↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
31/33

第31話 試験販売開始

 グランツ商会から試験販売の打診が届いてから数日。

 モフク商会ではその対応に追われていた。

 もっとも、特別なことをするわけではない。

 商品を作り、届ける。

 やること自体は今までと変わらなかった。

 ただ相手の規模が違う。

 それだけだった。


◇◇◇


 朝。

 いつものようにスキルを確認する。


『生成可能商品:カップヌードル』


『生成可能商品:カップヌードル シーフード』


『生成可能商品:カップヌードル カレー』


『生成可能商品:どん兵衛 きつねうどん』


『生成可能商品:どん兵衛 天ぷらそば』


『本日の生成可能回数:3528/3528』


「三千五百か」


 最近は増加量も大きい。

 新しい販路が増えた影響だろう。

 俺は倉庫へ向かい、その日の生成を始めた。

 二十食入りの箱が次々と積み上がっていく。

 今ではこの光景にも慣れてしまった。


◇◇◇


 午前。

 会議室へ呼ばれる。

 父。

 ミーナ。

 ロイド。

 そして戻ってきていたリックとエマもいた。

 テーブルの上には資料が並んでいる。


「グランツ商会の件だね」


 俺が言うと、全員が頷いた。


「正式に試験販売が決まりました」


 エマが報告する。


「向こうもかなり乗り気です」


「どのくらい?」


「まずは五種類全てです」


 そう言って資料を広げた。

 しょうゆ。

 シーフード。

 カレー。

 きつねうどん。

 天ぷらそば。

 全種類が対象になっている。


「予想より多いな」


 父が言う。


「はい」


 エマも頷く。


「特にどん兵衛シリーズへの関心が強いようです」


 なるほど。

 きつねうどんも天ぷらそばも好調だ。

 不思議ではない。


「納品量は?」


 ロイドが尋ねる。

 エマが紙を確認した。


「初回は二百箱です」


「二百箱?」


 ミーナが目を丸くする。

 カップヌードルが二十食入り、どん兵衛が十二食入りだから四千食弱。

 普通の商会ならかなりの量だ。

 しかし。


「今なら出せるね」


 俺が言う。

 ロイドも頷いた。


「問題ありません」


「在庫も確保できます」


 以前なら難しかった。

 だが今は違う。

 倉庫も増えた。

 人員も増えた。

 生産量も増えた。

 対応できる。


「試験販売の期間は?」


 父が聞く。


「一か月です」


 エマが答える。


「その間の売上と反応を見て判断するそうです」


「妥当だな」


 父は頷いた。

 俺もそう思う。

 いきなり大規模契約はしない。

 まずは試す。

 商人としては当然だった。


◇◇◇


 会議が終わったあとも、しばらく商会の中はざわついていた。


「グランツ商会か……」


 配送担当の一人が呟く。


「そんなに有名なの?」


 新人の配送員が尋ねる。


「有名なんてもんじゃないぞ」


 別の従業員が苦笑した。


「西領じゃ知らない商人の方が少ない」


 それほどの商会だった。

 もちろん俺も名前は聞いていた。

 だが実際に取引するとなると話は別だ。

 モフク商会は急成長しているとはいえ、まだ設立から一年も経っていない。

 そんな商会の商品が大手商会の店頭に並ぶ。

 考えてみれば凄いことだった。


「失敗できませんね」


 ミーナが真面目な顔で言う。


「だね」


 俺も頷いた。

 試験販売。

 言葉だけ聞けば軽く見える。

 だがここで結果を出せれば、さらに大きな販路へ繋がる可能性がある。

 モフク商会にとって重要な一歩だった。


◇◇◇


 数日後。

 グランツ商会向けの荷物が完成した。

 倉庫には大量の箱が並んでいる。


「壮観だな」


 父が呟く。

 二百箱。

 以前のモフク商会なら大仕事だった。

 だが今は違う。

 準備はすでに終わっていた。


「出発します」


 エマが言う。

 今回の担当も彼女だ。

 西領との交渉を続けてきたのだから当然だった。


「よろしく」


「お任せください」


 力強い返事だった。

 荷馬車がゆっくり動き出す。

 積み込まれた商品は二百箱。

 モフク商会始まって以来の大型案件だった。


◇◇◇


 その日の夕方。

 事務室で帳簿を確認していると、ミーナが声をかけてきた。


「会頭」


「ん?」


「最近の販売割合です」


 資料を受け取る。

 内容を見る。

 しょうゆ。

 シーフード。

 カレー。

 きつねうどん。

 天ぷらそば。

 五種類全て売れている。

 だが伸び方は違った。

 特に目立つのはどん兵衛シリーズだった。


「強いなあ」


 思わず呟く。


「ですね」


 ミーナも笑う。


「発売してまだ一か月ほどなのに」


「予想以上です」


◇◇◇


 夜。

 一人で倉庫を見回る。

 以前は商品不足を心配していた。

 今は違う。

 販路が広がり続けている。

 取引先も増えている。

 商会も大きくなっている。

 気が付けば従業員の数もかなり増えていた。

 最後にスキルを開く。


『本日の生成可能回数:0/3528』


 三千五百二十八。

 四千まではあと少しだ。

 次に何が解放されるのかは分からない。

 だが最近の流れを考えれば、新商品の可能性が高い。

 カップヌードル。

 どん兵衛。

 その次は何だろう。

 少しだけ楽しみになる。

 俺はスキルを閉じた。

 明日もまた忙しい一日になるだろう。

 けれど、その忙しさは商会が成長している証だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。