木の枝
朝は食べる事だけに夢中になったいた。
でも今回は少し余裕もあって、ドーラと会話しながら食事が出来た。
スープの作り方や魚の焼き方を教わりながら、楽しい時間が過ぎていく。
食事が終わると、今朝と同じくドーラが食器を集めだした。
「僕も手伝う」
「…できれば、休んでて欲しいのじゃけど…」
「手伝いたい」
微々たるものでもドーラの手伝いがしたい。
そんな決意を抱いて、ドーラの目をじっと見る。
僕が簡単には引き下がらないのがわかったのか、
ドーラは困った顔をしながらも、最後は頷いてくれた。
「…なら、洗ったお皿を拭いて欲しいのじゃ…」
「やった。ありがとうドーラ」
「…むぅ…仕方ないのじゃ…」
腑に落ちない顔をしているけど、許してくれた。
ドーラの背中を追って、調理場に付いて行く。
隣に並び、ドーラが洗ったお皿をタオルで拭いて、重ねていく。
「二人ですると、らくちんじゃ」
「ほんと?手伝ってよかった」
「…ほんとじゃ…よかったのじゃ…」
「次も手伝うね」
「…ん…」
実際、僕がしてる事はただ拭いてるだけ。
些細な事だけど、少しでも楽だと感じてくれるなら嬉しかった。
次も手伝うと伝えたけど、明確な返事はくれなかった。
でも、小さく頷いてくれたようには見えた。
此処まで順調だったのに、洗い物が終わると身体に異常を感じ始めた。
急に強い睡魔に襲われ、立っているのもやっとだ。
ふらつく僕に、すぐにドーラが気付いてくれた。
「やっぱり疲れたのじゃ?
眠る前にして欲しい事があるんじゃけど、すぐ寝るじゃ?」
「…大丈夫…何をすればいいのかな…」
「なら、こっちじゃ」
魔女さんとの約束で、寝る前は木の枝を使って歯を磨くらしい。
例え、他の約束が守れなくても、
これだけは守るようにと、念を押されているくらい大事だそうだ。
それほど大事な約束なら僕だって守りたい。
残った気力を振り絞り、歯を磨く方法を教わった。
しかし、また問題が起きた。
本来は木の枝の先端を噛んで、繊維状にする。
でも僕の噛む力では、ほとんど変化がなかった。
「…硬いんだね…」
「そんなはずは…。
仕方ないからわしが作ったのをあげるのじゃ」
ドーラは見本で作った枝を僕にくれた。
それを使って、眠気に耐えながらなんとか磨いていく。
これで、今日する事は全て終わった。
僕はこれから眠るだけで、ドーラはお風呂に入るそうだ。
「二階まで送っていくのじゃ」
「…大丈夫…僕一人で行けるから…」
「そんなにふらふらしてちゃ危ないのじゃ」
あの長い階段を往復させるのは気が引けた。
でも確かに身体はふらつくし、一人で上れる自信もない。
ドーラは僕の手を掴み、引っ張りながら階段を上がっていく。
ただ意外にも足取りは軽く、休憩も取らずに寝室に辿り着いた。
寝室は広間と違ってかなり暗い。
窓からの星明りがわずかにある程度。
ドーラの案内がなければ、ベッドの場所すらわからなかった。
ベッドに案内された僕は今にも気を失いそうだった。
最後に一言だけでもと、必死に口を開く。
「…今日は…ほんとに色々、ありがとうドーラ…」
「…よいのじゃ…。
…わしも久々に、楽しかったのじゃ…」
か細い声になってしまったけど、ちゃんと伝えられたようだ。
伝わって安心すると、さらに身体の力が抜けた。
目が勝手に閉じて、もう指一本、動かせる気がしない。
「…主…?…くふふ…もう眠ったのじゃ…」
すごい勢いで眠りに落ちていく。
その刹那、ドーラの笑い声が聞こえた気がした。
…。




