一日の終わりに
二度目の食事は僕も少し余裕があり、
会話をしながら終える事ができた
そしてドーラは今朝と同じように食器を集め始める
「僕も手伝うよ」
「…じゃが…」
「手伝いたいんだ」
「…いや、休んでて欲しいのじゃ」
断られると思っていた
そう予想したので僕も食い下がり、
何でもいいから手伝わせて欲しいと強くお願いした
「…そうじゃなぁ…
…なら、洗ったお皿を拭くくらいなら…」
「ほんと?ありがとうドーラ」
「…むぅ…」
最終的にはドーラが折れて渋々承諾してくれた
食器を流し台に運び、
二人並んで洗い物を始める
ドーラが洗った物を僕が受け取り、タオルで拭いた
簡単な作業だけど落とさない様に気を付ける
「二人ですると、らくちんじゃ」
「ほんと?手伝ってよかった」
「…ほんとに、よかったのじゃ…」
「次も手伝うね」
「…ん…」
ドーラは明確に返事をしてくれなかった
でも、小さくだが頷いてくれたように見えた
洗い物が終わる頃、身体の異常に気が付いた
気を抜くとすぐに目を閉じて
今にも眠ってしまいそうだった
「主、疲れたのじゃ?
眠る前に必ずする事があるんじゃけど…頑張れそうじゃ…?」
「…大丈夫…何をすればいいのかな…」
それは魔女との大事な約束の一つで
木の枝を使い、歯を綺麗にする事だった
破るとかなり怒られたそうだ
それほど大事な約束なら僕も守りたい
気力を振り絞り、歯磨きを教わった
しかし、そこでまた問題が発生する
木の枝の先端を噛んで繊維状にする必要があるのだが
僕の噛む力ではほとんど変化がなかったのだ
ドーラは仕方なく
先に作った自分の枝と僕の枝を交換してくれた
これで今日する事は終わったらしい
後は眠るだけで
ドーラもお風呂を済ませた後に眠るだけのようだった
「二階まで送っていくのじゃ」
「…悪いよ…僕一人で行けるから…」
「そんなにふらふらしてちゃ危ないのじゃ」
あの長い階段を往復させる気には到底ならず、
一人で上がると言ったが聞き入れてくれなかった
問答無用で手を引かれ、共に階段を上がった
今度は休憩を取らず
上がりきれたことだけが幸いだ
寝室は暗く、唯一の明かりは
窓から差し込んでいる星明りだけだった
ドーラがベッドに案内してくれなければ
位置もわからず、床で寝ていたかもしれない
「…今日は…ほんとに色々、ありがとうドーラ…」
ベッドに寝かされ、今にも気を失いそうだったけど
最後に一言だけでもと思い、必死にお礼を口にした
「…よいのじゃ…
…わしも久々に楽しかったのじゃ…」
上手く伝えられた事に安心すると
もう、指の一本も動かせる気がしなくなった
「…主…?…くふふ…もう眠ったのじゃ…」
ただ目を閉じて眠りに落ちていく中、
ドーラの笑い声が聞こえた気がした
…。
オスはあっという間に眠ってしまった
ついさっきまで話していたのにと、
驚くよりも笑みが零れてしまう
きっと疲れていたんだろう
何度か頭を撫で、その場を離れた
部屋を後にする時、後ろ髪を引かれて
振り返えざるを得なかった
残念ながらオスの姿は見えなかったが
お風呂に入らないわけにもいかず、
仕方なく頭を振って誤魔化し、階段を降りた
一日中行動を共にしたせいだろう
どうにもオスと離れがたい気分だった
浴室に着くも雰囲気が違った
辺りを見渡しても普段との違いがわからないが、
何かが引っかかる
疑問に思いながら浴槽に浸かると
違和感の正体が匂いだとわかった
「…主の匂いじゃ…」
お湯からオスの匂いがした
まるで自分を慰めるように、抱き締められてる気分だ
あのオスと出会えてよかった
今日は本当に楽しい一日だった
…。