鳥が出てくるには早いのじゃ」


そう言われてもついつい見上げてしまう


確かに一匹も見つけられなかったけど


まだ時間があるのか、またはないのか


その判断が出来ない僕は


ドーラの手を引いて湖へと急いだ


「急ぐと危ないのじゃ!」


「でも夜が来る前に急ごうよ」


「…くふふ…主は仕方のない奴じゃな…」


少し叱られてしまったけれど、


ドーラも顔は笑っていた


それに、僕に合わせて早足になってくれてるから


きっと許してくれると思う




 森を抜けると巨大な湖が広がった


広大な景色に目を奪われ、言葉が出てこない


「…少し、歩いてみるかの?」


ドーラの呼びかけで我に返り


湖を見ながら二人で歩く


このまま湖を一周してみたいと言うと


反対側に着いた頃には夜が来てしまうと笑われた


「…じゃが、夜の湖は本当に綺麗なのじゃ」


星明りが湖に反射して


辺り一面が淡く光るように見えるらしい


それを見るのが好きで


夜、一人でそれなりの頻度で見に来ると言った


…。

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