↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/33

第7話 予想外の売れ行き

翌朝。


『生成可能商品:カップヌードル』


『本日の生成可能回数:12/12』


「十二個……」


俺は何度も表示を見直した。

昨日までは十個だった。

それが一気に十二個。

一個ずつ増えていた今までとは明らかに違う。


「やっぱり食べてもらった量が関係してるな……」


近所へ配ったときも成長速度は上がった。

そして今回は商会に置いてもらった。

結果として二個増えた。

偶然とは思えない。

俺は記録用の紙を取り出した。

――一個。約一週間。

――二個。四日。

――三個。二日。

――四個。二日。

――五個。二日。

――六個。二日。

――七個。二日。

――八個。一日。

――九個。一日。

――十個。一日。

――十二個。一日。


「やっぱり売るのが正解だったな」


もちろん、まだ断定はできない。

だが、少なくとも自分たちだけで食べていた頃より成長は早くなっている。

ならばやるべきことは一つだ。

もっと食べてもらう。

それだけだ。


◇◇◇


朝食の席で、俺は昨日の結果を報告した。


「十二個になったのか」


父が感心したように言う。


「二個も増えたのね」


母も驚いている。

アリアは難しい話よりも別のことが気になるらしい。


「今日はいっぱいある?」


「あるよ」


「やった!」


相変わらずだ。

俺は苦笑しながらカップヌードルを生成した。

ぽんっ。

ぽんっ。

ぽんっ。

次々と机に並んでいく。

十二個ともなると、なかなか壮観だった。


「増えたものだな」


父が言う。


「最初は一個だったのにね」


母も笑う。

本当にその通りだった。

一個を四人で分けていた頃が、ずいぶん前のことのように感じる。

朝食を終えると、俺は父と一緒に商会へ向かった。

昨日渡した五個がどうなったのか気になっていたのだ。


◇◇◇


商会へ入ると、店主がこちらに気付いた。


「おう、来たか」


その表情は昨日よりずっと明るい。


「どうでした?」


俺が尋ねると、店主は笑った。


「全部売れたぞ」


「全部?」


思わず聞き返してしまう。


「昨日のうちにな」


「そんなに?」


「ああ」


店主は頷いた。


「最初は誰も買わなかったんだがな。俺が試食した話をしたら、一人が興味を持った」


なるほど。


知らない食べ物なのだから警戒されるのは当然だ。


「その客が買っていってな」


「はい」


「そいつが昼に家族で食べたらしい」


俺は思わず身を乗り出した。


「それで?」


「夕方になって、その家の奥さんが追加で買いに来た」


「え?」


「さらに話を聞いた近所の連中も興味を持った」


店主は肩をすくめた。


「気付いたら全部なくなってた」


「そんなことあるんですね……」


前世の感覚だとカップヌードルは珍しくない。

だが、この世界では違う。

お湯を入れるだけ。

保存が利く。

持ち運びも簡単。

しかも味もいい。

そう考えると、奇抜なことを差し置いても案外需要はあるのかもしれない。


「それでな」


店主が身を乗り出した。


「追加で持ってこれるか?」


やはりそうなるか。


俺は少し考えた。


現在は十二個。


家族で食べる分を引いても余裕はある。


「十個くらいなら」


「本当か?」


「はい」


店主は嬉しそうに笑った。


「助かる」


その様子を見て、俺は少し驚いた。

昨日までは半信半疑だったはずだ。

それが今では追加を求めている。

商人というのは、売れる商品に敏感なのだろう。


「ただ」


店主は真面目な顔になった。


「正直なところ、どこまで売れるかはまだ分からん」


「そうですね」


「村の人数には限りがある」


確かにその通りだった。

この村は大きくない。

全員が毎日買うようになれば別だが、そんなことはないだろう。


「だからまずは様子見だ」


「分かりました」


俺も同意した。

まだ始まったばかりだ。

焦る必要はない。


◇◇◇


帰り道。

父が言った。


「思ったより好調だったな」


「うん」


「だが、気を付けろよ」


「何を?」


「売れるからといって、何でもかんでも話すな」


俺は少し考えた。

確かに【NISSIN】のことを詳しく話すつもりはない。

今は店主にも、俺が特殊なスキルで生み出しているとは説明していない。

珍しい保存食を作れる。

その程度だ。


「分かってる」


「ならいい」


父はそれ以上何も言わなかった。


◇◇◇


その日の夕方。

俺は商会へ十個のカップヌードルを納品した。

店主は満足そうに受け取る。


「これならしばらく持つだろう」


そう言っていた。

だが、その予想は外れることになる。

翌日。

俺が商会を覗いてみると、すでに売り切れてなくなっていた。


「早いな……」


思わず呟く。

すると店主が苦笑した。


「俺も驚いてる」


「そんなに人気なんですか?」


「珍しいからな」


店主は言う。


「保存できるし、旅に持っていける」


それは確かに強みだった。

この世界の食べ物は保存に手間がかかる。

干し肉や保存食はあるが、手軽さではカップヌードルに及ばない。


「行商人も興味を持ってたぞ」


「行商人?」


「ああ。今度来たら話を聞いてみるらしい」


俺は少しだけ胸が高鳴った。

村の外。

もっと多くの人。

もしそこまで広がれば――。

【NISSIN】の成長もさらに加速するかもしれない。

その日の夜。

俺はいつものようにスキルを確認した。

そして翌朝。


『生成可能商品:カップヌードル』


『本日の生成可能回数:14/14』


「……十四個」


また増えている。

しかも二個。

俺は思わず笑った。

商会で売れた。

誰かが食べた。

そして増えた。

もう疑う余地はない。

【NISSIN】は食べられることで成長する。

その確信は日ごとに強くなっていた。

だが同時に、別の問題も見え始めていた。

今は村の小さな商会で十分だ。

しかし、この勢いで増え続けたらどうなるだろう。

一日に二十個。

三十個。

五十個。

そこまで増えたとき、この村の小さな商会だけで本当に捌ききれるのだろうか。

俺はまだ、その答えを知らなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。